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山の愛しかた(羊蹄山比羅夫コースリタイア:北海道後志支庁)

2010年 5月 2日

 ビバーク明けの朝です。あまり食欲はなく、むしろ、気分が悪い。でも、出発しないと。下山にしても登るにしても、同じです。こんなところにいつまでもいていい訳はありません。テントを丸めてザックに押し込み、出発です。


 朝になって、羊蹄山の斜面はアイスバーンになっていました。五竜岳の時ほどではないけど、厳しい。


 でも、お鉢の縁は見えている。行けるはず。


 しかし、それでも地面は固いところと吹きだまりでそこそこ柔らかいところの繰り返し。急坂だってあります。


 雪がきれいだと言っている余裕はあまりありません。
 いや、なんだか、吐き気がしてきた。まずい。


 今回もダメなのか。
 ふうたろうは下山を決定しました。北海道最後の日本百名山だったのに。やっぱり、ここ70の壁は大きい。
 この間連敗を続けていて、自信が更になくなっていきます。


 まあ、下山を決定したのですから、慎重に下りましょう。
 羊蹄山の影が見えています。


 五竜岳のあの斜面は非常に怖かったけど、羊蹄山のこれは、意外とまだあのときよりはマシです。完璧なアイスバーンではないし、斜度もあのときよりは…。まあ、結果論ですが。


 山頂が遠のいてゆく…。


 動物先生と言って山伏岳や恵那山、光岳を駆け回っていた頃が懐かしい。


 山の端から太陽が顔を覗かせています。


 羊蹄山の小さな谷と尾根に、少しだけ雪庇。


 太陽がはっきり顔を出します。


 雪の凹凸にメリハリが出てきます。雪山を楽しむなら、これでいいんじゃないのかな。本当は。ピークハントと100名山を絶対視すると、それだけでしんどいと思う。


 お約束の、雪原と木の陰。


 常に目の前にはニセコアンヌプリ。


 しかし、この妙な寂しさはなんだろう。ふうたろうは、これから、どこへ行くんだろう。
 来たときの足跡を辿るだけの今。


 この時季の北海道特有のことなのか判らないけど、とても空が濁っています。あまりきれいに影ができません。


 あの素晴らしい冬の空をもう一度…!


 下に近づくにつれて樹林が多くなってきます。足取りが重い。


 冬枯れの枝を見上げてみた。


 つらい下山です。


 羊蹄山の急坂が終わり、裾野を歩いています。…既に脚ががくがくです。


 昨日わかんやアイゼンを装備したあずまやです。ここで装備を外し、たたまずに突っ込んできたテントなどを一度きれいに整頓します。
 色々片づけをしていると、車で乗り付けてきた4人くらいのグループの中の一人がふうたろうに近づいてきました。上の状況のことを聞きに来たのです。もう、言うことは決まってますよね。とりあえずあのアイスバーンは、スノーシューなんかで登ったらイチコロですわ。


 半月湖を回ってみようかと思いましたが…。


 体力・筋力以上に、この樹林に覆われた湖の展望を想像すると、気力的に行く気が削がれました。


 嗚呼春はもうそこまで来ているのに…。


 道路を歩いて登山口のバス停まで歩きます。羊蹄山に背を向けて。


 斜面が輝いています。氷ですね、ホント。
 …これで、よかったんですよね、ふうたろう、引き返してよかったんですよね?


 さ、バス停まで、もう少し。


 また、夏か秋に、来よう。


 倶知安駅方面のバス停は屋根が付いています。ここであと40分くらい、mixiのゲームでもして待ちますか。


 9時半頃の羊蹄山。きれいですね。さすが蝦夷富士。


 10時頃の羊蹄山。もう雲がかかってきました。
 さらば、羊蹄山。また、来よう。


 倶知安駅前まで戻ってきて、メシです。駅前の『あんどう』という食堂にて、玉子丼をば。おばちゃんが人恋しそうな方で、食べている間中ずっと話をしていました。娘さんが手伝いには来てくれるそうですけど、基本ひとりでやっているとなると、やっぱり寂しいよね。ふうたろうにはうなずくくらいしかできないけども。
 …羊蹄山、次来たときにまた寄るよ。


 11時15分の函館本線小樽行きに乗り込みました。もう、羊蹄山を振り返らない…!
 眠気に襲われ、居眠りを途中に挟みつつ、小樽に着きました。小樽では、携帯の充電が切れそうだったので、予備のバッテリーを取り出そうとしたところ、なくなっていることに気が付きました。どこでなくした?…あとで札幌のホテルに問い合わせなきゃ。


 今日の小樽から見る海はとてもよく晴れています。羊蹄山に登れていたらどんなに…、いや、もうそれは言うまい。


 小樽を出た列車の次の終着は岩見沢駅。ここでまた若干の待ち時間。


 せっかくだから外に出てみようじゃないか。
 実は、2度ほどこの駅は使ったことがあって、一度目、まだこの駅がこれほどきれいではなかったとき、当時の彼女と北海道の旅をしていたとき、ここで酔っぱらいに絡まれたことがありましたな。
 …あのころから、何も進歩しとらんかった。
 2度目は、職場の交流集会、だったっけ。あれもそういえば彼女との旅と同じ2005年だった。


 さ、今日の終点、旭川に向かいましょう。


 そう、29日の日記には書かなかったけど、ふうたろう、餞別をもらっていたのですよ。丁寧にジップ付きの袋に入っていて…。
 中にはカスタードクリームが入っているおまんじゅう。ありがたくいただきました。美味いです。


 次はきなこをまぶしたお餅。一口食べるごとに、羊蹄山の味。しかし、何よりもまず出てくる感情は「ありがとう」でした。


 ふうたろうの好きなお菓子の一つ。これはまだ食べてないけど、本当にありがとうね。


 滝川駅に停車中。


 空に雲の群れが。


 後ろに少しずつ流れて…


 嗚呼、車窓の風景がなんて長閑なんだろう。


 もうすぐ雲を抜けます。


 旭川駅に着きました。宿の予約もないので、観光案内所に駆け込んだら、エラく遠い場所を紹介されてしまいました。


 とりあえず、宿に向かう前に腹ごしらえ。『味得』という、随分大きい兄ちゃんら2人がやっているラーメン屋で、煮卵を入れると、なお美味い。駅前の買い物公園の通りにはジャンクフードのチェーン店類がたくさんあるけど、少し裏に入ってみると良い。
 笑点がたまたまテレビでついていて、励まされたような気分になって笑っていました。


 買い出しのために少しの間店に荷物を置かせてもらいました。そのための会話がコミュニケーションを生み出すことは、経験的に知っていますが、今のふうたろうにとっては、その一つ一つがとても助けになるのです。
 何、センチメンタルなのは何も悪いことばかりではないということだ。


 バスで、旭川市の外れまでやってきました。
 うーん、いったいふうたろう、どこまで行くのだ?


 この、『東花苑』という旅館が今夜の宿です。最初、高いし、インターネットは使えないし、机もないということで、かなり損した気分ではありました。大浴場にも興味はなかったし。


 でも、まんざら悪いことばかりでもないというのが、ここしばらく貫徹している山の法則です。宿の人と少しだけど話はできたし、自転車を借りることもできて、買い出しに出ることができました。自転車があれば多少の距離でもへっちゃらです。
 手始めに、15丁目(宿は25丁目)のイトーヨーカドーまで。おかげで買い物がとても楽に済ませられました。


 それから、K産党の旭川市委員会に行って、A旗を買ってきました。今夜は読めなくても、明日とか読めるかも知れない。
 旭川の地理は、ふうたろう、他の都市よりも比較的知っているのですよ。とはいえ、もうこの辺りを最後にうろついたのは2005年の話。見つけるまでしばらく時間がかかりました。


 かくして、羊蹄山をクリアできず、打ちひしがれたふうたろう。もう少し、楽しめる山登りをやれればいいのに。
 でも、そういう躓きも、悪いことばかりではない。こういうときでないとちゃんと自分と向き合うこともないだろうから、これで良いのだと思う。きっと、羊蹄山のことも、それから彼女のことも…、これからに役立つさ。それに、こういう躓きがあるからできることや感じられることだってあるのかも知れない。
 それに、上手く言えないけど、打ちひしがれた羊蹄山、その印象とは裏腹に、どうしても悪い思い出とは思えないのです。複雑な心境です。またリトライするという確信があるから、ですか?


天気:晴れ(北海道後志支庁虻田郡倶知安町・上川支庁旭川市、移動中は含まない)

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