地球は回る(八甲田山酸ヶ湯コース:青森県・大千軒岳林道:北海道渡島支庁)
一緒に泊まったおっちゃんはまだ寝ています。ネズミがあれだけ大運動しているのに全然起きないのは実に驚異的でしたが、食料やゴミ類が開放系だったので相当やられただろうなあと、色々思いつつ、小屋を出ました。
さて、東の空が徐々に白んできたことですし、早速八甲田山最高峰の大岳目指します。
白んできたとはいえ、樹林に囲まれたこの辺り一帯は真っ暗です。
東の空を見ると、昨日の夕方西の空で見たものと殆ど同じようなものが見えます。
できれば夜明けまでに山頂に着きたい。ちょっと疲れるけど、急ぎ足です。
東の果ては雲が無くなっていて、そこから日が差し込んでくる予感。
空を覆っているのは絹層雲か高層雲か。あの水晶岳で見た夕焼けのように、高層雲が焼けるのではないかと、気分が高なります。
山頂が近くなると、樹林もなくなるので、東の空を眺めながら登れます。
大岳の山頂には早々と到着してしまいました。風が強くて若干寒いので着込みますか。
朝飯には赤飯とぜんざいというアズキ&餅米のフルコースでした。若干胃もたれしています。
…が、もたれている場合ではないですな。この空は、あの奇跡の空再来ですぞ。
高層雲という雲は、おぼろ雲とも言われていて、のっぺりとしたつまらない雲だと思ってしまう。しかしそれは昼間の姿しか見なければ、の話。水晶岳の時もそうだったけど、太陽のライトアップの美しさは、100万ドルの夜景を上回っているとさえ思います。
細かく上下する雲の毛羽だったものの一本一本が輝いています。最高の朝焼けです。
空の毛羽立ち。これを見ると、朝や夕方を山で過ごす快感で中毒になるのです。
空の方の焼けは、太陽高度が上がってくると急速にあせていきます。そして、今度は山が焼け始めます。
足跡はふうたろうのものではありません。きっと、昨日の昼などに付けられた足跡なんだろうと思います。
東の果てに広がっている晴れ間が若干狭いので、山を照らす朝焼けの色も少し薄めです。
でもこの色の美しさは常に素晴らしい。これから何処に行くかとか、何時までに下山しなければとか、そういう雑念は一切湧きません。
色が濃くなってきました。正真正銘のモルゲンロート。昨日の夕方にもアーベンロートを見ていたふうたろう、地球の自転を全身で感じます。
大岳の火口の斜面は東を向いています。真南や西に向いている斜面に比べると雪が厚く残る傾向があるのでしょう。特に焼けがきれいです。
柵を出てはいますが、雪があるので地面は直に踏まなくて済みます。
ちょっと移動して、雪がイッパイ撮れるようにしてみました。高田大岳と雛岳が写っています。ちょっと高田大岳が窮屈だなあ…(汗
さて、日も昇りきりました。さっき述べたように、水晶岳の時と違って、東の果ての晴れ間が狭いので、上下両方が焼けた空は見られないし、モルゲンロートの時間も短い。
しかし、改めて空を見ると、急速に雲が厚くなっています。西の空に沈んでいった円い月のぼやけ方はハンパなかった。
なんか、この辺りでカメラがまたストライキ起こしているんですけど。こいつは本気で修理出さんとまずいな…。
典型的な高層雲。さっきよりも厚みが増しています。…が、これは温暖前線の南の端の方であることが、後々よくよく考えると解ります。
南の方ほど天気は良いようですが、所沢の天気を携帯で見たところ、こちらよりも遙かに天気の崩れはひどいようです。南岸低気圧が通過中で。
もっともっと真っ白になって、朝日が輝いて、その上をぱたぱたと駆け回りたいですなあ。
これは小岳。これを越えてさらに高田大岳を越えて谷池温泉に下るルートが存在しますが、ちょっと、時間的に無理っぽい。アンカーにバトンが渡せなくなる。
それでも、天気が良ければ、ふうたろうのことだから、ごり押しアタックしたかもね。この空にむしろ救われたと思うべきかもしれませんな(笑
高田大岳方面の分岐。今日初めての登山者と出会いました。仙人岱避難小屋ではなく、酸ヶ湯から登ってきたそうですが、あの朝焼けを逃したことは、その美しさを転がりながら堪能したふうたろうにとっては、登る意味そのものを失ったとさえ思います。
高田大岳方面にも既に踏み痕が付いています。きっと、谷池温泉まで歩いた人もいるんだろうと思いますが、今回はふうたろう、パスします。いつかまた来られますように。
仙人岱の周りを囲んでいるアオモリトドマツ林のシルエットと、空を覆っている高層雲の、ある意味それもシルエット。色が黒い雲というのは実は存在しない。それは大岳山頂で見たあの空が証明しているではないか。光が当たらないから黒い(暗い)のであって、雲はいつも化学成分的には無色なのです。
ところで、この開放系の水場で何をしろと。ふうたろうはこの水を掬って飲みたいとは思わないなあ。
まあ、雪を溶かして色々使っているふうたろうが言うのもなんだけどさ。
この仙人岱は、登山者のオーバーユースで裸地化してしまったと説明書きがなされています。…が、本当にそれだけなのか。実はそこをふうたろうは疑わなければと、思った。なぜ土壌が失われるのか、実を言うと、ふうたろうはその科学を理解していないのです。
朝焼けの美しかった大岳の上を、朝焼けの主役を買って出てくれた高層雲が覆ってきました。この自然の二面性には、本当に感動させられます。
さて、酸ヶ湯(すかゆ)に下山しますよ。もう宴は終わった。始発のJRバスで青森駅に向かうのです。…といっても、始発って11時くらいなんだけどね。
雪道を歩くのは実に愉快です。やっぱり夏より冬だなあと。まあ、夏も夏で良いんですけどね。
酸ヶ湯コースは荒くれの谷ルートです。岩場のようなむき出しの道を、中途半端に覆った雪が微妙に歩きにくさを感じさせます。
酸ヶ湯の標が出てきました。この辺り、硫化物のにおいがします。
浸食され、火山ガスで変質した(説明書きにそう書いてあった)岩の斜面に雪が積もっています。
八甲田・十和田ゴールドラインを挟んで南には南八甲田連峰が連なっています。これは樹氷のシーズンに歩いたら、ゴールデンどころかプラチナルートになるでしょうね。
新しそうな道を見つけたのでそっちを歩いてみましたが、まあ、ウルトラぬかるみゾーンからは逃れられませんな。
空一面を覆っている高層雲。このまますんなり天気が崩れるのかどうか。でも、回復はしないだろうなあ。
かなり遊びまくりつつ、駐車場に降り立ちました。ふうたろう、車を持っていないのでこんな所に下りてきてもしょうがないんだけど…。
何気にトイレとかビジターセンターとか全部閉鎖されているし。
酸ヶ湯温泉は何処だろうと地図や辺りを見回すと、道路を少し下ったところにありました。
酸ヶ湯温泉の温泉宿。荷物を整えて、バスの時間まで2時間近くあるので入っていきますか。
まあ、温泉そのものにはあまり興味はないですが、3日分の疲れと汚れをここで一旦落としていくのもいいと思いました。
そして、風呂のあとはメシです。
…が!出てきたこの酸ヶ湯そばは、とんでもない代物です。ぶっちゃけ、スーパーで30円で売っている茹でそばの方が遙かに美味いわ!
っていうか、よくこんなもんを出したなと、ある意味感心するのですが。
代金を払うとき、そばがボロボロであることの理由を聞くと、そば粉10割でやっていると。しかし、それだけではこうはならない。茹で置いたやつを茹で直していたのです。それは駄目でしょう。
というわけで、まずい。以上。
バスが来るまで1時間強。柳田法務大臣の進退問題をちょうど10時のニュースでやっていて、政権や政局のことしか考えない殆どの与野党に苛つきつつ、アイスを食っていました。
昨日の夜もおっちゃんも話していたけど、今の国会は解散すべきです。かといって、自民に戻るだけなら元の木阿弥ってやつだけども。
…と、まあ、それは置いといて、バスが来たので、乗りましょうや。
12時過ぎ、バスが青森駅前に到着しました。次の行き先は海の向こうの北海道なのですが、その電車が13時21分発でした。手持ちぶさただったので、駅ナカのミスタードーナツに入って一服です。
ドーナツ2個を食べていると、Carpentersの「Top of the world」が流れてきて、こうして山を歩いてきたことと妙に共鳴して、涙が出てきましたとさ。
岩木山ではぶつくさ言い、二度と来るかとも思ったけど、やっぱり全部含めて、登って良かったと思うのです。
さて、アンカーは大千軒岳。天気予報は今夜の雨は告げているものの、明日は急速に回復するとも、告げています。天気図を見ると、深く幅の狭い気圧の谷が今夜通過する見込みで、空を覆っている高層雲は悪天候の走りであるということです。さあ、どんな崩れ方をするのか知らないけど、まさにその今夜は、大千軒岳の麓まで行くのですよ。
スーパー白鳥号がいよいよ北の大地に向かいます。11月に北海道入りは初めてだなあと、胸が一段と高鳴ります。
しかし、木古内駅に着いたら、電車の到着とバスの発車の時刻が同じであると、入手していた時刻表には書いてあります。それで慌てて駅を飛び出すと、どうも乗り継げるようにちゃんと修正がかかっていたようで、ほっと一息。
懐かしき木古内駅。北海道に初めて来たとき、最初に足を着けたのはこの木古内町でしたね。6年前の話です。
その頃とは色々変わり、それでも変わらない部分もあり、時は流れたのでしょう。しかし、バスの運転手が、前を歩いている婆ちゃんが落としていったマフラーを、バスで追いかけて渡そうとしている風景は、時代がいくら変わっても、情勢がどれだけ悪くなっても、褪せさせてはいけないと思います。
それにしても、高層雲や絹層雲の薄雲が交互に行き来していた空だったのが、一気に怪しくなってきました。しかもよりによって、道路に立っている電光表示板が「渡島西部に雷注意報」とかぬかしていて、一度見れば十分なのに、2枚もそれがありました。
(゚皿゚;)ヤヴェー
そして、バスが40分ほどかけて、千軒バス停に着きました。710円。
なお、バスの時刻表は福島町のホームページ内にあるようです。PDFファイルなので、Acrobat Readerなどが必要ですが、それは何とかしてもらうとして。なお、この時刻表、若干時刻がずれている気もしますなあ。たぶん、5分~10分前後。20分くらい早めに待っている気概が必要かも。
千軒バス停に放り出されて、これは木古内町側に行くべきなのか、松前町側に行くべきなのか、解りませんでした。両端ともこの風景じゃ、ねえ?
…でも、地図(25000分の1の地図しかない)を見ると、千軒集落は大千軒岳に向かう林道(?)よりも木古内町側です。とりあえず、松前町方向に進むべし。
市の渡橋という橋を渡ります。
しかし、雷注意報が出ているだけあって、空の曇り方がハンパない。
進めば解りますが、大千軒岳の方に向かう大きな車道の分岐があります。目印は大きな電波塔。
看板もあります。しかし、登山口まで6.5kmとか、どう考えてもマイカースタイルでしょ!今、すでに15時半回ってんですけど。
正直、いつまで天気が持つか。天気が崩れたらそこで進攻は終わります。
住川という集落を通ります。知内川(しりうちがわ)沿いの道ですが、暫く川から道路は離れています。その土地に家が軒を連ねていますが、ところどころうち捨てられたような家もあったりして、悲しくなります。
どうやら、その住川集落に、殿様街道と呼ばれる観光名所があるようです。
…そうですね、いつか歩いてみましょうか。いつか歩けるんだと思えば、また来られるという希望も湧くもんです。
住川集落を過ぎると、砂利道で道幅の狭い道路に変わりました。これが本当に林道の入口。しかし、これは今後エスカレートします。
一方で、空は今にも落ちてきそうですが、まだ青空がところどころに見えていて、なんとか持っています。
1時間ほど歩いたでしょうか。実はサンダルで、あの100リットルのザックに登山靴のバッグを結わえて歩いているので、非常に背中の負荷が大きい。この大千軒岳の標を見て、まだ4.4kmも先があることを見て愕然としました。
しかし、延々と歩きます。ヒグマでも出てこないかと不安になりましたが、いよいよ17時過ぎになって、人もここまでは入ってこないだろうというところになって、幕営を決め込みました。人の侵入が頻繁にあるところでテントは張れませんから。
登山口から2kmくらい手前のところの林道の端です。
テントに入って20分くらい。チーズリゾット(α化米)と青森駅前で買ったりんごの皮を剥いてメシの準備です。
それが17時半でした。
雷は幕営を決めた頃から鳴り始め、雨は17時半くらいから降り始めたようですが、18時を回ると威力が散弾銃になりました。いくら谷間で比較的安全な場所にいるとはいえ、ロドプシン(暗順応)を破壊するかのごとくの雷光と、地面を揺るがすほどの雷鳴にはかなりビビりました。
しかし、あの鹿島槍ヶ岳の時のように、雷の光を撮ってやろうと企んでいるふうたろうもいます。ふうたろうはあくまでも自然に対しては強かであるべきです。ここまで来たのだから、徹底的に楽しむのです。
遂に北海道入りを果たしました。岩木山の山頂避難小屋では諦めかけていた大千軒岳ですが、ここまで来たら登頂もそれほど現実離れした話ではないだろう。あとはクマに襲われないことを祈るだけですか。それから、晴れてくれることも。
でも、テントを叩きつけてあまりある雨は、テントの中にもしみ込んでくるほどです。寒冷前線の通過ということは解っているものの、この大荒れの天気に対する反射的な不安は、完全には拭えないようです。
天気:くもり時々晴れ、のち雨、雷を伴い非常に強く降る(青森県青森市・北海道渡島支庁上磯郡木古内町・松前郡福島町、移動中は含まない)
すばらしすぎる日の出の写真のオンパレード!こんなの見てみたいです。
下山してそばの話。。。いろいろありますね~。
そして登山口まで6.5キロ。ありえない~。
そっか。くまは餌を求めて下りてくるんだから、人の気配のあるところはだめなんですね~。北海道で幕営なんてすごいです。
百名山を撃破しながら、
常に思っていたのは、
必ず良い景色や良いところを、
ひとつでも良いから持ち帰りたい、
ということでした。
登りきったということそのものに意義はあるのですが、
やっぱり何か残したいと思う気持ちが、
こういうものを追いかけるのかもしれません。
まあ、一部、開発の進みすぎた山々には、
その責は山にはないとはいえ、
がっくりきたものですが。
そばの話はまあ、ネタですね(笑
さすがに6.5km歩いたあとは死んでいました。
あそこで幕営していなかったら、
ふうたろうは毒矢の雷雨に打たれて、
マジで死んでました(苦笑