久遠のトムラウシ(トムラウシ山~十勝岳縦走コース:北海道)
大混雑と胃もたれとで寝苦しい夜が、やはり早い北海道の朝を以て明けました。昨日のはっきりしない空とはうってかわって、晴れわたっているようです。
雪渓にはまだ日が当たっていません。でも、遙かなる次の地に行き着くためには、そろそろ出発…でも遅いかもしれません。時刻にして5時前。
ふうたろう、4時53分に出発。まずは目前に迫ったトムラウシ山。これはもう登頂できること確定と思っているので、余裕綽々。
昨日最後の上りに疲れ切った忠別岳。モルゲンロートがきれいです。
化雲岳から天人峡に続く稜線にもモルゲンロート。
ところで、ふうたろう、昨日忠別岳に下りてきた道とは違う道を上っているのですが、ヤブがスゴいんですけど。ザックもカメラもボリボリ引っかかります。
Σ(゚ ◇゚ ;)ギョッ
通行止めじゃねーか!
ふうたろうはまた登山道ではない道を歩いていたようです。小屋からは疑問の余地がないくらい立派な踏み痕が付いていたのに。
五色岳に到着です。ヤブはもうないでしょう。ここからは360度の展望です。
昨日は拝めなかったトムラウシ山の山塊。台地の上に立つ山という感じです。
見えているのは日高山脈でしょうか。ちょっともやがかかっていますが、山のひとつひとつは判別できます。あの中のどれかが幌尻岳でしょうか。それとも、ここからじゃ見えないかな?
五色岳からしばらく、木道が続きます。尾瀬みたいな高層湿原になっています。
黒くくすんだ、しかし立派に成長した霜柱がビッシリ。だいぶ冷え込んだのですね。寒いわけです。
東の空いっぱいにまで絹層雲が広がってきました。目では見えないけど、カメラで撮るとちゃんと暈が見えます。これは崩れますね。
五色岳から化雲岳の肩まで、長い木道を歩きます。肩のところは少し崖っぽくなっていますが、何も問題はありません。
化雲岳の肩も少し台地状になっていて、トムラウシ山の頭だけが地上から生えているように見えます。ここで2グループ目くらいの人に出会いました。たぶん、ヒサゴ沼避難小屋に泊まっていたのでしょう。
この辺りからいっそう起伏が激しくなります。楽しいですが、体力も温存したいところですね。
ヒサゴ沼分岐のところには池が見えます。
何段かに分かれて盛り上がっているトムラウシ山。よくよく見るととても不思議な形をしているものですね。
隣の女性から忠別岳避難小屋でミルクキャンディをいただいていました。ふうたろうはチョコレートを差し出しておきました。
立派なエネルギー源。推進力です。
日本庭園、なるほど。確かに、庭みたいですね。ただ、巨大です。
あれがヒサゴ沼。晴れて風がなかったら鏡のようにきれいなのでしょうね。
庭園の中に点在する池はところどころ凍っています。本当に晩秋ですね。実際のところ気温は何度なんだろう。
スゴい岩。岩の上から撮っているので上り坂に見えるけど、坂にはなっていません。とても歩きづらいです。
何段にも分かれているトムラウシ。緩急を繰り返す岩場の坂には息が上がります。
これは北沼。もうトムラウシは目の前。それから、7月に起こった遭難事故の核心部。
前をおばちゃん軍団が歩いています。ようやくここまで来たふうたろう、まだ9時前後なのにかなり疲れてきました。トムラウシ、相当強敵ですぞ!
絹層雲が先ほどから高層雲に変わって日差しがなくなり、寒くなりました。トムラウシの肩で休んでいましたが、やってられません。
後ろからおばちゃん軍団が追いかけてきます。ふうたろうは出発します。
トムラウシからはどうやら十勝連峰が見えるようです。あれがふうたろうの行くところかぁ。
…って、メチャクチャ遠いやんけっっ!
Σ(゜◇゜;)ギョッ
あっちじゃねーか!
しかも、さっきまでそんなに人歩いていなかったのに、那須岳の時のあごひげのような人だかりは何だ?
かくして、トムラウシ山登頂。ふうたろうの記録に加えられることになります。もちろん、ちゃんと下山すればの話。これからの下山が重要です。
トムラウシ山から南方面を眺めると、十勝連峰北部の、オプタテシケ山が見えます。見るからに急坂で、ゾッとします。
茅ヶ岳なみの混雑で、あまり客層はよくなかったりします。久遠のトムラウシは一瞬で感動を削がれましたとさ。
ドライに南沼キャンプ場まで下りてきました。テントが10時頃にして既に数張り。これから天気は崩れるだろうと思うので、ここで停泊するんでしょうね。
南沼キャンプ場の水源はとっくに涸れています。たぶん、遙か下に見えるあの南沼まで汲みに行くのが最短なのでしょうが、やる気なくしますね。
ふうたろうはここを通過することに決め、辛ラーメンを貪った後、三川台方面へ進みました。
忠別岳手前のところよりも規模の大きい紅葉地帯があります。十勝連峰をバックに見られます。
大雪山の紅葉を楽しむなら、あの辺りで止まっていてもダメなのかなと、ここに来て思いました。空が曇っているのは残念だけど、ここら辺の景色は素晴らしい。
けっこうスピードがあってコースタイムの60%くらいの時間で進めそうなので、岩場とかでマッタリ。こういうひとときが、山歩きではたまらないのです。
ひとつ、目立つように濁った沼が。ナント、ここで水を汲むおっちゃんがいました。ふうたろう、さすがに煮沸してもここの水は飲みたくないかも。
空が急に晴れてきました。薄雲はややありますが、絹雲程度。むしろ空のアクセント。ふうたろうはスーパーハイテンションになった!
笹原の清々しい道。その広大な風景に涙がチョチョギレました。場所的には三川台の少し手前です。
ユウトムラウシ川を中心としたカールがあります。そこは湿原状になっていて、きれいです。そして、どこかに水場があるらしいけど…?
三川台です。どうもここではキャンプができるようです。なかなか景色もよく、トムラウシがどーんと。夕焼けや朝焼けもきれいそうですし、トムラウシのアーベンロートとか最高じゃないですかね。
三川台からツリガネ山方面へ。けっこう下ります。途中に水場のマークが地図上ではあるのですが、解りません。…本当なら、解らないじゃすまないんだけども。
刈り払われた笹の向こうに切り立った崖が。この辺りの地形は、浅間山の外輪山の様子に似ています。でも、こちらのはスケールが果てしなく大きいですね。
接近戦をすれば紅葉もきれいな場所があります。歩いていて、本当に気持ちのよい場所です。ただ、猛烈に長いのでそれなりの覚悟は必要ですが…。
相当厳しいだろうと覚悟して来た、オプタテシケ・十勝岳縦走コース、トムラウシまでのコースとは比較にならないくらい楽しいコースです。起伏は激しく辛いですが、その分展望が素晴らしい。むしろここを主にして歩きたい、そう思うのはふうたろうだけかな?
ツリガネ山の手前のハイマツの茂みの中にちょうど良い平地が。ここにテントが2張りほど張れそうです。水はありませんが。
太陽に暈が被ることもう何度目でしょうか。今日はこういう薄曇りの状態が続きます。今日に関して言えば、あまり観天望気はアテになりません。でも、携帯も通じないので天気図がなかなか手に入りません。
ツリガネ山の上りは鬼です。コースで唯一、鎖場がある場所。既にかなりの距離を歩いてきているので、ふうたろう、堪えます。
ツリガネ山の最高峰は道から外れたところにあります。まあ、だから本当はツリガネ山を巻いているコースということになるのですが。
良い形してますね、ツリガネ山。
鬼のツリガネ山上り坂を登り切ったら、ふうたろう、大休止に入りました。登山靴も脱いで、ザックも下ろして、30分強、マッタリしました。暖かいし、景色は良いし、ちょうど良い。三川台でマッタリしていたおっちゃんがここでふうたろうを抜いていきました。おっちゃん、もうここの縦走何回も経験しているんだって。
…西の稜線にはジャンダルムが見えています。
ツリガネ山で充電したふうたろう。再び猛スピードでコスマヌプリまで。さっき充電中に抜いていったおっちゃんをあっさり抜き返し、取り付き。
しかし、ふうたろう、自分でもよくここまで歩けていると思います。
ふうたろうが楽に歩けているのは、きっと山岳会などの人が刈り払いをやってくれているからですね。ありがとう。
実は、たまにはふうたろうも刈り払いをする側に回ってみたいと思うことがあります。
コスマヌプリから。どこのピークも景色が素晴らしいです。その分とても苦労はしますけど。
ピークをひとつ越えるごとに、見えてくるピークがひとつひとつ増えていきます。同じ景色を二度と見ることはありません。
名前はないけど、最後のピークです。もちろん、オプタテシケ山までの、という話ですが。
でもふうたろう、そろそろ体力に限界が来ました。足が痛い。一歩一歩がスゴく重い。もう12時間近く行動しています。しかも、昨日もハードに歩いたのだから…。
疲れてくると、煩悩が湧いてきます。煩悩というのは、辛いこと、腹立たしいことばかりを思い出すこと。心が狭くなってきます。辛い。
カブト岩などの見物はあったけど、とても見物する体力と気力が湧かず、長い下りに足の流れを任せながら、最初にテントの張れる場所に着きました。ちょうどここは沼の水も取れる場所のようですし。
でも、道を挟んで反対側の笹薮がかり払われていて何かと思えば、野グソ場所になっていました。しかも、ティッシュが捨ててあるっ!
この2日間、水をケチってきて、恐らく2リットル程度の水しか摂取していません。それでも水をここで確保しておかなければ今後足りなくなる可能性が高いので、すぐ側にある沼で水を汲み、煮沸。かなり湿性遷移の進んだ沼だったので、赤やら茶色やらの動く物体が。てっきり辛ラーメンのトウガラシの破片かと思っていました。
かくして、これをゲータレードの空きボトル2本に詰め、夜の支度をば。
昨日の夜とうってかわって今日はただひとり。たぶん、数百メートル一円、誰もいないんじゃないでしょうか。さっきのおっちゃんはコスマヌプリを過ぎてすぐのところでビバークした模様です。
20時を過ぎると、小雨が降ってきました。遂に雨に降られるのか。明日は行き交う登山者たちも口を揃えて天気が崩れると言います。明日はオプタテシケ山という最大の急坂を越えなきゃいけない。そんな時に雨に撃たれたら…。
そんな不安を胸に、ジメジメした寝袋の中で、1時間ごとに目が覚めるのに耐えながら、夜を明かすのでした。
天気:晴れ時々くもり、夜は時々雨(北海道上川支庁上川郡上川町・美瑛町・十勝支庁上川郡新得町)
覚え書き:靴下濡れて取り替える(沼にスリッパがハマる、いや、沈む)