錦の名山(朝日岳蓮華温泉・五輪高原コース:新潟県)
朝5時。もうそろそろ出発し始めないと、13時35分蓮華温泉発の糸魚川バスに間に合わないんじゃないか?
でも、驚くべきことに、夜中1時頃目を覚めさせられた強烈な雨と同等レベルの雨が、テントをひたすら攻撃していました。一時は収まっていた強風も再び吹いていて、まさに寝耳に水の急襲です。
…今日は晴れの予報ではなかったのか…!
これはさすがに小屋に行って天気図くらいでも情報を仕入れないと、まずいだろう。…が、小屋の入り口に小屋番(女)がいたので、入口の外で煙草を吸っていた宿泊者から「一日こんな天気みたいだよ。」という絶望的な言葉を聞いてテントに戻るのでした。
テントの中もただ者ではないくらい湿度が上がり、せっかく撮影しようとした朝食(赤飯とコーンスープだっけ)、食欲が湧かない(この雨で萎えているせいで)中がんばった甲斐無く、撮れません。
ひとまず、タオルと赤旗(新聞紙)でテントの中や道具の水をしこたま拭いてから、順番を考えてパッキング。食料だけはザックからすぐに取り出せる場所に置いておきたい。
6時を過ぎると、ようやく雨は小降りになりました。もう夜は明けているので、かなりの人が出発しているようです。5時台のまだバイキルトのかかった雨が降る真っ暗な中をヘッドランプで歩く人さえいたわけだし。
(註)…バイキルトとは、ドラクエの、ダメージを2倍にする呪文。
ふうたろうも6時45分、すごく遅い時刻に自分でビビりましたが、遂にテントを片して出発です。しかし、周囲がほのかに明るい、いや、青い。
もう夜は明けているので、白んだ空で青くなっているのではない。まさかとは思うが…
ガスが晴れてきている。前朝日岳の輪郭まで見えてきた。手前の小高い丘の向こうに朝日小屋がある。
…どうやら、事実として雲が切れてきたようです。
何なんだ、この天気は…。まったく考えのおよばない天気の変化に、ふうたろう脱力。そして、昨日の夕方以降のイライラが開放されて涙がこぼれます。
穏やかな、雨上がりの水面。これから雨上がりの宴が始まるのかと思うと、少し気持ちも沸き立ちます。
朝日小屋まで見えてきましたね。前朝日が見えるのももう時間の問題でしょう。
ふうたろうが朝日岳に登っている最初の半分くらいだから、ほんの20分程度でしょうか。この激変にとまどいを隠せない。
眩しい朝を感じる樹林帯。影があるから光も輝く。光があるから影も出来る。とても爽やかな登山道になっています。
ただ、まだ小屋のわだかまりが残っていて、それだけが残念でなりません。
雲を突き抜けた朝日岳。山頂付近に立つと、どうやら雲海が出来ているようです。でも、地図の見かけによらず朝日岳は広い山頂ですね。
山頂までまっすぐに伸びる木道。さあ、17個目の300名山、朝日岳はもうすぐだ。
この広い山頂が、少し景色を切り落としています。一面の雲海、見たかったなあ。
朝日岳登頂完了。
思えばここに来るまで本当に苦労した。
しかし、周りにいるおっちゃんたちは昨日の朝日小屋に泊まった人々であろう。何となく一緒にいるのが苦しい。
広い山頂の台地に阻まれて見づらいけど、向こうには雲海に浮かぶ北アルプス群があるようです。
さて、騒がしい山頂は放っといて、先に進んで良いポジション探そう。
しかし、その前にルートを確認。木道をまっすぐ進むと雪倉岳に強制送還されます。山頂から進んですぐ、木道のない道が分岐していて、「ツガミシンドウ レンゲ温泉へ」という看板が反対向きについています。間違っても雪倉岳方面に下りないように…
でも、ふうたろうはこの先の方に数メートル進みかけたのですよ。
(;(;(;゚Д゚;););)アブネー
ほんの2時間前までの土砂降りが嘘のようです。山頂は騒がしいので、基本的にちょっとずらしの法則で。
ガスが行き来していて風流といえば風流なのですが、若干不安定なのですよね。
こうしてガスに覆われてしまうと、周りが見えなくなるのでやっぱり寂しい。
ここから、栂海新道と蓮華温泉方面に分かれます。ふうたろうは蓮華温泉に向かいます。
何だか、蓮華温泉方面について物騒なこと書いていますが、引き返す所なんか無いんじゃー!
でも、ガスっていても明るい。もう雨はさすがに降らないだろう。ただ、気圧配置を知らないので、昨日のような大どんでん返しの雨攻撃があることも覚悟しといた方がいい。
天気が不安定で、曇り続けることも逆にない。
やっぱり青空がほしいよね。もう3日目だもん。
方向によっては雲が厚いところもあるみたい。
とりあえず、草もみじがすごい。
今日は紅葉三昧で腹一杯になりましょうね。まだまだあと50枚以上続きますよ。
山が重なっていますね。あの向こうの山、結局何山なのか解りませんね。あの辺り、ひょっとしたら歩いていたのかもしれません、昨日。
ちぎれ雲がもみじ谷(この谷というか沢は白高地沢という)を通過。
なんかレンズが曇っているんですけど。
今回の山行、このカロリーメイトブロックもどき(BALANCE POWER)がとても活躍しています。これ、カロリーメイトのブロックタイプよりは美味いと思う。
南側に開けたトラバース道だから、谷に広がる紅葉が素晴らしいのです。
もちろん、登山道の木々も紅葉しています。
まあ、残念なのは、今年の猛暑のせいでしょうけど、葉っぱが傷んでいることですね。
雲が木の後ろに来て、木の輪郭がはっきりしました。景色っておもしろいね。
ここ、水場。ベンチの間に、青ペンキで岩に「水」と書いてあります。ただ、陰だから判りにくいかな…。ペットボトルの上半分を切り落としたコップまで置いてあるというサービスの良さ(何
これは青空に透かしてみました。木の自己主張がより強くなったような。
ああ、この景色、たまらないね。それでも、バスが13時35分なので、間に合わないだろうと思いつつも、急いでしまうふうたろう。
カメラを鷲づかみしながらガレ場やぬかるみ、木道を駆け抜けるふうたろう。ずぶ濡れのカメラバッグに詰め込んでいる時間がもったいないくらい。
秋の流れに 散りゆくもみじ
…このあとの歌詞忘れた(滅
流れて寄って
赤や黄色の 色さまざまに
…忘れた(泣
織る錦
……。
ふうたろう、2番の歌詞が好き。
渓の流れに 散り浮くもみじ
波に揺られて 離れて寄って
赤や黄色の 色さまざまに
水の上にも 織る錦作詞 高野辰之作曲 岡野貞一
相当適当な覚え方をしていたらしい。
しかし、いい歌だね。泣いちゃいそうだな。紅葉(もみじ)という歌の2番の歌詞です。
でも、実際少し口ずさんだのはもっと前だったと思います。ふうたろう、基本的に歌なんて歌わないもん。
紅葉の赤は、シアニジンというアントシアニジン類にブドウ糖がひとつくっついた、クリサンテミンという物質だそうです。不思議なことに、紅葉に関わる赤は、このシアニジンが基本なのだそうです(文献は省略、ネットのソースではない)。
とりあえず、この紅葉の中を歩くの最高だ…
ちょっと雲が多くなったかな。
この辺りで、ふうたろうより40分くらい早く朝日小屋を出たテントの兄ちゃんに追いつきました。どうも彼は転んで身体を打ったらしく、下りがキツいそうです。蓮華温泉で会えたら一緒にタクシー乗ろうか、などと話していましたが、このあと、どうも自家用車に乗っけてくれそうな人に出会えたようで、ふうたろう、遠慮なく速度を上げてぶっ飛ばしました。
ところで、ここは五輪の森。読み方は「いつわのもり」だそうです。
地図にこの先の五輪高原(いつわこうげん?)まで、分岐から1時間20分とありますが、絶対無理。トレイルランでもやってりゃ別だろうけど。
五輪高原に向かって木道をガンガン下ります。曇っているので写真もそんなに撮らないし…。
まあ、スカッとは晴れないんだけどね。
この広大で丸っこい湿原、あの会津駒ヶ岳の高層湿原を思い出します。
これ、五輪高原の三角点近くの水場。このパイプ、しっかり取り付けられているようで、触って動かすと水が出てこなくなるので注意。
ダイレクトに飲みました。美味かった…(恍惚
あの赤い服を着た男性、この「水」が「木」に見えたそうで、水場を発見できなかったそうです。
ちなみに、この人に、さっきの兄ちゃんは車に乗っけてもらえそうな雰囲気。たぶん。まあ、そういう交渉するなら、がんばってね。
この辺りも草もみじがいい。夏はどんな風景なのかなあ。花がきれいなんだろうね。
まあ、でも、ふうたろう、あとギリギリ3時間半で蓮華温泉に行ければ、バスに乗れる。急ごう。地図のコースタイムは3時間50分。
夏緑樹林帯の泥んこルート。木の根っこに気をつけて快適な紅葉狩りを。
季節に依るのだろうけど、この涸れた沢にぶつかったら下りが終わった証拠。25000分の1の国土地理院の地図を持っていないと、この沢は判別できないはずです。
ほら来た!
ここがあの問題の、「降水時には増水して…」というところ。
しかし、仮設の橋が架かっている。
ふうたろうは危うくここで鷲づかみにしたカメラと一緒に川に落っこちかけるところでした(滅
(・ε・)ん?
なんか、遠くに橋が見えるような気がするけど…?
でも、今ふうたろうが歩いているのは、川面ギリギリの崩落しかけのルート。
どうも、ここにさっきの橋を架けて、登山道にするみたいです。あんなの仮設の橋で十分なんだけどなあ、と、ふうたろうは思っている。
さっきよりも更に雲が少なくなった。今すぐあそこに飛んでいきたいなあ(何
これから樹林帯歩きです。この背の高い樹林が紅葉(黄葉)すると、これまた素晴らしい紅葉狩りが出来るはずです。
この溝を掘る作業は、ただ土を掘るだけでなく、這いつくばる木の根を除去しなければなりません。これを延々と先まで続けていくのだから、この工事、大変でしょうね。
番号が打ってある。しかし、時々順番がデタラメなところもあったりする。
ここが瀬戸川の橋。白高地沢の仮設の橋から54分。仮設の橋から蓮華温泉までが2時間20分としか書いていないので、どの程度のペースなのか判らないけども。
瀬戸川の橋を渡ったら、次は急な上りです。ふうたろう、無心に登ったら、いつの間にか登りきっていました。汗だくで。
ここで12時27分。あと1時間で蓮華温泉に着かないと、バスがない。
そんなに大きくはない兵馬の平。でも、そのこぢんまりとしたのがいい。苗場山の小松原湿原を思い出す。
蓮華温泉方面に向かうにつれて、黄葉した木々がポツポツ出てきます。
この辺りはけっこう良いね。
後ろから兄ちゃんが一人、ふうたろうを抜いていきました。速いね。
ここは雪倉岳への分岐!?
そう、ここをまっすぐ進むと、雪倉岳と三国境の間くらいに出ます。
ふうたろうはここから蓮華温泉に向かいますが、この標を見るとあと20分。今何時だ!?
程なくして蓮華温泉のキャンプ場。蓮華温泉に併設されているわけではないのですね。ここで初老の夫婦とすれ違いました。
蓮華温泉キャンプ場を過ぎると砂利道。もうゴールは近そうだね。
蓮華温泉に到着。でも、温泉に浸かっている時間はなさそうですね…。
駐車場が広がっています。まあ、そこそこ止まっているみたいですね。
やったー!!
バス停に到着、13時17分。何とか間に合いましたね。
ここでバスを待つ間、ワゴンで、飼い猫と一緒に遊びに来ていた変わった感じの中年(?)夫婦と話をしていました。女性の方は中国人で若くてしかも優しいですが(何
更に、ここにちょうど、昨日雪倉岳避難小屋で出会った京都の夫婦とも会いました。恐らく、さっきの分岐の所の、鉱山道を通ってきたのだと思います。でも、ゆっくり話せなかったなあ。
13時35分のバスに乗りました。この、猛烈にしごかれた山行に区切りがつきました。バスの中で、JRが遅れたことからずっと思い出して、辛かったこととか感動したこととかが頭を泳いでいるうちに、涙がこぼれてきます。
さっきのネコワゴンのおっちゃんに朝日小屋のことを話していました。
「今こうして下りてきてみれば、小屋になんか泊まらんで良かったと思うだろ。小屋代が浮いたと思えるだろ。それに、人間優しいばかりじゃないってことを教えてくれたんだから、その小屋番は良かったんだよ。」
すごく変なことを言うおっちゃんだと思う。でも、その通りだとも思う。朝日小屋の小屋番が良い選択をしたかどうかは別として、ふうたろうにとって必ずしもマイナスではないですよね。今回の山の天気もまさに同調していたではないですか。
そしてふうたろう、「今こうして下りてきてみれば」、やっぱり登ってよかったと思えた。これは素晴らしい山行だったんだと思います。
…そういうことを考えていたら、涙がこぼれたのです。
平岩駅で5分強の停車時間があったので、外に出てトイレ休憩など。このままバスで糸魚川まで行かないと、電車がないのですよ。
ところで、この駅前の駐車場で、一日目の夜、自炊小屋で話をしていたもう一人の40代の男性に会いました。
人の数はあれだけいたのに、こうして同じ人に何度も出会うのは実に不思議だなあと思います。
バスがフォッサマグナ沿いを走って、糸魚川(いといがわ)駅前に到着。ようやく下界に下りてきて、何となくホッとする。
この駅前の河童食堂で飯を注文している間に、切符を買いに出ていました。時間の節約です。
JRの切符売り場で、またクレジットカードが蹴られたので、もうね、この北陸本線はクレジットカードの呪いがかかってるのかと思いましたよ。でも、今回は2回目を通させてOK出させましたけどね。
1500円のエビフライ定食。エビフライだけはかなり本格的。まあ、だから良いんですけど。味噌汁の具はミョウガだけだけど、ミョウガが妙に美味かったな。ご飯はちょっと炊き方失敗。その他は(略)
でも、駅前でこの15時半とかいう時刻に飯が食えるのはここだけ。十分ありがたいです。
15時37分のはくたか号に間に合わなかったので、散歩。何だ、このオブジェは。
どうも、糸魚川の海岸から夕日を見るための施設みたいです。国道の下に、このオブジェに行くためだけの地下道なんか掘ってあったりします。まあ、何というか…。
糸魚川駅前商店街を抜けてオブジェに行く間に、一軒のお菓子屋さんと店番のおっちゃんがふんぞり返っているのに目が行っていました。駅ナカの土産物を買うのは簡単だけど、やっぱり徳島の阿波池田の時みたいに、地元の菓子屋さんとかで土産買うのがいいんじゃない?…なんて思って。
それが大当たりでしたぜ。このお菓子、わざわざ試食までさせてくれて美味かったので、買いだ、買い!
15時37分の電車に乗れずどうしようかと悩んでいたけど、1時間後の16時37分まで、あっという間でした。これを杞憂というのですな。
糸魚川、さらば。
ふうたろうははくたか号に乗りました。そして、越後湯沢と大宮、武蔵浦和、新秋津経由で帰るのです。
…が!はくたか号はふうたろうのせいでクサかった!!スリッパに履き替えたのがあだになり、デッキにニオイ充満(十万!)ごめん後ろの兄ちゃん。タオルで鼻押さえているの判ったよ!
越後湯沢到着時、車内販売のおばちゃんにそのことを話したら、「山男はしょうがないよねえ…。タオルがあるなら、ここ下りたところにちょうどお湯の出ているところがあるから、そこで足を拭くといいよ。」
ありがと、おばちゃん!
ふうたろうは、そうして無事、20時頃、家に帰り着くのでした。
スパイシーな山行だった。でも、こんなに充実したと感じられた山行はどれだけあったか。嫌なこと、雨とかJRの遅れとか小屋の話とか、いっぱいあったけど、全体的には、嫌だったと思い当たる節がないのです。結局どれもみんな(まあJRは別として)ふうたろうの糧となりました。
何だか、本当に山が人生を語っているみたいです。これからもどんどん登るぞ。
#93白馬岳クリア。
#129雪倉岳クリア。
#217北アルプス朝日岳クリア。
天気:雨のちくもり、時々晴れ(富山県上新川郡大山町・新潟県糸魚川市、移動中は含まない)