竜頭蛇尾(鳥海山湯ノ台コース:山形県)
鳥海山の闇夜が明けました。しかし、4時過ぎから起きているふうたろうは、月にかかっている暈(かさ)がずっと気になっていました。
暈とは、絹層雲、つまり薄雲が、虹のような円を描く現象のことです。あとでその写真を載せますが。
こいつが出てきているとなると、低気圧の接近は予想よりもかなり早くなるでしょう。午後は雨が降ってくる可能性もあるので、この朝焼けに騙されてはいけない。
小屋から日本海の方を見ると、絹層雲が焼けていました。月がその絹層雲の裏側に隠れています。
南の空にも、遠く朝焼け雲がたなびいているようです。しかし、南部ほど天気の崩れは早いだろうと。
日本海の海上には、下層雲が現れ始めています。鳥海山にかかってくるまでどのくらいだろうか。
実は、ふうたろう、脚の疲労が回復しきっておらず、スピードアップできません。何とか空が絹層雲である間に山頂まで行きたいのですが…。
稜線には標識が意外と多い。特に、標識が無くても場所が特定できる場所に限って。
どちらかというと、長く続く坂の途中や樹林帯などでの標識がありがたいのですがねえ…。まあ、付ける方の身になれば大変でしょうけども。
九州や近畿などは既に雨が降っているようですので、こちらの天気はまだマシと言うところですか。さあ、ちっとも近づいてこないですが、がんばりましょう。
ただ、一部、ネコの額ほどの広さが残っている箇所もありますが。
外輪山を回るコースと、火口を回るコースとに分かれます。どちらでもいいのですが、今日は展望を取りましょう。外輪山で。
しかし、少しは期待して進んだ外輪山の方ですが、どうもイマイチ景色がパッとしない。曇っているせいもあるのか。
どうもこちらも高層雲に変わってきたようですな。高層雲は別名「おぼろ雲」と呼ばれます。太陽がマジでぼんやりしていますがな、山ぎわで。
ふうたろうが下っていく尾根となる方向ですが、今はとりあえず山頂を目指します。
麓に低い雲がかかり始めたようです。まさかとは思うが、山頂、間に合わないのか!?
疲労の度合いが、必要以上に歩いている時間を長く感じさせます。景色も景色で、これは修行なのかと問いたい。
ここが薊坂(あざみざか)と外輪山縦走の分岐。脚力が疲労で落ちているので、ここに20kgの荷物は置いて、サクッと山頂を踏んでくることにしました。しかしそれは若干の勇気がいることです。
高層雲の下層が乱れつつあります。まあ、雲画像見ても天気図見ても、100%下り坂なので、これは降られなければ吉と言わなければなりません。
薊坂分岐に荷物を置いても、山頂への分岐まで、しばらく外輪山を歩きます。しかし、近づいている感じはします。
鳥海山の外輪山や岩場に隠れていた東の山並みが見えてきました。さっきまで下界と空をぼやかしていたもやとは違い、日本的な風景を醸しています。
ここから中央火口丘の山頂に向かいます。一旦外輪山から狭い火口原にまで下ります。
岩とかが落っこちてきそうなところです。さっさと切り抜けたいです。
さっきの外輪山のルートよりも厳しいガレ場の連続です。脚力が落ちていると、何倍も厳しい。でも、山頂が近くなると気持ちもはやる。
外輪山の方を振り返ってみた。
でもなぜだろう、迫力を感じないなあ。
併設されている山小屋は既に閉まっているのですが、トイレは開いているでしょう。手洗い場の水は凍っているようですが。
チップ制のトイレ。トイレットペーパーが付いています。でも、補給する人がいないので、早いうちになくなるでしょうね。紙は必ず持つようにしましょう(ふうたろうはザックにおいて来ちゃったけど)。
便所参りが終わったら、神社には目もくれず山頂へ。だって、よくよく考えたら、ふうたろうのゼロメートル登山のゴールなんだもの。
ところで、この辺りの岩には、傷がたくさん付いています。いや、傷なんて言わずはっきり言えば、落書きです。昭和40年とかに彫られたものもあったので、その頃からマナーの悪いのはいたということで、実に嘆かわしい思いをしました。
はっきり言って、そういう破壊者の名前なんか見たくないし、登頂なんか祝う価値もないと思います。(断言)
これは、
「May peace prevail on earth」
と書いてあります。下界でもよく見かける文言です。世界が平和でありますように、という意味です。
これは神社の関係者が書いたのかもしれません。信仰の一部だと思います。
山頂が近くなってきたような気がしましたが、どうも山頂っぽい札もない。
スゴい岩場だなと思ったら、一旦岩の割れ目の底まで下らされそうですぞ。
到着です。天気としても体力としても、竜頭蛇尾的な感じで何とも締まりませんが、95個目の百名山を得たと同時に、ゼロメートル登山を終えました。2236m、登りましたな。
折角だから来た道ではなく、外輪山から回って薊坂分岐に戻りましょうか。
遠くからだと目を凝らしてもルートがよく判りませんでしたが、少し近づくと、岩に白いペンキで矢印が打ってあるのが見えなくもないです。
それでも、この辺りの道はガスったら相当迷いやすそうです。キケン。
今日は日本海よりも東の山脈の方が美しく見えます。ちょっとこの天気ともやは残念すぎますなあ。
七高山は切り捨ててきました。
また、矢島駅から歩いて登ってくるか(何
あちらには雲海が見えます。あの下は濃い霧に覆われているのでしょうね。
下山する方向はこれよりもまだ右の方角です。嗚呼、霞んでいるなあ、遠いなあ…。
9時近くなっています。今日の晴れの予報を期待していた登山者たちが、バリバリ登ってきます。でもなあ、この空はなあ…。それでも、ここしばらく恵まれなかった天気に比べればマシ、というのが登山者の一人の思いだったようです。
分岐に戻ってきました。ここで、イギリス製のバタークッキーに噛みついて休憩することにしました。
さて、休憩が終わったら、薊坂を下って、河原宿小屋に向かいましょう。
ここの下りは急です。今のふうたろうの脚力には若干荷が重い。でも、下りないと、荷は外れない。
薊坂を下ってくると、だんだんガレ場の連続のようななだらかな坂に変わってきます。このガレ場の平行移動もどきが、またきついのですよ。時々石が浮いてるし。
これが太陽の暈。月でも同じことが起こります。これを見ると、少なくとも今の気圧配置と雲の動きでは、天気の崩れは必至です。
草もみじが広がる下り坂。遠くに月山。
…この退屈な気分が伝わるだろうか…。
10月の下旬に残っている雪渓。今残っている雪渓は、万年雪ってことか?
おばちゃんたちとグッバイしたら、いよいよ河原宿小屋へ。おばちゃんたちが言っていたとおり、この辺りの水が全くなくなっているようです。異常な暑さで、雪渓が溶けきってしまったせいなのか。
河原宿小屋に到着。薊坂分岐から20分ほど短縮できたようですが、いつものふうたろうのペースとはほど遠い。
ここで、どん兵衛を食べます。イギリスクッキーに噛みついていたくらいでは足りませんでした。
さて、食ったらとっとと下山しましょう。雲行きはどんどん怪しくなってきましたし、正直、疲れました。
次に向かうのは滝の小屋。滝の小屋はちょっと遅い時期まで開いているとHPに書いてあった気がするので、バッジも手に入るかもしれません。行ってみよう。
しかも、行ってみた滝の小屋は、トイレを動かすための発電機以外動くものなし。
小屋前の分岐には、湯ノ台方面の矢印があるのですが、こいつが地図とはあからさまに違う方向を指しています。どちらかというと、鶴間の方を通る観光道路の方に誘っているように見えます。俺に車道を歩かせる気か。
地図を信じて進むと、この骨だけ橋にぶち当たりました。まあ、これなら普通は敬遠したくなるわな。でも、これくらいで歩みを止めたりはしないだろう。
ところで、カメラの具合がひどく悪い。おそらく、電源管理のシステムが壊れている。電池を入れても認識しないことが多くなってきた。まあ、所詮は機械だな。中古でNikonD80を探して、もう1台持っておくと、修理も気楽になるかもね。
10分ほどカメラの復旧をしてから、先に進みます。この看板から先が、本当に単調な緩い坂で、展望が良いかと思ったら目線の高さくらいの灌木が続いて、案外失望する。
うしろを振り返ると、黄葉していれば美しい樹林帯が広がっていた。黄葉なんて贅沢は言わないので、せめて青空がほしかった。
徐々に樹林の背丈が高くなってきました。葉は緑か無いかの、全か無かの法則。
たまに坂が急になるところからは、少し展望が利きます。しかし、かなり雲が厚くなってきた。
左(東)に、例の観光道路が蛇行しながら走っています。後で述べる鳥海山荘などをスルーさせてまで、ブナ林を切り開いてまで、そういう道路を造る必要が何処にあるのか。
完全に黄葉は散っています。曇っているし、雪があるわけでもないし、見所が少ないなあと、正直がっかり。
枯れ葉の絨毯は、冬の奥多摩みたいで、それはそれでいい感じもするけど。
樹間から黄葉っぽい樹林が広がっているのが見えます。これを見晴らしたかったんだけどなあ。
アオアオとまでは言わないけど、ビミョーな黄葉。
あ"ーーー\(゚皿゚)/疲れた!
坂が急になったな、と思ったら、いつの間にか横堂に着いていました。このルートも目印ひとつ無い。地形を見晴らす展望箇所もほとんど無い。
さて、ここから湯ノ台に行くか家族旅行村に行くかを悩みます。「家族旅行村」という名前が気に入らんなあとか、予想よりも速く歩けたので少し寄り道するかとか、思惑もあって、結局湯ノ台へ向かうことに決めました。
この、湯ノ台のルートに入ると、高木の落葉樹林帯が連続します。
誰も通っていません。きっとみんな車で来るだろうから、あの観光道路を通って上まで行っているのでしょう。
今日の佳境はこの辺り、だと言ってもいいか。本当に静かで落ち着く場所です。
湯ノ台に、直角に曲がります。杉沢の方向にも道があるようですが、杉沢という地名もルートも、地図にはありません。25000分の1の地図にさえも。
しかし、名前とは違って中はストーブまで置かれている立派な小屋。しかも、登山口に近いので、車で来た人は、ここに泊まっても良い?
水場があると思ったけど、南高ヒュッテから少し下ったところの、この樋から出てくる水は泡立っています。飲用は厳しいかな。
さて、南高ヒュッテからずっと下ってきて、この切り開かれた場所に出てきたらもうすぐ。
しかし、この丸太の橋は、濡れているとキケン。雨降ってたら歩きたくないなあ。しかも、ジョロウグモ付きのクモの巣もあるし…。
車道に出ました。ここにバス停はないので、とりあえず鳥海山荘まで歩きましょうか。
鳥海山の山頂を見ると、まだ雲がかかっていません。でも、高層雲はかなり厚くなっていて、午前中に比べると薄暗くなった気がします。
駐車場が空いている鳥海山荘。やっているのかな、と、正直不安だったけど。
中でバスの時刻を聞くと、2時間以上待たないと無いとのこと。まあ、判ってはいたことなので、温泉に入って、飯を食おうではないか。
というわけで、鳥海山荘、お世話になります。
時間がかなりあるので本気でマッタリします。
…そしたら、鳥海山荘の送迎を使わせてくださいました。飯の味は普通だけど、サービスは色々行き届いていてありがたかったのですが、幸運にも送迎まで使わせてもらえたのは嬉しい。席に余裕があったとのことです。
ところで、酒田駅前は寂しい感じがします。ちょうど半年前の4月24日に来たときも思いましたが、今日は曇っているので余計そう思います。
さっき、送迎車に一緒に乗っていた酒田市地元のおばちゃんたちに、このお菓子セットをいただきました。
…竜頭蛇尾かと思ったけど、捨てたもんではなかったな…。ありがとうね。
帰りは山形や福島経由で帰ることになりそうです。新潟経由だと酒田で2時間待ち。正直辛い。
だから、ちょっと散策…ですが、空き地やらシャッター商店街やらがとても寂しい。郊外の大型スーパーは車がいっぱいあったのに。
酒田から新庄に向かって出発。電車の中では、なんだかんだ言っても、ゼロメートル登山を終えた満足感などに浸っていました。
新庄に着いたのは17時45分頃。酒田から鈍行で1時間。鳥海山荘でミックスフライセットを食ったのに小腹が空いたので、駅前というか駅ビルの蕎麦屋で味はビミョーなざるそばを食いました。本当は、値段が倍ほどするけど品質は良さそうな板ソバを食いたかったんですが。
新庄では雨が降り始めていました。
駅前の菓子屋で、糸魚川のおまんたのようなホイルケーキと、くぢら餅とあじさいというせんべいを買いました。バスやタクシーに乗らなかった分、土産を買っておくと。
山形新幹線に乗って、これから帰ります。しかし、雨が本降りになってきました。宇都宮あたりからの雨は絶望的で、大宮は土砂降りでした。なんか、どこかで雨に当たるなあ。
二日間を通して晴れのちくもりの鳥海山ゼロメートル山行。湯ノ台の紅葉、鳥海山荘や新庄駅の人々は温かかったけど、どうも竜頭蛇尾の感は拭えない。歩き疲れたのもあるのかもしれないな。
でも、2回も機会を逃した鳥海山を登れて、良かったと思います。
#95鳥海山クリア。
天気:くもりのち雨(山形県飽海郡遊佐町・酒田市・新庄市、その他の移動中は含まない)
覚え書き:新庄駅観光案内所でカゴ入りのジャガイモ購入
鳥海山を0メートルで登るだなんて思ってもみませんでしたよ。
百名山なら利尻山や開聞岳は聞いたことありましたけど。
相変わらずやること熱くて尊敬です。
自分も結局新潟やめて青森に行っちゃいました。
日曜天気崩れて東北が正解でしたね。
う~ん…
誰かはやっているだろうと思ったんですよね、
本当のところは。
たぶん、やっている人はいっぱいいるんじゃないかと。
日本海から太平洋まで歩く人もいるくらいだから。
なるほど、開聞岳はゼロメートル出来そうですね。
あの山大好きなので、
いつかやろうっと♪
しかし、新潟辞めて青森ってのも、
やっぱり無茶ぶりですなあ、お互い(笑