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自分の感受性くらい、自分でまもれ(火打山:新潟県)

2008年 9月 14日

※記録:9月16日8時台

 昨夜は晴れていたのに、今朝は曇っています。やっぱり、今日はダメなのか?
 夜中、何だか隣で、風邪を引いたHの咳以外の声が聞こえた気がするけど、寝続けていました。


 昨日作ったカレーは、外に出して放置していました。どうせ腐らないだろうから。
 ところが、火を通してみると、食べる段階になって、ハサミムシが5匹も入っていました。いい出汁が出ただろうか。


 天気は良くなってきたようです。早く出発したい。


 5時に起きたのに、7時になってもまだ出発できないことにイライラ。今朝は米を炊いたに過ぎないのに。
 雲が昨日のトラジマのごとく、西から東へ、流れていきます。


 ここが笹ヶ峰の登山口。火打山でも妙高山でも、ここ出発が一番楽ではないでしょうか。
 しかし、ここでも結構もたついてたな。


 分母を9とする標識は、今年38日目の山行にしても、初めてです。
 僕の後ろの方で、KとHが何か言い合いながら歩いている様子です。


 この木道、しばらく続きます。
 しかし、そのさなか、遂にKが僕を呼び止め、Hが山に登れる状態ではない、ということで離脱するといいました。
 Hは風邪を引いていました。しかし、ここまで来たということはそれなりの気概を持って来たと思っていたので、半ばがっかりしました。「最初から来るな」と。
 Kは火打山も妙高山も登りたがっていたのに、僕としてはかなり理不尽に感じるも、どうするか決めるのは2人。しかたがない。
 でも、この光景、どこかで見たことがあります。


 2人を切り離して単独行に移りました。杓子岳であの人を切り離さなかった時とは違います。
 ここで100人規模の若者集団に出会いました。山では、登る気概のある人間はすべて仲間です。


 上の写真の沢は、この沢と同じ場所です。最初の橋。
 ここは水場です。補給していきましょう。
 ということで、昨日悪戦苦闘した低温殺菌は犬死にでした。


 水場を過ぎると、しばらくきつい坂になります。12曲がりだって。
 でも、僕にはそんなの関係ない。展望求めて歩きます。


 晴れていても少し暗い樹林帯。
 気持ちが晴れているといえば、嘘になります。


 岩が多い道。予定が大きく狂ったことによる負担は、大きくはないけれど、小さくもない。


 ああ、空はこんなに青いのに…。


 少し木の高さが低くなってきて、展望が利き始めました。
 歩いていれば、いつかは展望が見えてくるのです。


 火打山の方に迷いなく向かいます。問答無用。


 空の青は更に濃く。どんどん進みます。


 しかし、南~南東は、真っ黒の怪しい雲。振り返るとあの闇の中か。


 火打山が見えます。かなり遠いけど、それだけ今いる場所から離れることができるのです。


 ヤマハハコ(キク科)です。まだ花の季節は続いていますよ。
 さながら、沿道の観客です。


 高谷池ヒュッテ。キツい鋭角の二等辺三角形の小屋。登山家集う、るつぼ。


 この看板の奥は、実はテント場。そして、そのテント場からは池塘が見えます。


 もったいぶってないで、早く池塘を見せよ。
 その前に、この水場が汚染されています。誰か知らないけど、ラーメンの汁をここに捨てていて、かなり不愉快。


 高谷池の湿原。しばらく眺めていましょう。


 火打山に向かいます。


 イワイチョウなどが黄葉していて、湿原が素晴らしい。


 かくの如し。


 火打山へ続く道。遠いけど、無限ではありません。


 草もみじも見えます。イワイチョウに少し赤のアクセント。


 イネが植わっているような池塘。水田の原型だろうか。


 高谷池の奥にもう一つ湿原がありますが、名前を何といったか…。
 奥に火打山。最高の風景です。


 とりあえず、しばらく見ていましょう。


 火打山登り口は、なかなか歩きでのある道です。


 ライチョウ平と呼ばれる場所。ちょっと開けた場所で、休憩できます。実際、休憩している人たちもたくさん。


 ヤマトリカブト(キンポウゲ科)です。下の方には咲いていなかった花です。


 ライチョウ平から歩いてきた、ハイマツの稜線。影バージョン。


 少し平坦な稜線歩きが終わったら、いきなりきつい坂…。
 でも、前に進むのが疲れたら振り返ってごらん。間違いなく、進んできた道です。


 火打山山頂。
 周りに何人人が居ても、「うおーーーーっ!!!着いたぁ!」と叫んでしまいます。百名山#41。


 奥秩父や日光方面と違って、この辺は関西・関東の人々が混ざり合う潮目です。
 何で山の上で出会うおっちゃん・おばちゃんたちは、こんなに元気なんだろう。僕も元気だけど、次元が違います。


 火打山は正午過ぎだったので、下りは午後ということになります。
 これから下ります。さっきより稜線がきれいに見えてきました。


 熱線で熱くても、秋の穂は季節を証明しています。


 午前より午後、天気はいっそう良くなりました。さっき影バージョンと言っていたハイマツの稜線と同じところです。空の青が少し鮮やかになった気がします。


 これから登ってくる人、後ろから追いかけてくる人、色々います。僕はその中のひとり。希ガスのように漂います。


 場合によってはイオンのように凝集することもあります。
 ライチョウ平で、井戸端会議をしていたところに混ざり込みました。議題は、今話題のミニマムアクセス米の、アフラトキシン・農薬汚染事件など。それ以外、何話したかなぁ。まぁ、色々。名刺はサブザックに入れてくるの忘れました。


 午後の池塘。高谷池ヒュッテまで、上の山グループの人たちと一緒です。


 今日は天気と景色がこんなだから、あと18枚。
 池塘が凄すぎる。


 赤と黄色のじゅうたん。オオシラビソなどの針葉樹の柱。青空の天井。
 …この贅沢は、金を出しても買えない。


 これが高谷池の池塘群。
 ほとりに高谷池ヒュッテ。いい場所に、景観を壊さないたたずまいであるんですよね。


 高谷池ヒュッテのトイレ。100円玉がたまたまなくて、500円投入。これは無駄金をはたいたことになると思う?


 さっき、僕がくっついていたグループの人たちは、そのまま笹ヶ峰に下りていきました。バイバーイ!
 僕は、これから黒沢池ヒュッテに向かうのです。もう少し。


 エゾリンドウ(リンドウ科)オヤマリンドウ(同)か。見分けは難しい。
 でも、このリンドウ、山中に咲き誇っています。


 高谷池ヒュッテからは荷物全部を持っての移動ですので、ちょっとの距離でも負担は大きくなります。でも、ほら、霧の向こうに小屋が見えてきましたよ。


 これが、黒沢池ヒュッテ。
 高谷池ヒュッテ側から歩いてきた時は、何という節操のない形をしているんだろうと思ったけど、中に入ってから同じことが言えるかどうか。
 高谷池ヒュッテとは違うセンスがあります。


 1階食堂の風景。窓が大きく、8角形の造りのせいか解らないけど、明るい。疲れて辿り着いた気持ちを癒します。


 こちら黒沢池の湿原です。高谷池の湿原ほど池塘は多くないけど、こっちもきれいなんでしょうね。ちょっと日が陰ってきたから、暗いところがよく見えません。


 しばらく湿原の側を走っている木道の上で、風が止むと音が一切聞こえない時を過ごしました。
 でも、こういう時って、意外と雑念が湧きやすくて、嫌なことも思い出してしまいます。


 太陽が山際に落ちました。
 何か夢中になっている時は、雑念は紛れてしまいます。究極的には自分で乗り越えよ、そういうことですね。


 日が落ちるのも、本当に早くなりました。数分待っているだけで、ドンと暗くなります。
 でも、昼の曇り空の薄暗さと違って、キレのある闇が美しい。


 黒沢池ヒュッテの難点は、夕日が拝めないこと。でも、じゅうぶん内装でカバーしています。


 夕日が見られない、っていっても、空がきれいであればこのとおりです。陰影礼賛。


 日もとっぷり暮れた頃、さっきから気になっていた、いかにも健脚っぽい兄ちゃんと話をしていました。
 驚いたことに、僕の高校の先輩に当たる人でした。そこまでローカルになれたら、あとは先生のこととか、馬酔木山荘のこととか。
 …馬酔木山荘か。まだ、林間学校、やってるのかなぁ。
 思えばここで月を見ていられるのも、あの高校で、ワンゲルをやっていたからでした。


 Tさん(名刺交換もした)はツーリング用のテントで雨飾山から縦走してきたそうで、僕も夢に見るコースです。小屋の前にテントを張って、夜を過ごすようです。僕は、そういえば、テントを持っていませんでした。途中リタイアの彼が持って帰ったんだもんね。
 …単独行だってこと、忘れてた。
 あ、この写真は、北斗七星を撮った(2分間シャッター開けっ放し)のですが、見えるかなぁ。画面のホコリみたいで風情ないなぁ。


 8角形の小屋の中は天井まで吹き抜けです。居心地抜群です。


 朝暗いうちから起きて、夜暗い時まで起きている。もう、睡眠剤も飲んでいるのに、小屋の外で夕闇を撮ろうとジタバタするふうたろう。


 登山口から1時間もしないうちにだだごねされたときは、かなりの苛立ちを覚えましたが、その苛立ちはもはや下界の話となりました。僕は火打山と高谷池ヒュッテ、黒沢池ヒュッテ、そして旅人とたくさん出会えたのですから、災い転じて福となす。
 自分の感受性くらい、自分でまもれ、ばか者よ。
 辛い分、倍きれいだったよな!


天気:晴れ時々くもり(新潟県中頸城郡妙高高原町・妙高村)

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