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机に座ってバケキチ

2007年 6月 26日

 今日は純正バケキチの日記です。いつもの比ではないくらいキチです。カテゴリーは「オタク化」にしようとしたくらいです。

 毎日僕のやっている仕事は、手を動かすことです。残留農薬の抽出とは、有機溶媒と野菜粉砕物を混ぜ合わせている間以外、ほぼ付きっきりです。その待ち時間でさえ、洗い物や次の工程の準備が待っているので、ムダには出来ません。気が付くと、朝出勤してから、昼飯まで一度も座らずに作業していた…なんて事もあります。

 毎日同じ作業の繰り返しだと、飽きます。それに、慣れてくると頭を使わなくても出来るようになってしまうので、余計に疲れます。雑念やらが入るし。その割に、エバポレータ(温度と陰圧をかけて有機溶媒を蒸発させる装置)の暴走には気を付けなければならない、ミニカラムを乾かさないようにしなければならない、などの細かいところで注意を払わなければなりません。

 今日は抽出サンプルが少なかったので、頭を使う仕事が出来ました。…といっても、上の写真のようなものを見て、考えるだけ。専門家は、マススペクトル(農薬などの分子の表情を表すグラフ)だと思うかもしれませんが、微妙に違います。だから、「なんちゃってハルフェンプロックス0.05」と書いてあります。正規のデータではなく、写してきた数値を、無理やりエクセルでマススペクトルっぽくしただけ。だって、正規のデータと解析ソフトは、いつもデータ処理をしている人が使っているんですもの…。

 ハルフェンプロックスというのは、お茶とかミカンとかに使う殺虫剤です。もう、化学オタクでない人にとってはどうでもいいって感じでしょうけど、ハルフェンプロックスはフッ素二つと臭素一つが入った、ハロゲン化合物。有機塩素系農薬というものがありますが、その塩素もフッ素や臭素などと同じハロゲンの仲間です。
 マススペクトルという分子の表情を得るためには、化学物質の分子に弾丸(電子線)をぶつけて物理的に壊します。壊すと、物質の分子は色んな断片になります。マススペクトルは、どんな断片がどれくらいの割合(絶対量ではない!)で含まれているかを表したものです。このマススペクトルからは、その断片の分子量がいくらか(m/z値というもので表されます)が解ります。そして、断片の構造式を推定します。結合を机上で適当に切って、行き当たりばったりでやります。バケキチの麻薬ですね。
 …とはいえ、初めてやる作業。なんちゃって解析です。
 今日のこの作業は、元はといえば、このハルフェンプロックスが、濃度によってマススペクトルが変わるという訴えがあったからやったものです。確かに、高濃度ほど、断片化(壊れ方)が穏やかに見えます。他の分析機関ではどう対処しているのかな。

 僕は化学が好きなので、やっぱり化学を触らせてほしいという希望があります。本当は、ローテーション組んで、マス分析もしたい。それがいつの間にか分業化されて、こういう形になっちゃいました。抽出作業が嫌いなわけではないし、それなりに自信持って全力でやってるけど、ちょっと寂しい。
 …それでも、僕の職場はあらゆる科学(理科だけじゃない)の粋を集めて仕事できる可能性を持ったところですから、他のところよりは恵まれているのかなと思いますけどね。

天気:くもり一時雨(東京都板橋区・茨城県取手市)

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