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ふうたろうと化学(と山)の起原

2012年 2月 9日

 所長がなんだか分析機器の倚子に座りにくそうに座って作業をしていたので、ふうたろうが農薬の分析の時に使っている倚子と交換しました。伸び縮みしなくなった倚子みたいで、低いみたいです。
 ということで、修理してみようと思っていざ開いてみたら、…壊れてんじゃなくて、あの高さが最高位だったという件。手を油まみれにして、バカバカしいにもほどがあると。


 今日の生化学は(何 あんまり身になったような気はしませんでしたが、今朝、中央アルプス縦走の時に世話になったMamiさんが、チョコレートのテオブロミンというアルカロイドの、犬に対する中毒のことを気にしていたので、このテオブロミンから始まりました。
 テオブロミンはプリンアルカロイドと呼ばれる物質群で、これまた、核酸の成分とそっくりです。おそらく、合成段階のどこかで枝分かれしているのだろうと思います。
 というわけで、今日のテーマは核酸の合成、でした。本当は、核酸はプリン(アルカロイド)だけじゃないけど、今日はテオブロミンが出て来たので、こちらだけ。
 物質名をここで羅列しても、絶対後で読み返す気にならないので書きませんが、アミノ酸や有機酸をそのまんま使っていた尿素回路の時と違って、アミノ酸の一部(アミノ基)や、由来がよく解らないけどホルムアルデヒド、二酸化炭素、などを順番に積み上げて、結合させて作っていくという、なかなか地道な合成でした。
 こうして出来上がったのがイノシン(酸)。これが、核酸になり、あるいはアミノ基(アンモニア)の排泄のための尿酸になり、おそらく、犬のチョコレート中毒の話の元になったテオブロミンなどのアルカロイドになるのか、と思います。
 ところで、生化学のおもしろいところは、それぞれの物質合成がとにかくいろいろなところで交叉するところです。生体に必要な核酸を作る過程が、鳥やは虫類にとってはアンモニアを捨てる手段(尿酸という白い物質)になる。それは即ちイノシンから別の反応を司る酵素(タンパク質)が生まれたということです。新たなタンパク質が生まれるとは、遺伝子の突然変異です。遺伝子の突然変異とは、進化の萌芽です。
 天然物化学の教科書を見ていて思ったのだけど、その特殊な化合物を作るためだけに新たな物質が最初から合成されるというパターンはあまりなさそうだということです。アミノ酸や核酸、有機酸、そしてそれらの中間物質などの多くが関わって、いろいろな物質が合成されているのです。テオブロミン然り、ポリフェノールの類然り、βカロテン然り、ホルモンなんかも然り、ある種の抗生物質もまた然り。
 始まりは、いつも糖質や脂質、タンパク質(アミノ酸)、核酸から。この合成(および分解)を理解することが、どうも生化学(およびその特化した分野である天然物化学)のポイントみたいです。
 生物が信じられないほど多くの化学物質を自ら作り出す力を持っているけれども、実は初期に関わる物質は実に限られているのではないか。最初は限られていた物質から偶然なるエラー(元あった酵素のエラーとか)で雑多な物質が新生し、それらが淘汰されながら生き残り、物質と生命体が進化してきたのではないか。…そういうロマンがあふれた学問だと、改めて思います。


 思えば、「理科」に目覚めたのは、ふうたろうにはいくつかの切欠がありました。記憶にある範囲で…
 一回目は、幼稚園児の時に与えられた「鉱物と岩石の図鑑」と「家庭科の図鑑」(両方とも小学館)。幼稚園に行くときも肌身離さず持っていた記憶があります(黒笑
 二回目は小学校4年生の時に見た「驚異の小宇宙・人体」。この番組はふうたろうの理科好きに、おそらく革命をもたらしました。嫌気性生物ばかりだった地球環境に好気性生物が生まれたくらいに(何
 三回目は顕微鏡の誕生日プレゼント(小学校6年生)。また、この頃続けていた植物栽培。
 四回目は、意外かも知れないけど、スーパーファミコンの「シムアース」だと思います。
 五回目は、高校入学の宿題で出会った、講談社ブルーバックスのシリーズ。
 この辺りから加速していったと思います。化学辞典と生物学辞典を高校生のうちにそろえて、肌身離さず学校に持って行ったような気がします。マンガよりも楽しかったかと(黒笑 化学辞典の紙のにおいを嗅ぐと、高校生の頃を思い出すのですから。
 この理科に対する異常な執着は、親、とりわけ母親の影響だろうと思います。三回目の切欠まで、チャンスをくれたのは母親でしたから。ふうたろうは、それには感謝してもしきれません。
 …そういえば、山が好きなのも、母親の影響でしょうね。旅が未だに好きな母ですから。


天気:晴れ(東京都板橋区)

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