ジゴクアルプス天然水(伊予富士・瓶ヶ森縦走コースと東之川コース:愛媛県)
起床3時前後。ネボスケふうたろうにしては上出来。外をおそるおそる見上げてみたら、なんと星が見えない!
しかし、テントの中でヘッドランプを付けていたため明順応していただけの話でした。よく晴れています。
でもしかし、テントの中までビチョビチョになるほど朝露が猛烈です。ふうたろうの持っている水はもう500mlほどしかないけど、ササの中でゴソゴソしたら1リットルくらい簡単に集まるのではないかと思うほど。メシのあと、必死でタオルでテントを拭いて、色んな物を拭いて、何とか4時46分出発です。
でも、空はまだ真っ暗。星が撮影できそうなほど。東の空はうっすら明るくなり始めてはいるようですが。
さて、伊予富士が見えてきましたよ、という前に、朝露が猛威を振るい始めました。ここ一帯の登山道はササが思い切り被っているので、雨合羽・スパッツ・ザックカバーフル装備です。しかし、ふうたろうのアキレス腱である登山靴は、実は大穴が開きまくっています。特に左足はひどくて、踵と親指の横の所は、防水フィルムがすり切れて消滅しています。
というわけで、瞬く間にびしょぬれ。靴の中が。
伊予富士が近づくにつれて笹ヤブもキツくなるし、朝露も猛烈になります。下手なにわか雨に遭うとかよりもよほどタチが悪くて、足ピンポイントでずぶ濡れにしてくるので、ほんとにイライラがたまります。
笹原のモルゲンロート。笹原でもこんなに赤くなるもんなんですね。ふうたろう、びっくりです。でも、両足(右もダメになっている)沢靴状態でアホみたいに不快なので、感動どころじゃないって話。
靴さえ濡れていなければ、本当にいいところなんですけどね…。ここを歩くには、長靴装備でないと、辛いですわ。あるいは、沢靴とか。いっそのこと、ビーチサンダルとか?
この朝焼けは、いつものように、あっという間に褪せていきました。
伊予富士はこれまた急坂を登るのですが、崖もいっぱいある山です。6個ほどピークが繋がっていて、寒風山などの方から見る限り、少なくとも「富士」という感じはしません。
慌てて靴を脱いでひっくり返したら、ほらこの通り!
焼山から雨飾山まで抜けるとき、途中の金山で同じように靴ひっくり返してたなあ…。天塩岳で土砂降りに遭ったときでもこんなんならんかったと思うけど…
空には、若干雲が多い。昨日や一昨日よりも。雲の多い、晴れ。でも、天気が崩れる気配はまだなさそうです。
と言いたいところだけど、水が大ピンチなので、この伊予富士の最短登山口にある水場に行かざるをえませんな。鞍部から戻るようにターンして下り道へ。
しかし、こんな稜線近いところで、水なんて本当に湧いてんのかいな…。こうしてカラカラになった流れの跡が、いったいいくつあったことか。不吉ですなあ…
今朝、食べきれなかったパスタをイナヅマ食いして、ここでグビグビ水を飲んでおきます。…が、飲み過ぎて気分が悪くなってしまいました(滅
靴は猛烈にビチョビチョで、靴下を再び穿く気にもならず、左足ははだしのまま登山靴を履きました。そして、このまま車道を歩いて瓶ヶ森まで…
しかし、この延々と続く車道を、本気で歩くのか?それはそれで苦痛な話かも知れません。
ここ、伯母子岳からごまさんスカイタワーへの道を思い出しますね。もっとも、あの時よりも圧倒的に車通りも多いですが。みんな、連休だけあって、やってくるのですよ、車で。
高積雲が太陽を時々隠すので薄暗くなります。
ところで、このあたりで、草津(滋賀県)から来たおっちゃんがスクーターみたいなのに乗ってやってきました。今朝イチのオレンジフェリー(大阪~東予?)で来て、今日中に帰るのだそうです、スクーターで。
そのスクーターのおっちゃんは、このジネンゴノ頭の方の笹ヤブに入って景色を眺めようとしたらしい。でも、ふうたろうと同じようにずぶ濡れになって全滅してきたらしい。ふうたろうはもう濡れきっているので今更、という話なのです。
着きました。ジネンゴノ頭。笹原の上に立てるビューポイント。これで朝露の猛威がなければなあ…(滅
西黒森の向こうには瓶ヶ森があります。左の傾いた台形状のやつがそうです。
そういえば、何だか無性に足がむずむずする。痒いというか痛いというか…
ほんとに、ここは朝露の猛威がなければ、伊予富士からの大開放を楽しめます。
笹ヤブは笹ヤブだけで大変だと思う人もいるかも知れないけど、スパッツを着けて、長袖のシャツを纏っていれば、ダニなども殆ど心配ない。北海道や東北のと違って、デカいのは今はいないみたい。
延々と歩いてきて、やっと西黒森との鞍部が見えてきました。足の痛痒さと、濡れた不快感と、石鎚山が絶望的なのとで、妙に遠く感じる…。いや、実際コースタイムの設定がキツいんだけど。
西黒森に行ってもいいけど、左足がとりあえず痛痒いので、破れている上にずぶ濡れの靴下を履き直さなきゃ…
この石碑を見ると、この稜線をかすめるように走っている林道は、20年ほど前に造られたそうです。誰の利権が絡んでんだろうねえ。こんなところに植樹はないし、材木を運ぶのであればトンネルだって下の方を通っているし。
あとで瓶ヶ森の山頂で聞いた話によると、瓶ヶ森ヒュッテだったか、どこかのオーナーなどは、この林道の敷設に反対したそうで。元々はこの林道も瓶ヶ森の南側ではなく、北側を通ることになっていたそうです。
ここには神鳴池(かんならしいけ)があるようですが、樹林に隠れて見えんわ。
さて、更に林道を進むことにしますか。足が健康であれば、ついでに笹ヤブも健全であれば、全山縦走したかったなあ。
ここあたりで、地元の青年が、チャリデポ法を使って笹ヶ峰から瓶ヶ森の縦走をし終えて帰ってくるところに出会いました。車があるってのは、そういうこともできるんだよねえ…。羨ましいかも。そういう意味では、林道があるおかげとも言えるけど、無ければないで彼らが困ることはまずない。
笹原と秋の空。大開放で、目をハートにしてワーッと叫びながら歩きたいのになあ…。
急坂ももうすぐ終わり。何気にヤブっぽかったけど、もはや今更、であります。
瓶ヶ森到着。非常に長かった。猛烈に疲れた。東赤石山から縦走なんて、3日でやるもんではありませんな…。
ふうたろうが100リットルのザックを下ろしたら、それに興味を持った人が集まってきます。
これでふうたろうの100リットルザックを背負ったのは、7人目くらい?
ふうたろうにとってはいつも背中にくっついているやつなので、別に何の不思議もない物なのですが、見る人にとってはびっくりなのですかね。空気みたいなもんですよ、ふうたろうにとっては。もちろん、場合によってはクソ重いけど。
ふうたろうは瀬戸内海を眺めています。
この瓶ヶ森で小一時間マッタリと過ごして、来る人行く人と話をして、ふうたろうは下山開始です。
まず、この瓶ヶ森の西側は笹原と針葉樹の美しい原野になっています。これはすごい!
しかし、さっき述べたように、こちら側を林道通そうとしていたと、山頂で出会ったおっちゃんが話していました。反対していた小屋の主は亡くなったそうですが(確かそんなことを言っていた)、財産を残してくださって、本当にありがたいことです。
そう、向こうには石鎚山が見えます。あの石鎚山からも、この瓶ヶ森はよく見えていました。前社森の岩の上から見た瓶ヶ森、良かったなあ。
笹原の整備された道を歩きます。登山道として許せるのはこれくらいが限度ですよ。
笹原と針葉樹。人がまったく入っていなかったいにしえの時代、ここはどう見えていたんだろう。
足さえ濡れていなければ大開放の笹原を一気に駆け下りてきた感じです。
踏み跡が雨水などで削れてえぐれてしまったために、踏み跡が何本もできています。大雨が降ると、こうなるんですよね。どうにかして、浸食を防ぎたいものですが。
ジオラマみたいな風景です。真ん中には瓶ヶ森ヒュッテがありますが、ある人は蛇小屋なんてことを言っていましたっけ。
ブッ¨:∴(●ε◎。)
大きな枝に向こう脛をぶつけました。痛くて歩くのがしんどいくらい。
これから樹林に入っていくと、あとは長い下り道になるでしょう。山頂で喋っていたおっちゃんが、この道が無難だと教えてくれたので、こちら、東之川コースを下山します。
なお、この瓶ヶ森に来ている人は、やっぱり地元の人が多い。日本300名山レベルになると、知る人ぞ知るレベルのものが多いのでしょうね。
人はあまり通っていなさそうなのに、道が川になって抉れ気味ですなあ…。
このあとはひたすら樹林帯。展望のあまり利かない、足場もあまり良くない道です。先日の台風の影響もあって、出水もありました。
ここは、台ヶ森との分岐。せっかくだから、台ヶ森行ってみましょうか。足は不快だけど。
荷物を分岐に放り投げて、この蜘蛛の巣ビッシビシの笹ヤブを抜けて。
台ヶ森。
…前社森(石鎚山の成就社から山頂へ向かう途中にある)のような風景を想像していたけど、展望はこのひとつだけで、他は樹林で覆われています。昔はそれとも、もっと木が小さかったのかな。
この後も急坂の下りが続きます。冗談抜きで濡れた足に響きます。
この丸太を組んだ橋は新しそう。そこそこ使われている道、なのかな?
ここは新道と旧道の分岐です。しかし、沢に下りる新道は崩落しているそうで、ロープが張られ、立入禁止になっています。
しかし、この集落、人が住んでいるのか?ビニルハウス跡っぽいのがあるけど、ものすごい蔦に覆われ、見る影もない…。廃屋も多いようだし。
神社がありますが、今はお参りする人もいないのかな。
どうして、こういう集落が廃れなければならないのか。ここには林業や農業、観光や生活道路の整備などの仕事が、本来はあるはずなのに。さっきの林道みたいな大型事業はするくせに。
健全なのは墓だけか。いや、その墓石も倒れているのがあります。もはや、墓参りに来る人もいなくなったということか…。
この小学校か中学校か判らないけど、機能しているのか。校舎が見あたらないんだけど?
…西之川集落に到達。バス停はすぐそこにありますが、人気がまったくない。
バスの発車時刻は15時15分。次のバス停である石鎚山ロープウェー前のバス停は17分。時間はまだ1時間ほどあるので、そこまで歩きますか。
しかし、ここでふうたろうらしい大罠に引っかかります。
なんと、道路が台風で崩壊し、バスが来ていないのだそうです。いや、バスはおろか、温泉に運ぶ灯油の配達車まで来られず、日帰り入浴まで断られてしまいました。何という特大罠…(滅
石鎚山ロープウェーの係員か、それともボランティアなのか、崩落しているところまで客をピストン輸送してくれています。そのピストン輸送しているところからバス停まで歩かなければ行けないので、みんなこの崩壊寸前の道を歩いています。
この川も大暴れしていたんでしょうね。そのあたりの林道もガードレールとかに枯れ草などが絡まって、津波でも来たのではないかと思えるほどでしたし。
バスが伊予西条駅に到着です。
駅ナカのうどん屋で、かき揚げ丼を注文したのですが、ふうたろうはみそ汁と漬け物を要らないといったので、おばちゃん50円サービスすると言ってくれました。その気持だけありがたいということで、そのご厚意を辞退しておきました。
伊予西条駅から石鎚山が見えます。そういえば、2009年12月30日は嵐になる直前だったから…。
ふうたろうが下山した頃から、空が高曇りになっています。車窓から、雲の虹が見えます。
今夜はここから夜行バスに乗ります。元々、堂ヶ森を越えて、保井野バス停からここに来る予定でしたから…。
時間があるので町中を歩いてみましょう。一六タルトはふうたろうの好きな四国銘菓のひとつ。みやげも含めて買っていきます。
それにしても、ここ、東予市(現在西条市に合併)、静かだな。西城駅前はまだ多少にぎやかだった気もするけど、ここは…。
地方都市を見るにつけ、哀れみとか同情とかではなく、いつもこの寂れ具合が気になります。ただ静かだとか、経済的に豊かでない、というレベルではなく、ここで生活することがそもそもできない(メシを食える所得が果たして得られるのか、という意味で)という意味で。まあ、だからこそ、みんな都市に出ていくのだろうと思いますが。そして、地方財政は悪化して、合併でごまかして。
地方都市の内部ではいったい何が起こってるんだろう。各都市の各論はあるのだろうけど、酒田、阿波池田、色んな都市で見てきた地方都市は概してみんな同じ症状だ。利権(原発なども含めて)のエサにもならず、かといって生活できない人も作らない地方都市政策って、何なのかね。
…登山基地となる都市にはいつも世話になるので、特に思いを馳せる。
たった3日間だったけど、地獄のような縦走でした。なんと長く険しかったことか。しかも、水を補給できる場所もあまり無いという。大雪山縦走を彷彿とさせますが、あちらの方がまだ楽だった気もします。四国山地を嘗めていました。たかが小さい島の低い山だと…。不覚。石鎚山まで行けなかったのはやっぱり残念です。
#149東赤石山クリア。
#150笹ヶ峰クリア。
#242伊予富士クリア。
#243瓶ヶ森クリア。
天気:晴れのち時々くもり(愛媛県西条市・東予市・高知県土佐郡本川村、移動中は含まない)
こんばんは、私実は新居浜出身でして。先日の連休も実家でしたが、書かれてるとおり道が崩落してて石鎚行けませんでしたー、残念。しかしサバイバルな山行きされてますね。。実家から眺めてる四国山脈を、こんなふうに縦走されてる方がいるとは!
やっぱり石鎚まで行ってゴ―――ルってのが気分はいいでしょうけど、瓶ヶ森まででも十分過ぎるじゃないですか。
自分は歩いてない区間もありますが、ちち山からちち山別れまでの区間は歩きづれー道だなーと思いながら歩き、ちち山別れから銅山越ぐらいまでは酷いんだろーなと想像してたり。
自分はふうたろうさんほどじゃないけど、欲張った登山をする立場としては、マイナー部分の大変さがホントに骨身にしみますね。
ジゴク山地縦走、お疲れ様でした。
そうでしたか。新居浜がお郷ですか。瀬戸内海に囲まれた、いいところですよね、あの一帯は…。29日付の日記に、そういう思い出をそれとなく織り交ぜておきましたが…
道の崩落は、奥にもう2ヶ所あります。でも、車道歩きを厭わなければ、全然問題ナッシングでございます(黒笑 もちろん、崩落箇所を超えてからも、大変な道を歩くことになりますが…(苦笑
それにしても、あの道は、やっぱり最終日の朝露攻撃、まさにこの日記の題名「ジゴクアルプス天然水」の名に相応しく、いちばんキツかったです。靴はふうたろうのアキレス腱なのです。あれで、石鎚まで行くのは、完全に不可能になりました…(涙
防水靴と、もう少し軽量化した荷物であれば、まだ比較的安寧に縦走できた、かも知れません…
ええ、瓶ヶ森でも充分ミッション達成です。200名山と300名山それぞれ二つずつを3日で撃破ですから、腐っても鯛というか、快挙ですね(笑
もう1日あれば、石鎚まで行けました。やっぱり、全山縦走レベルのものは、4日必要ですね~。サラリーマンには、厳しいですけど。
ちち山分かれからちち山は本気歩きにくい道です。しかし、ちち山分かれから銅山は、まだましです。足踏み外すような所はないですもんね。あの景色の良さは女神の仮面を被った悪魔の誘惑で、このトラバース道、ジゴクでした。朝露の次に。もう2回目はないなと思います(涙
なお、ふうたろうのマイナーは、半分は能動的に、半分は強制的に(強烈な)行われています。車とかがないというのは、本気厳しい闘いを強いられますだ…(吐血