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専門バカ

2006年5月9日

 今日、職場(本部)で新入生の歓迎会がありました。そこには日頃あまりお会いすることのない本部の人たちがたくさんいます。変なダジャレを飛ばす人が多く、何か変なウイルスでもいるのでしょうか。
 とりあえず中締めの後、東南アジアの農業問題を研究されている本部の職員(教授です)とお話しました。東南アジアを取り巻く農業の情勢は、10年前と比べても深刻になっているそうです。フィリピンやインドネシアなどの米の輸入が多くなり、世界でも米の在庫量が減っているとか。あとは、遺伝子組み換え作物の話で、Btタンパク(食べると昆虫が消化不良を起こして死んでしまうタンパク質らしい)に耐性を持つ昆虫の発生とか、グリホサート(モンサント社開発の除草剤で、グリシン誘導体:C3H8NO5P)の使用量の増加と耐性雑草の発生、そしてそれを見込んだ新型除草剤の開発など。
 前者の話は明らかに世界中で起こる飢餓を予告している大問題です。後者の遺伝子組換えは問題を予測することができません。「害がないから大丈夫だ」なんていう人もいるそうですが、後々苦しみたくなければ、不安の種はなくす努力をするべきです。もっとも、その努力をしたくないか、遺伝子組換え作物で甘い汁を吸っているかしている人には期待しませんが。
 その職員の先生によると、社会科学でも自然科学でも、専門分野を抱え込んで他を見ようとしない「専門バカ」はたくさんいるそうです。続けて言います。現場で、失敗を繰り返してでもみんなで問題に取り組んで解決していこうと思うと、「専門バカ」になってなんかいられない。「専門外だから知りません」じゃすまない。
 僕が院生の時の別の研究室の助手の方は誰の発表(修論卒論など)でもよく聞いていて、いろんな質問していました。僕を助けてくれた所属研究室の助教授の先生、よくよく話してみれば、社会的な目的を持ち、枠に囚われない考え方をする人でした。
 固執、嗜癖…、「専門バカ」ってこれと紙一重か、あるいは同じか。僕と折りが合わなかったある教授はどちらかというと、「専門バカ」だったと思います。

ひどい目に遭いました…(涙)

 その教授は抗ガン剤ドキソルビシン(アドリアマイシン+アミノ糖)とテトラサイクリン系抗生物質のドキシサイクリンを間違えて注文し、僕が修論を書いていても気が付かなかった人でした。そして、僕がデータの異変に気が付いた頃には、既に遅し。代わりに側にあったパラコート(メチルビオロゲン)を使って実験というハメに。

 なんでそうなるのかは解りません。その人それぞれで理由があるのでしょう。しかし、「専門バカ」でない人は、程度や範囲の差はあれ、感性が豊かであると思います。また、責任感もあるのかな。学問のための学問をしているだけじゃ、本人にとってはいいかもしれないけど、周りを必ずしも幸せにするとは限りません。遺伝子組換え技術も核融合技術もロボット技術も、医薬品の開発やエネルギー生産や特定疾患患者のQOL(生活の質:Quality Of Life)向上などに使える一方、兵器にも使えます。もちろん、これは極端な例です。しかし、化学物質の有用性と汚染(毒性)のような光と影を見る努力をすることが大事なのかなと。そして、そういう努力ができるのは、人の幸せや苦悩を知っているからなのかなとも思います。
 なお、その先生、憲法9条を守る運動などにも参加されています。果たして、偶然なのかな?

天気:曇り、夜は霧雨(茨城県取手市・東京都豊島区・板橋区)

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