日の光を夢見て(羊蹄山比羅夫コース:北海道後志支庁)
倶知安駅前のホテルでの朝。相変わらず雨で、幸先が悪い。昼から晴れるとの予報ですが、本当なのかといいたくなります。
ホテルの朝の食事。600円。
写真を撮ろうとすると、食堂のおばちゃんが「大したもんじゃないのに…」といいます。しかし、本当にひどい食事で、一部腐っているものもあるんじゃないかと思うくらいでした。食事を利用している人は一人もいません。
こっそり残して、去っていきました。
8時15分のバスに乗るため、駅に向かって左側にあるバス停に。それにしても、なんという曇り空。雨はようやく小降りになっては来たけども…。
バスの中で真狩(まっかり)がご実家であるというおばちゃんと、少しだけ話をしていました。さっきの食堂のおばちゃんはこの羊蹄山には一度も登ったことがないと言っていましたが、真狩のおばちゃんは何度か登ったらしい。羊蹄山の形は、こちら倶知安側からより、真狩側からの方がいいらしい。
バス停すぐ側の道路に入ると、婆ちゃんにここは登山道ではないぞと言われ、倶知安側に戻って改めて曇りまくった羊蹄山をめざします。
寒いだの雪が多いだの言っても、やっぱり季節は徐々に春に向かっているようで、ミズバショウが雪解けの大地を貫いています。あの黄色の花は、エゾリュウキンカでしょうか。
歩き続けると、半月湖の側を通ります。まっすぐ羊蹄山の方に進みます。
道路はあからさまに雪かきがされた状態で、依然ここは冬であることをうかがわせます。
車道を詰めたところには、半月湖キャンプ場があります。駐車場まで雪かきがされていますが、キャンプ場自体はまだ使える状態ではありません。トイレも鍵がかかっていますし。確認はしていないけど、水だって出ないのではないですか。
半月湖の駐車場のところにある便所まで、便所参りですか。
30分くらいキャンプ場のあずまやの下でわかんやアイゼンを履くなどの準備をし、出発します。でも、曇りまくっているので、まったく乗り気ではありません。
あっさりこの辺の背丈の高い木くらいの高さに達します。身体がなまっていて、辛い。
折からの強風でたたき落とされた木の枝っぽいですが、これはヤドリギですか?
若干空が明るくなったような気もしますが、まだまだ雲は厚そうです。北の空ほど雲が厚い。
やっぱりこの時季の展望は、ガスが厳しいですね。もやっとしています。ふうたろうの頭の中みたいです。
坂がきつくなってきました。曇り空が解消されず、だんだん苛立ちが募ってきました。
ニセコアンヌプリの頭が見えてきました。あちらはガスから抜け出たようです。
すごい急坂で、距離的には歩いていなくても、高度はどんどん上がっていきます。でも、曇りすぎていてふうたろうのMPはどんどん下がっていきます。
ニセコアンヌプリの山塊に日が差し始めました。こちら羊蹄山の上空は、真っ黒の雲で本当なのかと思いつつ。
この急な斜面の上が雲の中だと判ると、本当にやる気がなくなります。
しかし、青空が羊蹄山を避けているように見えます(羊蹄山の上を下層雲が覆っている)。
わかんとアイゼンの最強装備なので、雪には比較的強いです。歩けます。でも、ものすごくつらい。坂がきついというレベルを超越しています。
だんだん青空の範囲が北へと移動してきます。でも、羊蹄山は依然低い雲に覆われたままです。
このきつい坂を登って曇ったままだと思うと、気分はきつい急坂を転がるかのようです。
シュカブラで波打つ、厳しい雪の斜面。俺はなんでこんなところを歩いているんだろう。
あまりにもつらくて、途中でビバークを決定しました。こんな状態で上まで行けるか。まずは停滞して、明日の晴を夢見ます。
なんでこんなに辛い感情に支配されてしまったのかと、自問自答していると、ふと、一昨日、かの女性に会った時の自分のことを思い出しました。
焦っていて、強がって、気遣いもなくて。ああなるほど、ふうたろうの山登りの哲学というのは、そういう段階なのか。晴れるまで待てないとか、絶対に登るというストイックさとか、晴れることが当然だと思いこんでいるとか、支配と被支配の泥沼から逃れられていないのだと。
テントを張り、道具を引っ張り出している間に、そういう思いがあふれてきて、涙が止まらなくなりました。この泥沼から抜け出さなければならないと思ったり、でも俺は抜け出せるのかなあと思ったり。
気が付くと、ここまで日が差し始めていました。
上を見ると、山頂の方も雲が切れてきました。この状態なら、登れたんじゃないかな。でも、どうしても登る気にはなれませんでした。
待てば必ず晴れるときが来る。待てない事情がふうたろうの外にあるとしても、必ず内にもある。「必ず」という余裕の無さを排するだけで状況は大きく変わるだろう。
ピークハントと百名山にとらわれなければ、これだけで十分すぎるほどです。
日の光に輝く樹氷。これをじっくり眺めながら過ごすのは、とても贅沢なことです。
昼飯を食べていないので、腹が減っています。五竜岳で初挑戦したタリアテッレを茹でます。
カニトマトソースで食べます。塩を忘れたっぽいので味が薄いです。やっぱり麺が若干βです。
悲しみに明け暮れる前に、山の愛情を感じ取るべし。すっかり北の空も晴れていて、雪の白もシャープです。
この美しい景色を作っているのは、さっきからふうたろうが忌み嫌っていた悪天候です。
太陽が更に傾いて、地表付近を覆うガスの中を、太陽光線が通るようになってきました。若干焼けています。
明日の日を夢見て、希望の日々を。…って、去年の幌尻岳でも思ったっけ。
晴れた山の夕方は素晴らしい。変化のさなかというのは、なぜにこうも魅力的なのだろう。
太陽が西の空に沈みます。これから短い北海道の夜が始まります。
余裕のない自分と、改めて向き合うことになりました。山登りは本当に人生そのものだなあと、改めて思います。
山も人も、自分の外のものです。無理やり何とかするなんてことは、本来的にはできません。いや、やってはいけません。嗚呼ふうたろうはなんと傲慢なんだろうと。
さて、明日はこのまま晴れたら山頂を踏めるでしょうか。
天気:雨のち晴れ(北海道後志支庁虻田郡倶知安町)