雨も味方に(ニペソツ山十六の沢コース:北海道十勝支庁)
一日目が終わりました。そして、二日目。今日から数日、山で一人暮らしです。
さて、天気は良さそうですので、安心してニペソツに向かいましょう。ただ、雪質は…
雪質が時々緩い場所があります。それでも、昨日のあの異常な林道に比べれば比較にならない程良いのです。たまに踏み抜きますが、めげずに進むと。
空はもやとかガスとかいうレベルではないほど霞んでいます。おそらく、黄砂が飛んでいるんだろうなと思いますが…
樹林が少し薄くなり、標高も高くなってきたので遠くが見えるようになってきました。あの峰の向こうに見える山並みは、石狩岳や音更山など、でしょう。
出発から1時間半ほどの6時過ぎ、1484mの小ピークに至ります。荷物が重い割には健闘していますか。向こうに見える峰は1681mのピークです。ただし、あれは通りません。
この1484mのピークは、はっきり言って踏み抜きます(滅 どこ行っても逃げようがありません。
そのピークからしばらく、ほぼ平坦なルートですが、踏み抜きがひどいのでさっきの上りの方がマシなくらい。北斜面寄りを歩くと幾分マシですか。
樹林が更に薄くなってきたので、見通しは利くようになってきました。
雪が吹きだまるのか、この辺りから広い雪面も出て来ます。もちろん、そういうところは踏み抜きもあまりありません。
広葉樹(ダケカンバ?)などの疎林になってきました。こういう尾根はもっとも快適です。踏み抜きもないし。
空は薄雲が出ている上での霞状態で、(Θ_Θ)とならなくもないですが、この雪の上を歩けるのはそれでも気持ちいい。
十勝平野はどうも雲海になっているようですが、このもや―おそらく黄砂は間違いないと思いますが―で遠くの見通しが悪い。
この辺りの樹林は低木中心でしょうか。ともあれ、雪の上のヴァージンロードです。
南の彼方にはウペペサンケ山が見えます。糠平温泉あたりから登れるのでしょうか。あの山もいつか登りたい。
あの切り立った崖のようなところの上を巻いて、ニペソツに向かうのですね。しかし、暑さと荷物の重さでこれがなかなか進みません。
そして、やっと1681ピークの、その肩を越えました。その身体を向けた方向にニペソツ山があります。
なお、1681ピークは、登り切る必要はありません。まあ、登っても景色はいいとは思いますけど。
ここから見えているあのピークはニペソツ山ではありません。手前のいくつかのピーク群(天狗岳?)の一つのはずですが…
なお、ふうたろうはあのピークから石狩岳の稜線に向かって歩こうと思っています。でも…?
何やらリボンの付いた意味深長な竹竿が雪に刺さっています。きっと、ふうたろうに先立ってニペソツに向かった誰かが、この辺りでテントでも張ったんでしょう。
しかし、何だか、その近くに投げられているザックを見ると、テントっぽいものはない…?遭難とか、やめてくれよな。
さっきの竹竿リボンのところがキャンプ指定地で、1681mピークと1888mピークの鞍部に当たります。樹林はその辺りにしかありません。
…というか、そのあとは雪がせり出したところ(吹きだまったところ)の上を歩けます。もちろん、雪庇(出っ張ったところ)を踏んだら\(^0^)/オワタですので、やや内寄りに。
樹林の向こうには、どうやら大雪山山系がバリッと見えているようです。
外に寄りすぎると雪庇が崩れて落ちるかもしれない。内に寄りすぎると踏み抜きがひどくてとても歩けたものではない。難しいところです。
周囲を覆う樹林が少なくなると、大雪山の全貌が見えてくるようになります。展望がいい、それだけじゃなくて、これから進もうとしている国境稜線までの縦走(路)を黙視で確認しておかねばなりません。万が一雪がなかったら、その時点で進めませんから。
このピークは、幌加温泉から延びてくる登山道の通過点です。幌加温泉でもバスが国道まではあるので、登れなくはありません。しかし、このニペソツ山主稜線手前の急坂を、雪が付いた状態で登るのは勇気がいるだろうなと判断し、あえて十六の沢コースを選びました。
ふうたろうはもうこの辺りから悟っていました。
縦走はムリと。
…雪溶けてんじゃねーか、あっちより標高高いここで(滅
ハイマツもどっさり出ています。もし、雪がなかったら、このどっさりハイマツの中をウルトラデラックスハイパーヤヴこぎしなければなりません。そうでなければ、高山植物を踏みつけながら歩くことになります。
さて、東面が切れて、雪の上を歩くのが憚られる頃になると、ハイマツの中の正規夏道登山道に入れるようになっていました。あの、下界ではザンネン級のハイパー踏み抜き林道を考えると信じられませんが、ありがたしと思って進みましょう。
ハイマツ越しにウペペサンケ山。靄はかかっているけど、すばらしい展望です。
ふうたろうが歩いてきた右(東)の尾根と、可能であれば進もうとしている縦走路の始まりの左(西)の尾根と、この違いはなんだろうか…。
なお、雪は東面よりも西面の方がよく溶ける、と、何かの本で読んだことがあります。なぜなら、同じ日照が東面と西面に公平に当たるとしたら、気温が上がる午後の方が雪面の温度が上がるのに、より有利になるからだそうです。
1888ピークのところからふうたろうは石狩岳方面に向かいます。しかし、ニペソツ山をその前に踏まないと、クリアになりません。荷物を置いて、水や食べ物などだけを持って、ニペソツに向かいます。
この1888ピークまで来ると、ニペソツがはっきり見えるようになってきます。しかし、思いの外遠い。
一旦下ってまた上る。のっぺりした雪面に爪先を差し込みながら進みます。さっきの岩ゴロゴロゾーンなどでアイゼンやわかんは脱いでいます。
進むべき方向はいいのですが、どこが道なのか判りませんがな。踏み越えますよ?
こういう雪田は、足を置いた途端ヅヴォッといきます。わかんなんか履いても、おそらく悪あがき程度にしかならないでしょうね…
それより、この岩とハイマツと遠くの雪山の景色はすばらしいですね。ふうたろう一人で食うのはもったいないくらいです。
カール(氷河で削られた)のような地形。それとも、本当にカールなのかな?
遠くに、3年前の9月に黒岳から縦走して3日目に到達したオプタテシケ山が、しっかりと雪を纏って見えています。
雪のシーズンに、あの黒岳から十勝岳の縦走をしたらまた楽しいかもしれませんね。
広大な雪の山並み。しかし、こないだ景鶴山で見てきた越後山塊の雪景色には及ばない。所詮は残雪、きたなごり雪ですから。
最後のピークを越えると、いよいよニペソツ山がその全容を見せてくれます。
さて、エネルギー補給にチョコレートでも食うか。フルタ製菓の回し者じゃないよ(笑
ここから、かなり急な下り坂です。いや、この期に及んで一回下るってのは、かなり精神的ダメージがデカい。
できればこの下の雪の塊に乗っかって撮りたいくらいだけど、この下は直角の崖なので、無理。
後ろを振り返ると、越えてきた、天狗。確か、そんな名前の山だったかと。
ハイマツが生い茂る、中途半端に夏道のルート。しかし、ここ以外に歩くところはない。
霞んでいるのが本当に惜しい。広大な東大雪の森林と雪原は、空気が澄んでいるときにもう一度眺めたいものです。
さっき天気予報を確認したら、どうも今日の上川地方(ここは十勝と上川の境界だが、上川で見るのが正しいだろう)は天気が午後から下り坂。空の薄雲もそれを告げていますね。帰りにこの下りの景色が撮れるかどうかは判りません。
同時に、さっきの天気予報の確認で、黄砂が飛んでいることがはっきりしました。さっきまで見えていた旭岳が判らなくなっています。
さて、ニペソツ山頂に近づくと、雪の付き方が非常にイヤらしくなってきます。あの、ふうたろうが死にかけた五竜岳みたいなおぞましい地形ですよ。
ふうたろうの先を行っていた登山者ふたりが、山頂から下りてきていました。若い男の子でした。しかし、その彼ら、どう見てもツボ足で登ってない?しかも、ピッケルじゃなくてスキーのストック…?(゚Д゚;)
雪の斜面を慎重にトラバースしながら、最後の尾根に出ます。これを登り切ると、漸く頂きに立つことができるのです。
雪がまったくないガレ場。アイゼンは脱ぎたいけど、どうせ下りでもまたあのイヤらしい雪ゾーンを通るんだもんね…
11時58分、ニペソツ山到達です。出発した頃に比べると、空気も黄砂で汚れ、空の薄雲も随分広がってしまいました。でも、ここから見る山々は本当にきれいだろうなあ、と思います。
当初、ニペソツ山の南尾根を上がってくることも考えました。しかし、この雪の量・状態ではとてもそれはかないませんね。
ニペソツ山は2012.7m。北海道で2000mを超える山は多くありません。周囲の山々は殆どが眼下に見えます。
で、肝心の縦走路ですが、やっぱりもっとも勾配のきつい石狩岳稜線の、ニペの耳手前の尾根に上がるルートがハゲています。ああこれは縦走はムリだな…
天気が崩れる、先はまだ長い、そんな思いに突き落とされるかのように、下山を始めます。
これは、遠くの冬山の風景と夏山とを合成したような感じですね。
ヌオッ(゚皿゚;)
…いや、上るときから判っていたことですよ。下りはより慎重に行きましょう。
と思ったら、程なくして一気に乱層雲っぽい雲がたたみかけてきた!
なんとかダッシュ気味で戻ってきたけど、そろそろ空は限界っぽい。それどころか、雷が来そうで怖い。
ザックを置いたあの分岐(違)まであと少し。
しかし、遂に雨が降り始めた…。
結局、縦走は諦め、ひとまずキャンプ指定地まで後退です。何、まだ策はある!
しかし、ここに至っても、天気の崩れ方は波を繰り返します。天気予報では雨は夜までで明日は晴れるとのことです。ならば、むしろこの雨を楽しんで、黄砂ともやを洗い流してくれることを期待しちゃいましょう!
指定地に概ね到着。雪の上なら問題ないので、ここに張っちゃいましょうか。
というわけで、まだ15時だけど、テントです。
…といっても、今日は10時間以上行動していますがね。
縦走が、まさか雪がなくてできないとは思わなかったですな。仕方ないので、明日は強引に廃道を下って、石狩岳シュナイダーコースに向かいましょうか。
天気:くもり時々晴れ、のち雨で夜は雪が交じる(北海道十勝支庁上士幌町・上川郡新得町)