強敵!15時間ロングラン(日高神威岳~日高幌尻岳:北海道)
寒い目覚め。黄色のテントに入っていると、晴れているような錯覚に陥るが、それは罠だ!
外はものスゴいガスで、やる気を失せさせるほどです。
空が根本的に曇っているわけではないことは判っています。でも、晴れてほしいよね?
で、昨日、エサオマントッタベツ岳に向かう稜線にあったように、こちらも、スゴい雪庇が延々と続いているのです。
今日初めて見た、太陽と青空。出発してそんなに時間は経っていなかったけど、この瞬間は、ダミーであっても嬉しいのですよ。
ダミーなのですぐに曇ってしまいます。
斜面の南側にはハイマツ(ハイマツという松ではなく、高山では高く伸びられないため、地面を這うことから来ているようですが、違うのかな?)、北側は雪庇と、とてもコンディションバッドなルートなのであります。
北の雪庇を踏み抜きたくないので、出来るだけ南(左)を歩くのですが、トラバース気味なので、怖いんですよね。雪道の歩き方をまだ解っていないふうたろう。親しい人に教えてもらうのが一番なんですがね。技術を身につけるだけなら。
歩いていると、時折晴れるのです。よく見たら、ふうたろうが歩いている遙か先は、明るく晴れているようにも見えますが気のせいですかね?
さっきよりも雲にムラが出てきて、見通しが利いてきました。しかし、見れば見るほど、目が点になるほど遠い。
日高神威岳(かむいだけ)から西へ歩き、稜線が北へ向かう頃、ガスが急激に薄くなってきました。でも、見えているのが戸蔦別岳(とったべつだけ)なのか日高幌尻岳(ぽろしりだけ)なのか判りません。
最初の急坂(下り)です。
縦走なので上り下りを繰り返すのですが、今日のその繰り返しは強弱含めてスゴい数になります。その中でも厳しい急坂の一つです。慎重に降りましょう。
さっきの急坂を下ると、次はすぐに上りがあって、ここから700mくらいが岩場になります。雪のへばりついた岩場は最悪で、岩やハイマツの縁は踏み抜きがひどく、700mという距離は信じられないくらい長く感じます。地図で見ると、北に向かう稜線上の、小さなコブが3個ほどなのですが、ヤヴァイ。
天気自体はどんどん回復していますが、いかんせん、風が強い。常時風速5~10m/sくらいあったんじゃないですか。
常に晴れたり曇ったりを繰り返しながら、天気は良くなり、稜線の見通しも良くなっていきます。テンションが徐々に上がってゆく。
あ、ここです。例の岩場は。右(東)が雪庇で崩壊寸前、左(西)はハイマツと岩で足場が悪い。エゲツナいったらありゃしない。
常に晴れているときよりも、ガスりまくっている時にパッと晴れてくときの方が何百倍も嬉しいですね。日頃でも、途方に暮れているとき、展望が利くとものスゴくやる気になるでしょう?
今まで見えなかった北側の風景です。当初予定していた、伏美岳(ふしみだけ?)や妙敷山(おしきやま)が見えてきました。でも、まだガスが濃い。
伏美岳から稜線沿いに西に歩くとピパイロ岳という山に行き当たります。ふうたろうの歩いているコースではありませんが、当初予定していたコースには入っている山でした。今、その山がガスから抜けて出てこようとしています。
後ろを振り向くと、また伏美岳(左)と妙敷山(右)。もう雲をそれほど気にしなくても見える山になりました。
ガスの中から浮き出てくるのは、ひたすら雪庇です。道は晴れていようと曇っていようと険しいことに変わりありません。
来た道を振り返ってみるのも大事なことです。ふうたろうよりも先に、歩いている人がいたおかげで、まだふうたろうは安心して歩けたのです。ありがとう、Pioneerさん。
幌尻岳がどんどん晴れていきます。でも、このまま晴れてくれるかどうかは判らない。それでも、行くぞ!
時々、まったく雪がない場所もあります。今まで書いては来ませんでしたが、風が強いからそれこそ厚着のまま歩けますが、無風だったら熱中症でぶっ倒れているでしょう。何しろ、気温は0℃以上です。
見通しはだいぶ良くなって、幌尻岳の塊と戸蔦別岳が区別できるようになってきました。血湧き肉躍ります。
第2の急坂を下ります。下ったところから見上げているので太陽が見えています。
雪崩れそうだけど、アンカー(木などの引っかかりのこと)があるところをできるだけ歩こう。
下ったら必ず上る。
これが今回の縦走でした。まだ展望の利かない場所もたくさんありますが、進みます。
恐らく、トレース(跡)を付けてくれていた人のテント場でしょう。一人でよくここまで掘るなあ。
幌尻岳だと思っていた山は、実は幌尻岳よりも北東にあるコブでした。幌尻岳は一番奥で、まだ雲の中!
いよいよ、戸蔦別岳に取り付きます。最初の上り急坂です。非常に辛い上りです。
泣きっ面に蜂。
間違えて北戸蔦別岳の方に行ってしまいました。GPSを持っていなかったら、気が付かないままだったに違いありません。雪とガスで道が見えない状況ですから、ここは要注意です。
ちょっとまた、ガスが濃くなってきましたなあ。何気に、疲れと焦りでイライラし始めています。食料もじゅうぶん持ち歩いていませんでしたし(テントに帰らないとご飯類はない)。
しかし、三つこぶがハッキリ判るようになってきましたね?一番奥の、右のやつが、夢の幌尻岳です。
2回目の上り急坂です。
戸蔦別岳からしばらく痩せ尾根(幅の狭い尾根)の岩場が続く上、その直後の急坂ですから、猛烈に厳しい。足に力が入らなくなってきているので、左右がとても怖いです。
それでも、まだ半分ですよ。
振り返ってみると、戸蔦別岳がまだガスっています。
戸蔦別岳山頂におかれていた3個のザックが誰のものか気になっていたのですが、ここにもPioneerがいらっしゃいました。
そして、いよいよ、大詰めです。涙の準備はOKか?
12時4分、夢の幌尻岳到着!
でも、ガスっています。先の3人パーティの人に先に三角点を踏んでもらって、撮影などをしていたのですが、晴れてくれません。ふうたろうはこれから来た道を帰らなければならないし、第一クソ寒いのでお先に失礼しました。
少し下ると、頂上で晴れを待っていたさっきの3人パーティが見えました。ということは、今頂上は晴れているということですな。
行けば帰らなければならないというのは、いつも同じ。これからまた長い長い復路が待っています。
12時を過ぎ、ガスが消滅しました。あれほど曇りに曇っていた戸蔦別岳が鋭い山容を顕わにしました。深く青い空。素晴らしすぎます。
険しい道。幌尻岳から戸蔦別岳は、戻るのもまた一苦労です。戸蔦別岳の上り返しは死です。
手前の岩場と奧の戸蔦別岳。岩場のこぶも一つ一つ乗り越えていかないといけない。
北カール。あの稜線を下る(右に行く)と、幌尻山荘に行き着くようです。
戸蔦別岳山頂より。
幌尻岳もいいけど、戸蔦別岳もまた素晴らしい山です。狭い山頂なので、360度の大展望です。
見えているのは、ふうたろうが道迷いした北戸蔦別岳方面です。
なお、こちらにも幌尻山荘に抜ける道があるようです。
しかし、これからまたあの来た道を戻るのか。ゾッとするけど、行くしかない。
痩せ尾根の急坂を下ります(上を振り返っています)。雪庇に要注意。
クレバスができています。気のせいだと思いたいけど、午前中よりも幅が広がっているような気がします。
午前中はガスであまり見えなかった幌尻岳や七ッ沼カールの全容がハッキリクッキリ見えました。すっげー!(゚Д゚;)
どこまでも続く山脈。高校生の頃、アルプスを登っていたとき、周りに街が見えない風景に感動したものですが、ここもまたそうです。なお、旭岳(大雪山)は旭川市街が見えます。
このパノラマは素晴らしかったんだけどなあ。広角の度合いが足りない。
月が出た出た。
けっこういい時間になってきましたよ。16時とか。
雪庇を踏み抜いて、脇に引っかかって止まりました。(゚Д゚;)アブネー
そして、今更なんですが、幌尻岳や戸蔦別岳を目指すのなら、北東尾根ではなく、八ッ沢(地図で探してください)の西の尾根を使った方がいいという情報を、1803mのピークのところでビバークしていたおっちゃんが教えてくれました。
…神威岳、目が点になるほど遠いッスよ。
神威岳は見えますが(べらぼうに遠く)ふうたろうのテントはまだその先ですから。(´Д`;)
きれいなんですよね、なんだかんだ言っても。ただ、焦っているだけなんですよ。
太陽が消えます。今日の日はさようなら。
明日の日を夢見て希望の日々を。
見えないけど、この急坂でものスゴい風に煽られています。辛くて涙も出ないッス。
太陽が完全に落ちました。まだ1時間半くらい歩かんといかんのですけど?
高温の雪の中を歩いたので、徒渉しているかのようで、靴の中ビッショビショでした。満身創痍でこのテントに戻ったのは19時54分。ごらんの通り、マックラ。5時7分に出発して、14時間47分のロングランが終わりました。死ぬかと思った。
なお、越えてきたピークの数は、何と、60を超えていました。そりゃ、足も棒になるわな。
道行く登山者が、ふうたろうのテントを補強していってくれたみたいです。ありがたや。
このあと、フルーツ缶(缶じゃないけど)を食べ、速攻寝ました。よく生きて帰ってきたなあ、と。
でも、この道、思えば歩いてよかったと思います。なかなか経験できることではありませんよ。
天気:くもりのち晴れ(北海道十勝支庁帯広市・日高支庁新冠郡新冠町・沙流郡平取町)
覚え書き:ロマサガ3ラスボスBGMエンドレス・ハイマツ帯にリス