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日高の風とふうたろう(カムイエクウチカウシ山八ノ沢コース上り:北海道十勝支庁)

2011年 8月 19日

 コイカクシュサツナイ岳(コイカク)に行こうかカムイエクウチカウシ山(カムエク)に行こうか迷っていたふうたろう、結局、我が道を行くことにしました。札内川本流がどの程度増水しているのか想像もつかないけど、それでも自分で行けるところまで行ってからでないと、諦めきれないではありませんか。
 ふうたろうは普通のマイカー登山者よりも1kmほど余分に車道を歩きます。しかも、トンネルを2本越えるのです。


 空はひたむきに曇っていて、下層雲がもんもんとしています。そして、気になる札内川の方は、これで水量が増えているのか通常どおりなのか、よく判りません。


 ヒュッテから2本のトンネルを越えて車道終点まで行くのですが、1本目のトンネルを越えて2本目に入る直前に、コイカクの登山口があります。このコイカク登山道も、基本的に沢ルートだそうです。実はふうたろう、あれだけ神威でひどい目に遭っていても、沢には何気にホレ始めています。いつか、このコイカクも登ることになるでしょう。


 さて、ここが車道終点のゲートです。通常はここから誰もが車道歩きです。ここから七ノ沢出合まで、7km弱あるそうです。がんばりましょう。


 なんの変哲もない砂利道に見えますか。しかし、今までの雨で、一部冠水しているところもあります。肝心の沢の方は、というと…


 樹林に視界を遮られているし、道からも離れているので、水量も流速もよく判りません。これはやっぱり、行ってみないと判らんと言うことか…


 実はこの砂利道は、大きな道路を建設する予定だったのを中断したものなのだそうです。だから、この砂利道の途中、立派な橋梁があったりします。
 ま、良いんだよ、これで。山の奥まで車で入る必要なんてないさ…。


 ふと明るさを感じたと思ったら、背後から薄日が差しているではありませんか。これからの天気、どうなるんでしょう。見せかけの晴れ間の後は、また土砂降りなんですか?


 七ノ沢出合が近づいているようです。ここは砂防で、深みがありそうですが、砂防だからなあ…


 何となく水が増えているようにも見えますが、比較論としてはよく判りません。結局、渡渉する感触で見るしかないですかな…


 さあ、七ノ沢出合です。ここから、ふうたろうはカムエク城の堀を渡るのです。天守閣は遠いぞ。


 Iさんの車の中に積んであったゴミ袋を一束いただきました。これで衣服やテント、寝袋などの諸々をくるんで、いざ転けてザックがびしょぬれになっても大丈夫なようにしておくのです。特に今回はカメラには気を遣わないと…
 でも、カメラは常時使うものなので、本当に危険区域に行くまで腰にぶら下げておかねばなりません。


 ここ、モロ森林だったところですな。それがまるでマングローブ林のようになっています。完璧に森が水の中に沈んでいます。ある意味非常に幻想的でラッキーな風景ですが、こんなので沢、渡れるんですかいな…


 若干の恐怖心をかみ殺しながら、とりあえず沢を奥へ詰めます。装備は、今回は完全に水耐性装備で、沢靴にタイツ1枚。ズボンや登山靴はがっちり袋で防御しています。しかし、沢靴とタイツで歩いていると、無性に沢の中をジャブジャブしたくなりますね。


 天気の方はというと、少し晴れ間が広がってきた模様です。一昨日の芦別岳の時のような天気ですね。


 本流は、最低2回の渡渉を伴います。なぜ渡渉しなければならないかというと、流れがカーブするところというのは、大抵が片方の岸が崖状になっていて、そこをつたっていくことは基本的に無理だからです。渡渉した方が、ずっと楽で安全なのです。
 しかし、今日は水かさが多く、実はこの樹林の中の巻き道の手前、一度目の渡渉をなんとか終えた頃、昨日八ノ沢出合(七ノ沢よりも支流2本分上流)で渡渉しきれなくて、手前で留まっていたという人が、結局今日も水が引かなくて帰ってきたというのです。
 …ふうたろう、それは怖かったものです。そこで出会った人は4人グループで、しかも沢のプロっぽい。その人たちをして渡渉不可能ですから、どんな激流なのだろうと。


 巻き道のヤブと川すれすれのところを縫うように歩いて、それでも八ノ沢出合を目指します。諦めなければならないかもしれない思いと、諦めたくない思いとが頭の中を行き交います。


 実は、沢の恐怖に目がいっていますが、この沢の巻き道と称した樹林帯の中の道、非常に不鮮明です。沢に出る部分にはピンクリボンが付いていますが、巻き道そのものは踏み跡程度のところもあります。下手すると、エラく迷ってひどい目に遭います。


 きっとどこかに渡渉点がある。ふうたろうは、常に向こう岸に渡る隙を狙っています。しかし、沢の流心はどこも猛烈な勢いで、付け入る隙を与えません。


 空はいつの間にかどんどん青く晴れ渡ろうとしています。


 樹林帯を歩くのは、実は浅い沢の渡渉よりも遙かに辛いことを、ふうたろうは感じつつあります。
 ヽ(゚Д゚#)ノ うがーっ!!樹林もうイヤだーーー!


 ふうたろう、7時24分頃に七ノ沢出合に着いてから、実に4時間、この八ノ沢出合近辺で右往左往しています。
 しかし、そんなとき、一人のおっちゃんが軽身で一本の棒を持ち、涼しい顔して沢をどんどん遡上していきます。
 この人はイクチオステガなのか…
 そして、ふうたろうが躊躇していた八ノ沢の手前を、ガツッと棒でバランスをとりながら、サクッと渡渉していきました。


 ふうたろうはその姿に勇気づけられました。渡渉手前に落ちていた直径5cm、長さ2mほどの長い流木を握りしめて、カメラはしっかりザックの中に袋詰めして、意を決して渡渉開始。
 さあ!かかってこい!!
 ……


 数時間前に比べると3cmほど水かさが減っていました。そのせいもあるのでしょうか、キンタマまで水が浸かりましたが、遂に渡渉成功です。その時に助けてくれた、文字通りの相棒がこいつです。


 もう一回、さっきのに比べれば随分流れは小さいけど、侮ることもできないレベルの渡渉。


 そして、その渡渉を越えたら、遂に八ノ沢のテン場です。みんながテン場にするだけあって、ほんとにテントサイトになっています。
 ふうたろう、八ノ沢テン場到着、なんと12時13分。七ノ沢出合から歩き始めて5時間を要しました。


 空はいつの間にか夏空。さあ、これから沢登りだ!


 八ノ沢も増水しています。しかし、巻き道が水没するほどでもないし、渡渉点に至っては、本流に比べれば屁のカッパです。出合の中ボスを倒したら、あとは天守閣をもぎ取るのも時間の問題でしょうか。


 ここから、再び水の宴です。若干アクが浮いているところもありますが、水は清らかで冷たくて快適です。ふうたろうのテンションも上がります。


 夏空も応援してくれています。暑いので、沢の中を歩いて冷却しながら、ということになります。


 それでも、水かさの多いところ、ゴルジュほどではないけど、淵になっているところはそのまま上がれませんので、巻き道を通って上に上がります。しかし、この巻き道ってやつが、暑いし虫は多いしヤブだしで、良いことなし。


 上流に近づくにつれ、ちょっとずつ風景が変わります。にわかにできた滝とかがあったりします。


 そして遂に、カムエクの稜線が見えてきました。天守閣までの道はまだまだ長いけど、外堀は越えた!


 しかし、この八ノ沢の遡上も、実は楽ではありません。急坂だったりゴーロ(岩がゴロゴロ)だったりで道そのものがエグイのは否定しませんが、沢が何本にも分かれ、ヤブの中に道が消えている箇所があまりにも多い。すなわち、道迷い誘発型です。


 ふうたろうは、それでも自然を満喫します。意地でも満喫します(何
 この清すぎる沢の中に、魚がいることに驚いています。これはイワナ、ですか?オショロコマがいるとかなんとかと、後で聞くことになります。


 一部、雪渓が残っている沢もあるようです。年によっては、ルート上に残っていることもあるそうですが、今回は特に残っている場所はありませんでした。


 空は再びガスに覆われつつあります。しかし、ふうたろうはとりあえず上を目指します。沢を越えて、カールを越えて、なんとか今日は稜線まで上がりたい。


 三股という場所がおよそ1000mです。しかし、ふうたろうが今日登るところは、最低でも1700m。まだまだ道のりは長い。荷物は重いし、これから坂もいっそう急になります。しかも、どうもまだ三股には達していないようです。


 ふうたろう、遂に変な支流に迷い込んでしまいました。リボンはいつの間にかなくなっていて、石も不安定なものばかりになり、ヤブもおぞましい。どう考えても、人が歩いている形跡はない。


 ひとまず、休憩です。さっきの4人で引き返していったおっちゃんらの一人にいただいた飴を食べます。空腹甚だしいので、非常に助かります。


 結局引き返して、リボンのあるところまで戻ってからよく道を探すと、草やぶの中に踏み跡が続いているのを発見しました。そして、ようやく軌道修正です。


 下流方向を振り向くと、1628.7mのピークが見えています。ふうたろうはあれを基準に、だいたい今いる位置を推し量りますが、つくづく考えなければよかったと思うときがしばしばです。


 三股を越えてからの急坂は地獄です。沢靴を脱げるような状況ではないので、沢靴のまま登っています。荷物も重いので疲れます。


 滝のそばに寄ると、冷たい風が吹いてきます。涼しいを通り越して、寒いほどになってきました。


 高度がだいぶ上がってきました。しかし、まだまだあります。
 それにしても、この沢は本当に高いところを流れていると思います。とても奇妙な感じがします。


 これはピラミッド峰でしょうか。よく判りませんが、稜線がかなり近くなってきたことだけは確かです。しかし、ふうたろうは、既にカメラのシャッターを押す体力もなくなりかけています。


 どうやら、カールに達したようです。ヒグマの気配はするかどうか、イヤ、その気配はないようです。ふうたろう、鈴をガンガン鳴らして歩いていますから…。


 ここも八ノ沢出合同様、テン場になっています。周囲にはこういう砂地の平地がいくつかあります。しかし、今日テントを張っている人はいないようです。


 これは、火付けに失敗したんでしょうかね。


 このカールから稜線に上がろうとした頃、今朝ふうたろうの前でイクチオステガのように悠然と沢を渡って、先に進んでいったおっちゃんが、下ってきました。軽身なのでテントとかも持っていなさそうで、心配でしたが、ツェルトを持っているそうです。八ノ沢出合まで下りて、ビバークするそうです。どうかお気をつけて。


 ふうたろうは稜線に上がります。カールから稜線に上がる道は、これまたけっこうな急坂です。カールで登山靴に履き替えている分、若干上りが楽になりましたが、もう体力的には限界。しかし、昭文社の地図に書いてある場所にテン場がありませんがな!


 絶対どこかにテン場はあると祈っていたふうたろう、カムエクの山頂方面に100mか200mほど上り坂を進んでいったところに、ようやく平らなところを見つけました。
 うむ、どうやらクマの気配もそれほど無いようです。しかし、同時に人の気配もないという件。


 ふうたろうがこのテン場に着いたとき、ガスが多くて本当にテンションガタ落ちでした。しかし、東側は辛うじて展望が望める状況でした。


 しかし、ガスは出たり収まったりを繰り返して、どうも安定しない景色。


 夕日は望めそうもないので(そもそもカムエクに隠れている)、そそくさと晩飯です。腹も減りまくっていたので、カレーに最後のガラムマサラを全部ぶっかけて、モリモリと食いました。


 ところが、しばらくしてテントのチャックを開けて外を見ると、なんとピラミッド峰がガッツリ見えているではありませんか。


 いやいや、それどころではありません。さっきはくもり倒していた日高側の谷も、雲海になって展望が開けているではありませんか。ふうたろう、今度こそ晴れた稜線でもそもそできますか?


 遂に越えました。あの渡渉を越えたときから、ふうたろうは山頂ゲットの確信をいっそう強めましたが、今この稜線にテントを張っていると、もうカムエクの山頂ゲットに、わくわくしかしません。天気予報を見ると、明日の天気もそこそこ良いようです。これはもらった!きっと、大展望が望めますよ!!
 期待を胸に、今日はこの静かな稜線で休みます。


天気:くもりのち時々晴れ(北海道十勝支庁河西郡中札内村・日高支庁静内郡静内町)

  1. みゃーみ
    9月 4th, 2011 at 19:17 | #1

    読んでいるこちらまでワクワクしてきます。

    明日の朝が楽しみ!

  2. 8月 1st, 2014 at 18:49 | #2

    ふうたろうさん
    はじめまして。
    かなり前の山行のコメント、大変失礼します。
    facebookの日本三百名山のリンクから来ました。
    昨年、銀泉台からトムラウシに縦走をして、北海道のお山大好きになってしまいまして、今年も北海道のお山に行くことになりました!
    もちろん、こちらのコメントに書かせて頂いておりますので、カムエクです。
    今回は、私一人では行けないお山だと思いましたので、同行者がおりますが、やはりいろいろと調べたいのが、お山の楽しみの一つです♪
    facebookの三百名山のお写真も素敵で「いいね!」をさせて頂きましたが、やはりこちらの文章が楽しく、拝読しております。
    カムエクは、ワクワクのドキドキの不安だらけですが、楽しんできたいと思います。
    では、また。

  3. ふうたろう
    8月 1st, 2014 at 21:50 | #3

     kaoritreeさん、初めまして。こんばんは。
     カムエク、3年前ですね。もう3年になるのですね。でも、コメントはいつの時代のものでもできますので(スパム等は容赦なく切りますが(笑))お気軽にどうぞ。僕の文章の方がクドいですけどね…

     facebookの三百名山、今日、たくさん「いいね!」を付けていってくださった方ですね。なかなか更新する時間と体力ができませんが、ボチボチやってます。あちらの方もごひいきください(笑 でも、メインはやっぱりこの「ふうたろう絵日記」の方です。

     さて、銀泉台からトムラウシまで、ですか。長いですね、あの尾根は…高根ヶ原のあの平たい尾根は、忠別沼を越える前後あたりから段々つらくなってきて、忠別岳避難小屋に着く頃には虫の息になっています(汗 銀線台から忠別岳避難小屋を一日で110リットル担いでいくのは、やっぱり無理があるのかも知れませんね…
     まだ確認していませんが、ブログをやっておられるようなので、あとで拝見しますね。

     カムエクは、もう、登山口につながる道路は開通したでしょうか。日高山脈はマイカー通勤(笑)できる人にとっては、他の地域の山とそれほどの大差はないと思いますが、それでも林道の崩壊などが多くてよく通行止めになっていますよね。カムエク、一番奥まで入れるといいですけども。
     どういう行程で行かれるのかは解りませんが、八ノ沢でテント泊でしょうか。山頂付近までテントを担ぎ上げられたら、景色が爆発するほど美しいです。がんばってくださいね。

     夏は九州・九重山などに行こうかと思っていましたが、西日本・南日本のお盆付近の天気が猛烈に怪しそうなので、北海道に急遽緊急脱出することになるかも知れません。

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