まさかの故障(苗場山【小松原湿原・風穴コース】:新潟県)
急激に気温が下がった夜中、ガソリンストーブで暖を採っていたらそのまま寝ていて、寝袋ごといつの間にかタックルかましていました。幸い、ふうたろうの焼成物にならずにすみましたが、寝袋に大穴が開いてしまいました。
さて、ウダウダしながら3時半~4時になんとか起き出し、いつものチャーハンを食います。ただし、カレー粉を忘れています(滅
4時45分、いよいよ出発。…という時になって、西の空から何かモヤモヤとクモってきました。
赤倉山から苗場山に向かいます。東(北東)の空に日が昇っています。あちらは天気が良さそうです。
よりによって樹林帯の北西斜面。うす暗いなんてもんじゃないです。しかもすごい急坂…
急坂から下りてきたら、ふうたろうにも日が当たるようになりました。
そういえば、西の空から近づいてきていたモッワモワの雲は、いつの間にか消えているみたいですな…。
コシアブラの芽。さっきの場所で採取したので、ここでは採りません。そして、採る時は、絶対に丸裸にしないように。
ナナカマド、でしょうか。新緑萌え、空が澄むこの時期、最高ですね。
8年前の地図には「倒木帯」と書かれています。また、登山者の少ない上級者ルートだとも。
でも、誰かがちゃんと倒木を切ってくれています。
色々がんばって新緑を写真に収めようと試みますが、どうもしっくりこない…
向こう側に見える尾根は、もう、苗場山の高層湿原です。7年前に来た時は、山頂周辺しか歩かなかったので、どんな風景か、気になりますね。
展望はあまり良くありませんが、新緑に当たる朝日がいい感じです。何しろ、まだ6時。
鞍部を過ぎると徐々に登り坂になります。振り返るとナラズ山や佐武流山、写真には写っていませんが、さっきまでショウワ基地を構えていた赤倉山などが見えていました。
尾根道が終わって、台地状の高層湿原域に入ると、道が途端に水浸しになります。
雪もいっぱい積もっていますね…これ、道が消えた上にガスったら、かなりエゲツナい迷いの森になりますよ…
でも、道はほぼ台地の東の端すれすれに付いています。しかし、岩菅山の時の縦走路で見てきた時同様、雪解けや雪崩などによって、少しずつ崖の侵食が進んでいるようです。
何ツツジか解りませんが、点在しています。残雪、新緑、そして長日植物の花…心浮き立つ季節ですなあ…
このルート、展望がすばらしい。赤倉山の尾根は苦労したけど、この道を採って正解でしたな。
どの程度すばらしいかというと、こんな感じです。東の彼方に谷川連峰が見渡せます。去年の11月2~3日に歩いた、仙ノ倉山方面の尾根が。
コバイケイソウ(ユリ科)の葉が生長しています。これから夏に向けて、花を咲かすでしょう。
最初の池塘発見。水汲んでいきました。もちろん、飲みませんけど。
このだだっ広くなだらかな高層湿原の台地にも、勾配のきついところとそうでないところがあります。
急勾配斜面からの展望は抜群、このコース選択は、やはり正解でしたな。
ここは2036.7mの三角点。何でこんなところに三角点を打ったんだろうと、不思議に思いますが…
赤倉山から2.3kmだと?たったそんだけしか歩いてないってか。そしてまだ苗場山頂まで1.8kmもあるってか。湿原の台地に入ってから、けっこう遠い…
池塘も花も草もない湿地というものは、本当にみすぼらしい…、いや、悪いというわけではないんだけどさ。
雪渓が出てきました。木道が埋まると、道が完全に判らなくなります。
池塘が出てきました。ふうたろうは、いまいちこの高層湿原の遷移についての理解が深くありません。ただ、この前尾瀬に行った時にやっと知ったのですが、標高の高いところにあるから高層湿原という意味ではないそうです。
岩波書店発行の「生物学辞典第4版」には
"土壌は腐植酸や不飽和コロイドにより酸性化し、OH–を嫌うミズゴケ類が湿原周辺よりも中央部によく生育し、泥炭化が進んで、中央部が高まり時計皿を伏せたようになるため、‘高層’の名がある。"
いや、難しい。腐植酸というのは土壌学の用語でしょうか。アルカリに溶けて酸に沈殿する、生物体の死骸が変化した物体(腐植質)、とでもいいましょうか。イメージできるようなできないような感じですけども。
不飽和コロイドとは?コロイドというと、ゼリーやマヨネーズのようなものをイメージしますが、ここでいうコロイド、しかも‘不飽和’まで付いたものとなると…?
あと、泥炭とは?
…未知とロマンにあふれた場所ですな、山というのは。
苗場山の高層湿原は散在しています。ここはもはや湿原ではありませんね。いや、元々は湿原だったのが、長年の遷移でこうなったのでしょうか。
何か石碑があるからここはきっと道なんだそうに違いない(棒読み
が、道だと信じて進んでいた雪渓の下が空洞になっていて、ヅドンしました。抜け出せずに暴れている間に、その下にあった水たまり(池塘とか沢とか)に左足を突っ込んだらしく、濡れました(滅
ふと西の方を見ると、木道がありました。慌てて戻りましたが、湿原の上を踏むことになり、誰も得をしない結果となりました(滅滅滅
小赤沢方面の分岐点まで来ました。この辺には池塘が点在していて、かなりいい雰囲気です。が、腐植質の予備軍が広がっているだけで、何とも味気ないというか…
腐植質のひとつである腐植酸は、炭素、酸素、水素、窒素、硫黄などで構成されているそうです。しかし、高分子化していて、「物質としての本体は不明」だそうです。ただ、生物学辞典の「腐植質」の項目を見ていると、まるで石炭のタマゴみたいなものを想像してしまいます。
このレベルの雪渓になると、もはやどこに行ったらいいのやら解りませんね。だから、旗が立っています。いや、進むだけならできるけど。
ふうたろう、もう、雪原はおなかいっぱいですかな。湿原生態系のお勉強がしたいなあ(黒ハート
そして、8時32分、ようやく到着。3時間47分もかかりましたがな。3時間弱で行けてなきゃおかしいところなのに。まあ、コシアブラとかで油売ってたからしょうがないけど(じと目
そんなにゆっくりしている暇はあまりなさそうです。小屋を出発しましょう。
苗場山の山頂三角点部は、越後平ヶ岳の時がそうであったように、結構しょぼい…
まあ、とりあえず、これで、苗場山もひとり旅をしたということで。
この辺り、7年前は「遊仙閣」があった場所ではないかな。いや、もう少し西(写真左)側だったか…
この苗場山に60回以上来ているという女性に出会いました。それはまるで、庭のようですな。ふうたろうは、日本中を庭にしたいけどね…。
苗場山は、山頂部の平原を除けば、周囲を崖に囲まれた山です。ラピュタの空中庭園みたいです。
これからの縦走路が見えています。見えていると、そう遠くも感じない?
シラネアオイ。
ところで、右膝が痛み始めました。さっき下りの時から違和感を覚え始めていましたが、この苗場山、どこを下っても猛烈な急坂です。そして、こちら側に来たら、和田小屋に下るくらいしかなさそうなのですが、そちらは公共交通が確保できません。それに、コシアブラも集めないと(←これがいけない)。
神楽ヶ峰を越えてさらに向こうの霧ノ塔などの縦走路が見えています。
あれが苗場山。上は平原が続いていると想像するのは無理ですな。
これが今回唯一の水場、雷清水です。しっかり水分を補給しておきましょう。ただでさえ、嵐のような卵とじとかで水を消費してしまったし(じと目
雷清水から苗場山。7年前に来た時は、ここは完全にガスの中でした。そして、あの急坂、ツラかったなあ…
神楽ヶ峰の登り坂。なぜか、このカメラで撮るとどこもきれいな気がする。
こちらの尾根を下ると、ドラゴンドラの方に行くはずですが、今は運行していない模様。
あの分岐を左に行くとドラゴンドラ方面。行く意味はありません。
小さな岩場がありました。指導標もあって、名前が書いてあったはずですが、覚えていません。
さて、小松原分岐。ここで和田小屋に行けばいいのですが、地図がありません。和田小屋より先のルートが一切解らないのです。それなら、地図のある小松原方面の方がいいか…
どちらも地獄の道です。
しかし、小松原方面に一歩足を踏み入れると、足跡が皆無になりました。さすがにこれは…
ヌオッ(゚皿゚;)
どうやら尾根沿いではないらしい。確かに、地図もピークを巻くように道が付いている。
ふうたろう、詰んだかと思ったら、前からトレラン姿の人がやってきました。それで道が判明したのです。この時はそれですれ違っていきました。
さて、もう誰かに会うこともあるまい。最後まで歩き通すしかあるまい。
ところで、なぜここにさっきのトレランのおっちゃんの足跡がないんだろう…?
1984mを越えたら、樹林の間からかすかに霧ノ塔が見えます。まあ、本当は双耳峰的になっているので、手前の違う方の峰が見えているのですが…
苗場山。確か、この辺りでは小雨がぱらついていましたね、7年前は。
雲が緻密です。今日は本当に天気がいい。よいが故に諦めきれなかった、それは十分ある。
そして、吐き気がするほど険しい急坂。何で下山でこんなに上るんだよ。
1kmちょっと歩いただけなのに、もう1時間強経っているという悪夢(滅
霧ノ塔の最高峰。でも、雪が盛られていて、道がビミョーに判りづらい。ここに出てきたら右後ろを見ると見つかります。
テーピングをしてみます。この場合、どこを貼れば楽になるんでしょうか。テーピングの勉強、しておけば良かったね…
それにしても、こんなものまでRAWデータで撮っているふうたろうは負け組。
霧ノ塔から下ってきた1850mくらいのピークより。しばらくアップダウンが続く…。
ところで、ふつう、こんな写真は黒つぶれの白飛びで表現不可能です。
思えば、直ぐそこの大赤沢の尾根を下ればよかったとか、思ったり思わなかったり。でも、ふうたろうの持っている25000の地図にはルート表記がない…。そして、昭文社の地図は持って来忘れた(滅
苗場山は、「登頂」と言うより、「踏破」と言うに相応しい山ですね。平ヶ岳よりも広い高層湿原。
さっきこちら側に下る手前のところで話をしていた女性は、「尾瀬は箱の中の湿原、苗場は箱の上の湿原」とおっしゃっていましたが、なるほど、言い得て妙です。
日蔭山。ここで苗場山の展望とお別れです。でも、まだまだ、先は長い…
そして始まる下りの悪路。ハイパーぬかるみゾーン(滅
さて、コシアブラ集めとこうか(鬼畜
イヤラシいところに雪渓とかあったりする尾根。でも、どんどん下らねば。バスに間に合わない…(ていうか、ほぼ絶望的だけど)
小松原湿原までに2箇所、徒渉がありますが、一つ目の大きめな徒渉。スノーブリッジになっていますが。
ここまで来ると気持ちが焦って困ったものです。写真を撮る枚数もグッと減りましたよ。何のために来ているのやら。
本当はジックリ花や木、空などを撮り歩きたいものですが。
なお、これはワタスゲ(カヤツリグサ科)です。
ウボァー(゚Д゚)
やっと小松原湿原避難小屋…
14時35分。あと1時間半~2時間でバス停まで?無理に決まってんだろ。
ただの枯れた草が形を残したままよれよれになって残っている、みすぼらしい湿原。
小松原湿原も苗場山頂や尾瀬と同じ、高層湿原。別名、ミズゴケ湿原とも言われるそうです。
ぱっと見で、植物体の枯れたものの腐敗が著しく遅そうです。だから、そういう物質循環の悪い場所の環境に適応した植物だけが生き残るのでしょう。さっきのワタスゲは、高層湿原(ミズゴケ湿原)に生えるそうです。
以前、どこかでも書いたことがありますが、環境の悪い(?)場所を好んで生きるというよりも、環境のいいところでしか育たない生き物に追いやられて生きているというほうが適切なのでしょうね。
しかし、逆にいえば、このミネラルが少ない泥炭質の高層湿原は、ワタスゲのような生き物にとってはある意味「環境がいい」とも言えるかもしれません。まるで、抗生物質にさらされて耐性を持った腸球菌や黄色ブドウ球菌のように、その場を占有できるのだから。
そう、ふうたろうも、こういう、不便な(≒環境の悪い)山の中は、むしろ環境がいいと思いますから。ずっとは暮らせないけどね、食べ物もないし…
っていうか、この湿原、なかなかいいな。
小松原湿原もビミョーに下り道です。階段が付いているところもあります。
池塘や緩やかに流れる沢の脇に付いている白いものは、最初、石ころかと思ったら、何かの泡でした。カエルの卵でしょうかね。
小松原湿原の分岐です。まっすぐ行ってもバス停はあるにはありますが、猛烈に遠いようです。第一、地図がない。
地獄はあの分岐からです。ややきつめの坂を下ったら、融雪で増水した沢の徒渉。これで右足が少し濡れました。でも、ひるんでいる暇はないので。
分岐を15時9分に出てきました。膝関節痛と荷物の重さを考えると大健闘なのですが、さっきの徒渉を越えてから2回も強烈なアップダウンがあります。マジ拷問ですか、と。
金城山を16時4分に通過して直ぐ、何やら足音が聞こえると思ったら、さっき1984mピークのところですれ違ったおっちゃん(といっても、ふうたろうより少し年上くらいか?)でした。あと30分程度でバス停まではとうてい無理なので、近くの鉄道駅までヒッチハイク(救助要請)をお願いしました。
しかし、トレラン姿で荷物も軽い。ふうたろうは負傷している上に荷物も重い。追いつけるか?かなり待たせることにならないか?
最後の急坂から西側の尾根が目線よりも上に見えた時は、既に17時も回っていました。でも、あの尾根が780mくらいの標高なので、下山はもうすぐのはずです。
7年前を振り返って、物思いにふけりながらの下山のはずが、非常にザンネンな結果になりました。それでも、まだあのおっちゃんがいてくれたおかげでかなり助かったのは間違いありませんけど…
津南にお住まいのおっちゃんは、ふうたろうを津南駅まで送ってくださいました。
ああ、今日も生き延びた…
というわけで、かなりショッパい一人山行が終わりました。一応下山までは行けたので、「苗場山の単独」はいけましたが、本当はバス停までしっかり行きたかったものですね。
なお、1泊2日で30km、平標山登山口バス停から赤倉山を通って小松原湿原経由、風穴まで、というのは、やはり遠いです。アップダウンもすごいですしね。
次は、大赤沢、和田小屋、苗場山頂から直接赤湯のコース、ドラゴンドラのいずれかの道を使って行ってみましょう。まあ、最低あと2回は登れますね(遠い目
#24苗場山、2回目、ショッパいクリア。
天気:晴れ時々くもり(長野県下水内郡栄村・新潟県南魚沼郡湯沢町・中魚沼郡中里村・津南町、上越新幹線など)
やはり小松原湿原縦走厳しそうですね
ふうたろうさんが苗場山に居た日に、平標山から眺めてました。
まだ苗場山は未踏で、行きたいなと思っていたんです。
まだ、雪が被っているな~もう少し後かな~って。
赤湯温泉は泊まってもみたいし、佐武流山・・・(止めとこ・・日記も読みました
苗場山なら小松原湿原も行ってみたいし、和山温泉から山頂泊して見倉・風穴へ抜けるかなんて妄想してたんですが、記事を読んで爺ちゃんには小屋泊まりでも厳しそうだと思いました。
写真のツツジは、ムラサキヤシオかなと思います。私も、尾瀬の三平峠への道で今年初めて見たんですよ。ムラサキは色でなく、語源的に(群れ咲く)から来ているのではないかと思ってます。ひとつ花(アカヤシオ別名アカギツツジ)に対向する命名かなと。枝の先の花の数です。ムラサキソウ(紫草)も花の色は白です。
小松原湿原縦走も厳しそうですね
ふうたろうさんが湿原を歩いている頃、平標山から眺めてました。
苗場山はまだ未踏の山で、行ってみたいな~、雪があるからもっと後の季節かな~って
和山温泉から山頂泊りで、小松原湿原を抜け、風穴へなんて妄想してました。
ふうたろうさんの日記を読んで、小屋泊まりでも、爺ちゃんには厳しそうだと思いました。
写真のツツジは、ムラサキヤシオのようです。
私も尾瀬の三平峠への道で、今年初めて見ました。
ムラサキは色でなく、語源的に「群れ咲く」からきているのではと思っています。
アカヤシオを「ひとつ花」とも言いますが、それに対向する命名かなと。
枝先の花の数のことです。
ムラサキ(ソウ)「紫草」の花の色も白色ですし。
あれっ二重投稿になりました。削除願います。
こんにちは。
二重投稿の件は、二つの文脈が若干違うので、残しておくことにしました(笑
紫を「群咲」としますか。なかなか粋な名前の付け方ですね。でも、最初はしっくりこなかったでしょうね、花の業界でも。
小松原湿原コースは、アップダウンこそキツいですが、避難小屋を中継すればいけると思います。無理せず2泊3日で行くのが最善かと思います。赤湯経由なら、3泊4日ですかな?(1泊2日で抜けた僕がエラそうに言うのもなんですが(脂汗))
小松原湿原は単品で行ってもいいところです。何なら、日蔭山まで行って、苗場山を見てから下りてくるのも一興かと・・。