チョウが飛んでヘリパッドと原発へ(何
ふうたろうが今日訪れたのは東京大学。晴れて一年生!
…なワケなくて、そこの立て看に書いてあるとおり、「日本鱗翅学会」の一般公開があるので、ノコノコとやってきたわけです。
でも、普通に学会やっているだけならふうたろうが情報をキャッチするはずも足を向けるはずも、ないはずですが、たまたまFacebookで知り合った友人(なぜ彼女は俺のアカウントに辿り着いたのか知らないが)が発表するというので、ならば挨拶代わりに名刺は持ってないけどということもかねて、行くことにしました。
今日の東京は幸運にも低い雲が垂れ込めて霧雨の降る天気。絶好の屋内日和で、寝覚めもいいと来たもんだ(←こら
東京大学の講義室というやつは、何か、座りにくいように作られているのか?この椅子、前傾姿勢になると椅子が持ち上がって、筆記とかしにくいんじゃ!次から、紐持ってきて倒れ込まないように結んで固定するか!
では、気合い入れて参加します。
ふうたろうの友人が発表するのはほぼ最後。それでも最初からやってきたのは、友人の発表を聞くためだけではありません。最初の基調報告では、絶滅が危ぶまれる動植物として、レッドデータブックに載ってゆく生き物の状況について述べています。
ふうたろうは山に登る人間なので、山で起こっていることはできるだけ多く見ておきたい。多くのものを見るには、見るための検出器がなければならない。こういう"視点"というのは、一つの検出器になると考えています。
本当は違う解釈ですが、ひとまず、絶滅、あるいは絶滅危惧種が増えているグラフ、と捉えておきましょうか。
ふうたろうはこの鱗翅学会の活動内容については、事前情報もまったく手に入れていません。「基調報告」を聞いているとは言いつつも、大方展開を知っている会員たちとはスタート地点が違います。
でも、この一枚一枚のスライド(パワーポイント)に書いてあることの意味は大方理解できる…はずです(←こら
上の写真も含めて、それぞれの生物の生息域の減少(絶滅)要因が何なのか、この学会がどういう方向を向いているのか、徐々に解ってきましたね?(早いか)
先に言っておけば、この学会では水生昆虫類の話は殆ど出てこないので(チョウやガの話だから)、ここに書いておくと、河川敷の草原(葦類など)が失われ、湿性遷移が進んで生息域が縮小している、とのこと。
湿性遷移というのは、自然に起こることですが、ふうたろうは、その遷移が最初の状態に戻り、再び遷移の過程を辿るチャンスを、人間の居住空間が広がったせいで奪われたため、このような問題が出てくるのだと考えます。遷移をリセットするような、人中心に見れば災害になるものを、確実に減らしているわけですから、ね?
砂浜の環境についてです。砂浜にも昆虫がいるというのはピンときませんが、それはふうたろうの視点(検出器)不足というものでしょう。
それはさておき、砂浜は海沿いにあるものですが、山も関係していて、山から供給される土砂が減ると失われるとよく聞きます。もちろん、ふうたろうはどう関係しているのか、まだ知りませんが。そして、海洋汚染の影響を受けることもまた特徴的です。佐渡の海岸で罠にハマっているときも述べましたが、プラスチックの破片や小分子が浜を汚染している実態が既にあります。
意外かもしれませんが、里山、つまり、非常に人工的な環境の中に適応した生物種が危機的である、というのです。しかし、その里山がどうなっているかは、ふうたろうがこれまで数百回行った登山の中で見てきたとおりです。
里山は、燃料や肥料の基地としてかつては利用されたため、管理される対象でした。が、今では燃料・肥料の種類が変わり、その上に農業が廃れた(廃れさせられた)ために、状況が変わることになります。
基調報告である程度解ったことは、ここで扱われうるチョウやガをはじめとする生物類は、人との共存の中で維持されてきたものであるということ。人は彼らのすみかを奪った一方で、また別の形で与えていたとも言えます。
ここから各論に入ります。しかし、どこの発表も概ね場所やチョウ(ガ)の種類が変わるだけで、基本的には変わらないと思います。
富士山の北部、つまり山梨県側では、チョウの生息域が徐々に高い位置に移動しているそうです。説明のこの図を見ると解りやすいですが。
単純に生息域が標高の高い方に移動するということは、温暖化(気候変動)が主なものだと思います…が?
実際はそういう単純なものではなありません。富士山北麓にも他の山域同様、植林帯があり、樹林を(収穫?も含めて)管理しています。しかし、その管理する人、面積、などが減ってくると、管理されていた状態に適応していたチョウは減ります。
思えば、ふうたろうが花スペシャルと称して花の名前を調べていたとき、その花がどこに生えるのか、図鑑には書いてありましたね。その中には「畑」「道ばた」「伐採地」などの表記があったと思います。チョウだけでなく、チョウが必要とする植物(寄主植物と言うそうです)もまた、人の生活と共存・適応してきたのですね。
鱗翅学会の中でも、昆虫学界の中でも、ガを扱う人は少ないようです。
さっき、「絶滅、絶滅危惧種が増えていると捉えておきますか」などと述べましたが、そういう含みのある表現をしたのは、「扱う人が少ない」ことに関係します。
レッドデータブックに載せるのは、人です。人が「絶滅危惧種」を認識しなければ、載せることはできません。つまり、レッドデータリストに上がらなくても、客観的に絶滅する恐れがある生き物がいる可能性は、十分にあるということです。
ガにも寄主植物(やその他必要な環境)があります。チョウにとっての寄主植物が奪われていることを考えると、ガにもかなりの絶滅危惧種(あるいは絶滅種)があると考えるのが普通です。
しかし、ガの愛好家は殆どおらず、特に小さなガ類は、本当に調査がレアなのだそうです。
それに加えて、シカの食害も増えてきたそうです。シカが増えている原因は、捕食者(人間も含む)が減っていることも大きいでしょうね。
ここで休憩、というか昼休みです。東大本郷キャンパスに、キンモクセイの木があって、そういえばもう秋なのか、と、ハッとします。
今年も、いつまでも気温の高い日々が続きますね…。
午後は特別講演で始まります。が、何が特別なのかはよく解らないという件。
日本にどのくらいの数の昆虫がいるのかといえば、図のようになるらしいですが、全容は把握できていないようです。そりゃ、当然ですよね…。ええ、色んな意味で、当然です。
この表を見て気がつくことがありますか。昆虫類のレッドデータリスト記載率が異様に低いことです。それはもう、一つ上の図およびこれまでにいくつか述べたことの繰り返しです。
小蛾類、とあります。大きなガは目立つのでそれでも調査の対象になる(チョウよりは圧倒的に少ない)のですが、小さなガはみんな目に留めないでしょう。しかも、模様もパッとしないものであればなおのこと。
レッドデータリストに載ったもの
昆虫全体では870種(32000種)、2.7%
チョウ・ガ全体175(6575)、2.7%
チョウ70(328)、21.3%
ガ105(6247)、1.7%
大蛾類98(2815)、3.4%
小蛾類10(3432)、0.3%
この数値を見てどう思うでしょうか。
とはいえ、昆虫愛好家、とりわけガの愛好家なんてのは、この数字が物語っているとおり、多くはありません。市民が参加することで補おうという考えが湧くのも無理はありません。しかしそのためには、虫を単なる好き嫌いで捉えるだけでは、浸透しないでしょう。どのくらいの昆虫がいて、どのくらいの種類が絶滅に瀕していて、なぜ絶滅に瀕しているのか、という理由を知らなければなりません。
これは兵庫県支部の発表でしょうか。
絶滅(危惧)の要因について触れています。(大規模な)開発がその原因の一つであることはいうまでもありません。
ここでは、化学物質(農薬など)、温暖化、シカの害、などが挙げられています。
とりわけシカの害はひどいらしく、低木や下草類は軒並み食べられてしまいます。
兵庫県では、ちょうど氷ノ山より東側に広がる辺りのシカ害がひどいようです。
シカが増殖し、シカが好む植物から先に食べられていくと、植物相が単純化していくのは誰でも解ります。
シカの分布度と最終的に見つかるチョウの種類や数などは完全に反比例しているように思えます。
しかし、なぜシカがこれほど増えるようなことが起こったのか、後の総合討論でも疑問が出るほどなのですが、この鱗翅学会では手に負えない問題です。
この後、中国地方の発表もありましたが、発表方法に不備がありすぎて聞いていられませんでした。ただ、最後の一言、「身近なデータを集めて整理(して発表)する」という"Act locally精神"には納得させられました。
四国では植林率が最も高くなっているようです。そして、限界集落(65歳以上の人口が50%を超える集落)率が27%とも。
最初に述べたとおり、管理された里山で生きてきたチョウやガには、それが必要です。しかし、限界集落(=若い人が生活できない)ではそれが管理されず荒れていくことになります。即ち、高齢化、衰退化していく農山村や地方都市でも、チョウやガの減少も必然というわけです。
さて、ふうたろうの友人、…とは言っても今回初めて顔合わせする人なのですが、九州ブロック(沖縄だけど)の発表です。まあ、調べれば解ることなので実名を出してもいいのですが、とりあえず控えておきますか。
彼女の発表はかなり政治を前面に出した発表です。何しろ、高江のヘリパッド建設問題ですから。米軍基地がらみですからね…。
しかし、これこそふうたろうがいつも山に登って身を震わせることです。彼女の発表はふうたろうの思いでもあります。それは単純に美しい景観が潰されるから、というだけではありません。
そもそも、成り立ちが理不尽ではないか。なぜ、アメリカ軍が沖縄に居る必要があるか。まあ、殆どの人は「防衛のため」と思っているでしょうけども。
ん?チョウの話ではないのか?
彼女はチョウの調査をして歩いていますが、「防衛」を理由にたたきつぶされている森や動物たちのことを訴えているのです。
はいはいサヨク乙
…という声がどこからともなく聞こえてきそうですな。
でも、少なくとも今の国民世論からだと、沖縄の米軍基地問題が解決することはないと思います。ましてや、たかが動物、と言われておしまいでしょうな…
彼女があえてここで訴えたのは、虫が好きでもその虫が何らかの理由で蹂躙されても、行動(発言)に移行しない虫好きが多いから、だと思います。
ふうたろうは虫好きではないけど山好き。虫を山に置き換えればどうでしょうかね。開発で潰され、放射能に汚染され、ゴミで埋められてゆく山を見たら。
まあ、ふうたろうが見ている敵はあまりにもデカすぎますから、せいぜいゴミ拾いするのが限界ですけどね…。確固たる支持政党があるのもまた、救いですかな。でも、正直、人間の可能性を信じ切れるほど楽天的にもなれない。
最後の発表は青森県から。
ナガバノシロワレモコウ(バラ科ワレモコウ属)の花に卵を産み付けて生きているゴマシジミというチョウの話です。
実はこの人もかなり政治色が強い発表をしています。ただ、どちらかというと、大勢を占めている発言に対してもの申す、的な感じがする…。
たとえば、原発の敷地内の植生を保護するための覚え書きを東北電力と交わしたために、原発敷地内ではチョウが保護されている。でも、原発がなくなったらどうなるのか、みたいなことを言ってみたり。
今ひとつは、竜飛岬に建設された風力発電によって、その岬に生えていたナガバノシロワレモコウが駆逐され、ゴマシジミが居なくなったという話。風力発電の建設という「開発」の圧力と、風力発電そのものの風の変化による圧力があるというお話です。
まるで、原発の話と合わせると、「反原発は必ずしもエコではない」という話に誘導しているのではないか、とさえ勘ぐってしまうほどですが…
風力発電所の建設がゴマシジミの寄主植物(ナガバノシロワレモコウ)をその場で蹂躙したのは確かだとは思うけど、生息そのものを脅かしたのは本当に風力発電のせいだけなのかは、正直疑問でした。
ま、ふうたろうは今日は既に3回も質問飛ばしているので、やめとこう(汗
というわけで、全日程終了しました。総合討論ではシカのことなど討論となりましたが、シカの専門家なんて一人もいませんし。ヘリパッドも風力発電も、なかなか根の深い問題ですから、たかが50分程度の総合討論ではどうにもこうにも…
で、終わった後の懇親会は5000円かかりますが、ふうたろうは何の後ろ盾もないくせに参加しました。ただの揉め事生成装置のくせに。
しかし、約2時間で6人ほどの人と交流でき、満足です。揉め事もなかったし。
で、ここで終わればいいのですが、帰りの電車から、お約束の具合の悪さが襲ってきました。まさに悲惨の極致でして。明日は斑尾山(長野県)に行こうと思っているのに、どうするんだと。
でも、今日の鱗翅学会自然保護セミナーは、行って良かったね。ふうたろうに絡まれた人々はどうだったか知らないけど、ふうたろうは楽しゅうございましたわ。
天気:くもり、霧雨降り続く(東京都文京区・板橋区)