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雪山との死闘(日光女峰山:栃木県)

2008年 4月 12日

※記録:4月13日

 今日は寝坊せず、ちゃんと来ましたよ、東武日光駅8時24分。
 もちろん、東武線は約2時間、ベッドでしたが。
 それにしても、ちょっと見えている女峰山、雲が多いですね。埼玉県ほどじゃなかったけど。


 8時31分発東武日光駅、15分くらいで霧降高原に着きました。中国の人っぽいカメラマンが同じところで下りましたが、しばらくして着いてこられなくなりました。
 そりゃ、スニーカーでこの雪を登ろうなんて…。
 でも、僕も笑ってられなくなるんですよ、数時間後に。


 登り始めはこんなもん。気楽に行きましょうや。
 暑くなったので、早速荒船山の時と同じ格好です。半袖Tシャツと長袖Tシャツの2枚歩行。真夏と同じ格好です。


 雪渓です。いや、雪渓というより、残雪。アイゼンを履けばいいのに、なぜか履くまで勇気が要るのです。要するに面倒くさいんですね。


 小丸山(霧降高原からリフトで行ける最上部、冬季休業)より少し下の、霧降高原スキー場。ゲレンデは芝生です。展望が良く、高原山(宇都宮アルプス本山からも見えましたね)が見えています。


 小丸山から上は自力で登ります。道にだけ雪がたまっているというのは、目の錯覚です。


 これは、丸山。霧降高原からのハイキングにはちょうどいい。ただし、この雪道で、登る人は殆どいない。ましてや、今日中に、男体山麓の志津小屋目指そうなんて大バカ者はいない。…と、僕がそうだったのですが、とにかく、この山行で出会ったのは、この先赤薙山(あかなぎやま)までに2人。以上です。


 そう、これが赤薙山。引き返すなら、ここが限度だろうと、小丸山で出会ったおっちゃん。


 遙か彼方に小丸山。落ちたら終わり、雪の斜面。


 Wさんの卵をいただきながら、赤薙山を踏みにじってきました。


 これ、キレットっていうんですかね?見かけより、ものすごく怖い。一昨年の10月に来た時は無雪期だったので、記憶にないくらいあっさり過ごしたのでしょうけど。


 女峰山の地層。凄く大きいんです。


 およっ!
 ガスが遂にこちらにまで来ましたぜ!


 まだ冬だね。女峰山の稜線は。夏服の僕が言うことじゃないけど。


 ここは小丸山からず~っと続いてきた急登が一段落するところ。遙か向こうのまっすぐな稜線を、これから更に歩きます。


 実は、女峰山の稜線より北は、ガスが全然来ません。だから、尾瀬の東の方に広がる細かい山は、殆ど完全に見えます。


 女峰山の稜線は展望抜群(積雪のせいか?)。でも、雪庇には注意!踏み抜くと奈落の底です。


 時々、南斜面もガスがなくなってくれます。僕が稜線を歩いている間は、太陽がずっと付いていてくれました。夏服でちょうどいい。(標高2200m以上です、念のため)


 歩いてきて、やっと女峰山が見えてきました。あの雲がちょっとかかったやつです。手前のピークはただのピークです。


 僕はただ一人、雪の尾根をひたすら西へ。


 かき玉汁みたいな空。この雲は、特に天候を荒れさせる雲ではありませんが、西から絹層雲が近づいてきているので、確実に天気は下り坂です。


 女峰山…、遠いなぁ。


 景色に関しては、絶句するしかない。あるいは、歓喜の雄叫びを上げるか。


 陰影礼賛。
 混合樹林。鳥の声も聞こえたっけ?
 気分は最高です(脚はかなり疲労していましたけど)


 一里ヶ曽根というところにいるようです。左:前女峰、右:女峰山。


 またきつい下り坂。ということは、きつい上り坂も出てくるのです。この坂については、スキーで滑っちゃえばかなり楽かも。


 この辺りに、H2Oと書いた看板が付いている水場があるはずですが、期待した僕が阿呆です。雪に埋まってるに決まってるやんけ!


 …どうやら笑っていられない天候になってきましたよ。それに、時刻はもう16時。女峰山は遙か先。とっくに志津小屋は諦めていますが、女峰山山頂まで行かないことには始まらない。


 予定では明日登る山である太郎山。でも、下り坂じゃ登る意味ないね。


 遙か向こうに霞んでいる燧ヶ岳(ひうちがたけ)。今は、綺麗だという気持ちよりも、怖い方が大きい。


 女峰山との死闘はこれからです。このごつい雪庇を踏む勇気は僕にはありません。


 女峰山周辺の空はガス状の雲に覆われてしまいました。もう17時。いよいよ危機的になってきました。


 今日、最初に死ぬかと思ったところです。この痩せた雪の尾根の向こうは、アイゼンだけではとうてい登れる雪質ではありませんでした。なぜ、今日、ピッケルを持ってこなかったんだろう、と、悔やみました。支えがアイゼンの刃だけで、サンクラストになった雪に指は刺さらない。落ちれば確実に奈落の底でした。


 真ん中の黒い穴。クレバスか。場所が場所だけに落ちることはないですが、避けて通ります。


 ここの雪質、今まで触れてきませんでしたが、表面は固くとも、中はけっこう粗い。だから、体重をかけた途端、30~50cmくらい脚が埋まる場合があります。恐らく、弱層があると思います。さっきの場所が怖かったのは、これだったからです。


 女峰山山頂付近の、殺人的な道を何とか越えて、やっと山頂の立て札が見えてきました。あと…少し。


 山頂から、もう薄暗い男体山とその山麓が、ガスの隙間から少し見えました。上空はもう絹層雲が覆っています。


 とっくに18時は回っています。こんな時間帯に雪山を歩いていること自体、愚の骨頂。既にルートを失いかけています。そして、少し前の急峻な雪斜面で、数メートル滑落しました。カンバ類の木がアンカーになっていたので、それに手足を引っかけて何とか耐え抜きましたが。
 ここで2度目の難を逃れました。


 周囲はガスに覆われ、その上暗闇。それでいて、現在地は解らない。間違いなく遭難です。しかし、地形図にあるガレ場と、斜面の角度から判断して、右往左往しながらももう少し下に唐沢避難小屋があることが判ったので、下りました。仮にまちがっていれば、崖に出るから、戻ればいいからです。
 この場所は、何となくえぐれた道のようになっていて、あと10mくらいで避難小屋に着く場所です。まさか、あれだけ迷っていたのに、これほど早く見つかるとは思わなかった。
 でも、本当は、雪洞でも掘って、体温を奪われないように明くる朝を待つのがベストなのです。ここで小屋が見つからなかったらそうするつもりでした。


 唐沢避難小屋を、かくして独り占めした僕は、19時半頃の、山では遅い夕食を食べました。いつもの野菜カレーではなく、今日はグリーンカレー。


 今日は3回とも運良く、命を救われましたが、特に一つ目の危機は完全な装備不良です。遭難に関していえば、結果オーライでしたが、仮にここが初めて来た場所であれば、同じことをやればアウトです。
 何とか今日の死闘は制しましたが、文字通りの死闘。勝ったと言うにはちょっと足りないものが多すぎます。

天気:くもり時々晴れ(栃木県日光市・今市市・塩谷郡栗山村)

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