明暗(聖岳冬季ルート(白蓬の頭)コース:静岡県)
起床2時半。遅れれば終わりの、明暗を分ける聖岳強行突破です。
2時半はさすがにみんなまだぐっすりなので、できるだけ静かにして出てきたつもりですが、昨日交流していたAさんが起きていて、窓から声をかけてくださいました。
…椹島で会わないことを願っています。無事帰れますよう…。
頭がまだボーッとしているので、何となく出発もキレがありません。周りも曇り空以上に暗いので、眠気も強いし、足も重い。本来はやっぱり暗い時間帯は歩くものではありませんね。
小屋からの上り勾配のトラバースの途中に、水量豊富な水場があります。缶紅茶の蓋を切り取って作った即席コップに汲んでグビグビ。
出発は2時48分なので、ふうたろうがこのトラバースを終えて百間洞降下点に着いてもまだこのとおり暗い。実際、日の出までまだ1時間以上もあるので、写真をまともに撮れるレベルになるにはかなり経たないといけない。
中盛丸山の上りは少し急坂でしたが、短いのでなんてことありません。山頂までものの15分。
光岳方面の稜線にはガスが流れています。実は、さっきからガスが湧いてきて、視界が時々遮られています。冗談じゃないですぞ、また天気崩れるのですか?
とりあえず、小兎岳に着いたときには5時1分。起きて2時間半、何も食わずに歩いてきたのでハラが減ってきました。赤飯を食いましょう。
…何だか、箸が折れそうなんですけど。
小兎岳で日が昇ってきました。しかし、ガスの雲がウロウロしていて、なかなか明るくなりません。
小兎岳を越え、兎岳に向かいます。しかし、近づけば近づくほど、ガスの量が増えていきます。またあのガスだらけの山行に戻るのか…!?
聖岳を望んでみても、やっぱりガスが山頂を覆っています。まあ、晴れるのかもしれないけど、保証はないですな。
小兎岳と兎岳の鞍部に、だだっ広い場所があります。そういえば、テントの張れる場所があるとか、誰かが言っていた気がするけども…。ここのことかな?もっとも、ここに張ったら闇テンですがね。
この兎岳付近から北西を向くと、奥茶臼山の稜線が見えます。奥茶臼山は日本300名山です。マッタリと行ってみたいものです。
さあ、兎岳の急坂に取り付きます。…が、かなり下までガスが覆っていますね。
取り付いてみるとそんなにガスってはいないです。とりあえず急坂です。
小兎岳を振り返ります。一応晴れています。気まぐれな雲が通っては消えを繰り返しているようです。
…ん?(・ε・)
おおっ!(゚O゚;)
ブロッケンの妖怪です。ふうたろうのテンションが一気に上がった!
そして間もなく兎岳山頂。小兎岳から飯休憩入れて45分。驚異的な速さ…でもないか。
兎岳の三角点はちょっと盲腸線になっていますが、岩に"×"印が打ってあります。まあ、展望もこの通りだし、行く価値もないか…。
兎岳を通過します。薄いガスの雲が漂っていますが、稜線ははっきり見えているようです。
何だか、天気は好転する模様。さっきまでの不安は少し期待に変わります。
遠くに大沢岳などが見えています。あの場所まで2時間の距離なのですなあ。兎岳山頂でふうたろう5時46分。2時間58分ですな…。休憩なしのコースタイムで3時間15分のコースなので、まあまあだと言いたいところですが、おおよそ25%カットで行かないと間に合いませんぞ。
よく改修されていて、使用に耐えられるようです。なお、この兎に、ふうたろうを追いかけていた歯学部の彼が夜を明かしていたようです。ちょっと昨日、ややこしいことをしでかしてしまいましてね…。
ちなみに彼、15時くらいに百間洞を通過したあと、この兎に着いたのが20時だったそうです。よくがんばった。
兎岳がはっきり見えるようになりました。これですよ、これ!この山の風景を、この5日間待ち望んでいたのです!
さて、歯学部の彼には悪いけど、ふうたろうは先を急がせてもらいます。次は遂にラスボス・聖岳。HPは3013。強いぞ。長いぞ。
しかし、ラスボス戦も楽しむのです。切り立った岩場とかの風景は抜群。夜も明けて、ガスも晴れているので、この5日間で最高のコンディションです。
こちらのルートは認知度はどのくらいなのでしょうかね。聖岳を日本百名山として登るルートとしては、あまりメジャーではないのかもしれません。ヤブもそこそこですし。
しかし、聖岳がなかなか近づかない。まずは兎岳を完全に下りきらないといけませんが、その下りきる道がなかなか険しい。
聖岳に取り付いた途端、礫(れき)が赤っぽくなりました。まるで阿蘇山とかの火山礫みたい。
振り返れば遠くに赤石岳。あちらは山頂のガスがなかなか取れませんね。
空、スッキリ晴れているわけではないけど、ここまで見通しが利けば十分。後ろを振り返るだけで休憩になりますよ。
雲海が美しい、と言いたいけども、その雲海が何だか上に上に迫ってきているようです。追いつかれる前に登ってしまいたい。
聖岳山頂(前聖岳)に到着。意外と最後の方はあっさりでしたな。到着7時27分。兎岳から1時間41分。…兎岳との鞍部からコースタイムで1時間半なんだけどね、ほんとは。兎岳から鞍部に下るまでのらりくらりしすぎていたのを考えると、あと30分は早められたでしょう。
山頂のポイントが2箇所あります。ここからは、赤石岳がきれいに見えるはずですが、見てのとおり雲が。
光岳方面はちぎれ雲がイッパイ。さっきの雲海が消えゆこうとしているのかな?
しかし、山頂、人多いね。茅ヶ岳ほどじゃないけど、トムラウシくらいはいますな。
さて、ふうたろうは奥聖岳の方に向かいますぞ。ここからが本当のラスボス戦ですからな。何時間におよぶのかも判らない強敵に違いありません。
まずは第1ラウンド。奥聖岳までのハイパーよちよちコース。本当は楽なコースでもないけど、ここで手こずっていたら先はない。そんなところです。
まあ、とりあえず風景が素晴らしいので、写真なんかはバリバリ撮っていきましょう。
チングルマの綿毛。ちょっと露出失敗。だいたい、荷物背負ったまま不安定な格好で屈み続けるのは辛すぎます。
この可愛いマーキング、第2ラウンドの始まりを意味します。ここからが本気モード。コースタイムも判らない未知のルートです。
トラバース気味にあのピークのある稜線に移らなければなりません。
何だか、さっきから鶏とひよこみたいな声がすると思ったら、ライチョウの親子でした。この親子、ふうたろうが通ろうとしているところをウロウロしていて、なかなか退きません。まあ、ここの住人なのだから文句言えませんが。
さっきのライチョウがいる辺り、とても険しい。滑落の危険性もあります。とりあえずここまで下りたらあとはまっすぐ向こうの稜線に。
稜線から奥聖岳を見上げると立派な山であることを改めて感じます。
この稜線、しばらくはアップダウンを繰り返しながら下ってゆきます。
変な踏み痕がいくつもあって、若干迷いそうになるところ。気をつけよう。
樹林帯に入ると、展望云々よりキツいのがスウォームです。アブラムシの大群がふうたろうの頭めがけて音もなく飛んでくるのだから、おぞましいなんてものではないですよ。
この辺りから、道迷いの危険性がグンと上がります。
樹林の見通しが利かない中、稜線が分岐している箇所が出てきます。ふうたろうも危うく違う方の稜線を下りかけましたが、地図を再確認して修正しました。赤いペンキの印は常に付いていますが、見落とすこともあります。十分に注意が必要です。
なお、ここでは道迷いで遭難した人の遺体(行方?)がまだ見つからないそうです(百間洞の小屋番談)。
黙々と歩いて白蓬の頭(しろよもぎのかしら?)。木が伐採されているような場所です。
景色は十分見たから出発しようと思ったら、何と先に進む道が判らん。今まであったペンキやリボンはいつの間にかなくなってるし。
しかし、20分探しても見つからなかったルートは、実は白蓬の頭の肩から出ていました。まったく、犬死にでしたな。
目印ではあるけど、GPSを付けていないので(持ってはいるが)、現在地の精確な確認は不可能。
時刻は11時を回りました。さすがに足も痛いし、疲労もたまってきました。見えない天を仰いで、ちょっと長めの大休憩。
ジグザグの下山路を延々と歩きます。一気に下りられないというもどかしさがありましたが、坂がただ者ではないくらい急なので、何があっても道どおりにしか進めません。
この鉄塔を見たとき、12時くらいになっていたでしょうか。まだここから高さで150mほどの下りが残っています。あまりの長さにもはや声も出ない。
作業用の階段が拵えられているのでしょうか。鉄塔より下はこのステップがたくさんあります。
12時11分、ようやく林道に降り立ちました。…と、そんな満足感や安堵感を味わう間もなく、諸々の事情で椹島(さわらじま)に労せずして到着。まあ、ラッキーだったということですか。
椹島、もっと観光地化しているかと思ったけど、そうでもないですね。意外と静かで安心しました。
椹島からバスに乗って畑薙第一ダム。ここまでのバスは悪路の上を通ります。しかも満員で補助席まで出して乗せるので、乗り心地は凄まじく悪い。更に、タイヤがパンクしました。何踏んだんだろう。
畑薙第一ダムからしずてつジャストラインのバス。山伏岳に登ったとき、乗ったバスと同じです。今日はなぜか3両編成。
3両編成最後のバスは、市バスタイプの車両です。ふうたろうは高速バス(観光バス?)タイプの車両ではなく、あえて市バスタイプのに乗りました。中に荷物持ち込めるし。
これから3時間半くらいのバス旅になります。時間的にはもはや高速バスですか。苫小牧と札幌間よりも長く、恐らく、札幌から羽幌くらいあるのではないかと。南アルプスの山奥度の凄さを感じます。
この井川駅前には自治体の自主運行線のバスが走っています。しずてつジャストラインのバスは夏の40日間くらいしか走っていませんが、この線は、かなり手前とはいえ、けっこう奥まで行けるようです。大無間山に、冬に登りたいと思ったら、このバスで来るといいかも知れない。
このあと静岡駅の「東京ナシゴレン」という店で飯を食って、鈍行で帰りました。ええ、あの地獄の東海道鈍行です。
…長い南アルプスの旅が終わりました。茶臼岳までの大縦走はできませんでしたが、日本百名山の聖岳まではなんとか中縦走できました。停泊がほぼ丸二日。これほど荒れるとは当初思いませんでした。さすがにこれほど停滞を余儀なくされると、三伏峠から畑薙まで歩くのは無理でしたね。
夏の大山行(最近いつも大きいが)が終わると季節は秋に進みます。これからは山も急速に秋に向かうでしょう。まあ、今年は暑さが尋常ではないので多少遅れるとは思いますが。
2010年は8ヶ月で19個の百名山制覇。残り17個。東北ブロック4、上信越ブロック3、北アルプスブロック5、南アルプスブロック4、近畿ブロック1。まるで衆議院の比例代表選挙区ブロックの数みたいですね。今年中に合計36個、クリアできますかねえ…。12月とかバスがないから、実質11月か10月まで。…厳しいね。
#81荒川岳クリア。
#82赤石岳クリア。
#83聖岳クリア。
天気:晴れ(静岡県静岡市・長野県下伊那郡大鹿村、移動中は含まない)
ふうたろうさん、
百間洞でお世話になったOです。
この日は気にしながら歩いていましたが、奥聖からガスの中一瞬姿を現した東尾根の全貌を見た時にハイマツが思いの外少なさそうなのでなんとか間に合いそうかなぁ?と思いましたけど、本当に間に合って良かったですね。
翌日は聖平らから下山。温泉で一浴した後なんと百間洞でご一緒した方に車で静岡まで送ってもらいました。こうなったのもあの時ふうたろうさんがあのブースのエンジンになって盛り上がったから(もちろん自然に、ネ)だと思ってます。
ありがとうございました。またどこかでお会いした時は宜しく。
最後に余計なお世話を焼いちゃいますけど・・・
花1 の白い花はウメバチソウ(ユキノシタ科)
花2 の緑の花はミヤマバイケイソウ(ユリ科)
その下の赤いのはオンタデ(タデ科)の雌株
不明のお花はデガタチドリ(ラン科)だと思います。失礼いたしました。
こんにちは。
ふうたろうの方こそ、お世話になりました。
>ハイマツ
ふうたろうも、意外とヤブがひどくないと思って歩きました。
まあ、やっぱりヤブでしたけど(笑
実際のところ、ヤブよりもアブラムシなどの大群が大変でした。
水筒のケース、頭に巻いているタオル、
あらゆるものがアブラムシまみれに…(滅
道迷いを誘う場所も、
小屋番のいうとおり、何カ所かあって、
これ、慣れないと迷うだろうなと思いました。
それでも何とか、林道に12時11分到着。
聖岳登山口のバス(ごにょごにょ)に乗れて、
椹島には12時半頃にはつきましたか。
>花
さすが、よく知っておられますね。
ウメバチソウ、間違いなく見たことあるはずでした。
ミヤマバイケイソウ、図鑑で見つからず…
オンタデ、たぶんこれも見たことあるはずです。
テガタチドリは絶対見たことあります。
やっぱり、その場に図鑑(デカいやつ)を持っていって、
花専門で見ないと判んないですね。
帰ってから解像度とアングルの悪い画像データだけでは…(滅
言い訳しますと、その花を調べているとき、
朝ご飯などを食べ過ぎて気分が悪くて集中できなかったのです(爆
やっぱり健康が一番(笑
>エンジン
いえいえ、ふうたろうの方こそ楽しかったです。
あれがなければ、ずっと機嫌悪いままで辛かったはずです。
助かったのはふうたろうの方でございました。
言い遅れましたが、
コメントありがとうございました。
またどこかの山小屋でお会いできるといいですね。
そう、Oさんを見て思い出したのですが、
あの、アケボノソウを載せるの忘れていました。
その修正が入るのは月曜以降ですが、
後で足しておきます。
何せ、Oさんとの話の切欠でしたからね、あの花は。
ふうたろうさん、荒川岳・赤石岳・聖岳 無事クリアおめでとうございます。
それにしても台風一過の晴れ晴れ・・・といかず残念でしたね。
でも停泊中の記事など楽しく読ませていただきました。
それにしても、白蓬ノ頭って何処?と地図を開いてしまいました。あの鉄塔を「1/25000」で確認してこんなところ歩いてたんだ~と吃驚しました。人と違う登山が好きなのですね・・・
>2010年は8ヶ月で19個の百名山制覇。
すごいスピード!!!
そんなに急いで登るには何かワケでも・・・?(失礼
もしかして、その先に外国の山があったりして・・・?(想像
>wineさん
急いでいるのは、100名山を気にしないで登りまくれる日が早く来るようにということです。
まあ、200や300が気になっていくでしょうけど。
外国の山はあまり憧れていません。
エベレストなんて600万円とかかかるなんて、
一生無理ですし。
>白蓬
昭文社の地図だと、聖岳からダイレクトに椹島付近まで下っているルートですよね。
25000分の1の地図には載ってないです。上手く道探さないと迷います。
なお、そうこうしている間に、
今年20個目の雨飾山をこっそりクリアしてしまっていたり。
天気が悪くて思い通りに行かなかったのは残念でしょうが、それはそれで楽しみもあるみたいですね。
さすがに日程に余裕がないとできない話ですけど。
冬季ルートって書いてあるけど、雪積もってなくても通れるもんなんですね。
いろいろ参考になることされてていい勉強になります。
>Yサーさん
>日程に余裕
まさにそうですよね。
色々な山に登っていて、
そこで出会う人々の話を聞く度、
なんと日本人の労働条件はひどいんだろうと、
いつも思います。
連休も有休もろくに取れない人がどれだけ多いかと。
それさえできれば、もっとみんな山にも行けるんでしょうに(笑
>冬季ルート
雪積もってたら、もっとヤヴァイかと思います。
あの急斜面のトラバースとか、考えただけでゾッとします。
稜線も細いところ、ありましたし。
なんであれが、「冬季」なのか、
ビミョーにわかりかねます。