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年老いた暇人

2010年 4月 1日

 朝、中途半端な量残っていた玉子丼の具を使い切るために、無理して食べたらハラが一杯になって1日にわたってグロッキーでした。そもそもその時点で最悪なのですが、また今日は更に暇で、動かないからハラも減らないという話。昼飯はよせばいいのに菓子パン2個でごまかし、公園すらない大都会の住宅街の隅のベンチに座り、衆人環視の中で、犬に構われながらまずそうに食っていました。ああ、何でこんな生き方を選んでしまったんだろう。


 ところで、夕方、あまりに暇でしょうがなくなって、手元にあったToxicologyの論文を読んでいました。「チラムによってエンドスルファンの細胞毒性が増強する」という話です。チラムというのは種子消毒とかに使われる農薬で、買った種とかが、ど・ピンクに染まっていることがある、あれです。エンドスルファンというのは有機塩素系の殺虫剤です。
 EAT(ナントカ腫瘍細胞)をある濃度のチラムやエンドスルファンを個別、あるいは同時に与えた状態で培養すると、濃度依存的に細胞が死んでいきます。50%の細胞が死ぬ濃度をLC50といいます。それが、チラム単品では約4mM、エンドスルファンでは約1mM。mMという単位は、「mmol/リットル」という意味ですが、この際大小の比較ができればいいのでスルーしてもいいかと思っています。
 で、問題は、ふたつ合わせたとき、チラム0.6mMとエンドスルファン1.12mMが同時にある状態にしたとき、細胞が90%くらい死ぬというデータになっていました。乳酸脱水素酵素(LDH:Lactate Dehydrogenase)という酵素の濃度を測って、細胞がどうやって死んだのかを調べる実験もしていましたが、これもふたつ合わせたときのものが高くなっており、壊死という種類の細胞死がよりたくさん起こっていることが判りました。0.6mMのチラムだけの時は何も加えないときと変わりありませんでした。
 そして、最後が核心部なのだと思いますが、グルタチオンという、活性酸素などの毒物によるダメージから身を守るための物質の量が測られました。これは濃度が低くなるほど身を守れなくなるということになります。結果、ふたつ合わせたもののが最も低くなったのですが、重要なのは、何も変化がなかったはずの0.6mMチラムだけ液のものも、グルタチオンの濃度が下がっていたということです。グルタチオンの濃度が下がるだけでは、ドラクエでいえばルカナンを使われて防御力が下がっただけなのと同じなので死ぬことはありませんが、ここにエンドスルファンの打撃を食らうと大ダメージを受けることになるという話です。
 農薬の残留基準値の元にもなっているこういう毒性研究の成果は、基本的に単独の物質での毒性に基づいているようです。日本では農薬の有効成分数だけで500程度あるので、その中のふたつの「ルカナン&打撃」の関係を調べるだけで、単純計算で12万パターン以上の試験が必要になります。すごいですね(実際はもっと試験を絞れるとは思いますが)。
 なお、ふうたろうは、いくつかの種類の農薬を与えたネズミの肝臓をすりつぶしたもの(厳密には違うけど)を、活性酸素生成力で比較しようとしたことがあります。あまり実験はうまくいかなかったけど。
 …嗚呼、懐かしいね、論文。どうせ使い道のない知識だけど。中身を忘れないように、ここに書いておいたということで。
 ところで、この論文の題名とか著者とか、論文の本文を職場の机の上に放ったらかしてきてしまったので、解らないです。また気が向いたら載せときます。Toxicologyという雑誌の3月号だったかなあ。3月上旬に見たときに最新号でした。
 さて、北海道の山旅の計画を具体化しなければ。


天気:晴れ時々くもり(東京都板橋区・埼玉県所沢市)
覚え書き:携帯電池パック受け取り

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