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サプリメント

2006年8月21日

 …の本を読んでいました。帰りの電車です。満員電車は暇だということと、単なる今ある困難からの逃げであるということと、興味があるということと。その本は8月6日に買いにいったものです。もちろん、サプリメント(健康食品、イコールではない)は使おうと思うことさえない僕ですから、「アガリクスがガンに効く」系の話ではありません。
 読み始めたばかりですが、今の健康食品並びにサプリメントは、安全性試験をしていない医薬品のようなものだということが言えそうです。医薬品は実際に治験という形で、人に(慎重に?)投与しながら、薬効や副作用を正確に調べる努力がなされています。しかし、殆どの健康食品は、「抗酸化作用がある」とか、「免疫を活性化する」とか、「血圧が高めの方に」とか書いてあっても、化学反応レベル、試験管レベル、細胞培養レベル、動物実験レベルです。劇症的な副作用を持つものだって出ているのに、人への試験はなされていません。死傷者が出てから問題になるという状態。それが医薬品の売り上げを上回る2兆円規模の市場になっているわけですから、大変なことです。
 詐欺的な商法も後を絶たないようです。去年の8月頃、マルチまがい商法といわれる類のN社のことで、友人から相談を受けたことがありました。その友人は、ある本を友だちから渡され、それを読めといわれたそうです。中身はその企業の扱う健康食品系がどれだけ有益であるかを、「どこどこの大学の先生が」などの文言を使って表現していたそうです。そもそも「先生」も人間であるのだから、僕は権威とさえ思っていません。それよりも、効能を謳っていること、体験者を出演させていることなどの方がタチが悪い。効能を本や体験者に述べさせる分には、「表現の自由」を悪用すれば違憲にも違法にもなりません。それがウソだったり、明らかに出版社との談合があったりすれば別ですが。
 とはいえ、保健機能・栄養機能を研究している食品系の学生や研究者はたくさんいます。農学部でも生命化学系の研究室でもそういう部門は幅を利かせています。かく言う僕も、乳酸菌の研究室にいました。そこにいる半数くらいの学生や院生は自分のやっている研究に疑問を持っており、「怪しい」とか言いながら、頑張っていました。考えてみればそういう人を前にして、「あなたのやっていることは悪だ」というのは、人道に反しています。(僕の研究は乳酸菌に対する食品添加物等の毒性についてでした)
 それゆえに、不用意な自己責任論的批判は、多くの研究者を敵に回すことになります。だから学会や修論・卒論発表の時は、データなどを見ての内的批判しかしません。学生や研究者たちだけの責任ではない。あくまでも、これは社会の問題です。研究者にはデータで矛盾を突くしかないのです。その批判は、研究者たち自身の力に頼るしかありません。
 しかし、政治・経済的な問題で予防原則の立場に立つなら、もう少し認定を厳しくしてもいいと思います。健康に良いどころか害が出れば取り返しが付きませんし、無効なもので多額の損失を出せば経済的にも打撃を与えます。物質を濃縮して食べる場合が多いサプリメント。認定に当たっては医薬品と同等の研究をさせても良いのではないでしょうか。

天気:くもり時々晴れ(茨城県取手市・東京都板橋区)

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