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職人技

2008年 5月 29日

 それほど大した「職人技」ではないのですが、僕が一昨日休んでいた日、同僚のIさんが抽出作業を代わりにやっていた時のことです。
 ケムエルート(珪藻土カラム)に、水とアセトニトリルと野菜のエキスの混ざったものを通して水を取り除いた後、アセトニトリルを蒸発させます。しかし、アセトニトリルと水が混ざった状態だと、実は水は完全に取り切れません(当然、公定法にもある無水硫酸ナトリウムでも無理)。だから、蒸発を続けると、水とアセトニトリルが次第に分離してきます。水を残したまま次の作業には死んでも行けないので、ここで水だけを飛ばして、アセトニトリルを残すという離れ業をやります。(水はアセトニトリルよりも沸点が高いということが曲者)
 そして、更には、フラスコの底に残ったのがアセトニトリルなのか水なのか、区別が付かないそうです。
 さらにえげつないことに、がんばってカラカラに乾かしてしまったらアウトなのです。

 したがって、Iさん、8件のサンプルでこの作業を終えるのに2時間もかかってしまったそうで、「ものすごくストレスがたまった」と言っていました(普通なら30分くらいで終わる)。…それは大変申し訳なかった。
 僕なら、フラスコの中身の様子、例えば、液量や濁り具合、表面に浮かぶアセトニトリルの膜、沈む水滴、…そんなので当たり前のように作業してしまいます。
 僕がまさに今日、その作業のところに入ると、Iさんは洗いかけの器具をおいて見に来ました。さらに、GC/MSオペレータのSくんもやってきました。…このところの作業、僕が休んでいる日はそんなに辛い思いしていたんですね。罪深き5月病ふうたろう。
 …確かに、早ければ4本くらいなら昼飯前でもギリギリ終われそうです。8本なら15時くらい。12本なら洗い物の手伝いがあれば16時。エバポレータ(濃縮装置)に張り付くストレスは、まさに再春館製薬のCM的な感じですが、やろうと思えばそうせざるをえません。
 でも、僕が休んでいる間、そんなに苦労しているとは思いませんでした。「たかが~」なんて思っていました。でも、やっぱり職業というのは、"板に付く"といわれるくらいで、何かコツとかをつかむかどうかで質が変わるんでしょうね。
 …それでも結局、僕は他の分野で板に付かないまま推移しているんですが。仕事というものがこういうものだと思えばそれまでですが、何となく釈然としませんね。「農薬の抽出一筋20年」とかって…。
 ま、しばらくはそれでまたがんばるさ。

天気:雨、一時強く降る(東京都板橋区・埼玉県所沢市)

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