花の咲かない果実
無花果。
こう書いて、「いちじく」です。実はこの漢字(当て字だろう)、まったく逆の理解をしています。花が咲かない果実ではなく、果実ではない花なのです。
割ってみたら、中に、蕾か花のようなものがびっしり。いちじくのにおいが好きではないので、あまりじっくり見たこともなかったのですが、変わった植物だと思いました。
果物といっても、果実じゃなくて、花でした。いちごも、あれは果実ではないのです、一応。食べる赤い部分が、種を包んでいるわけでもないですから。
…ものの分類はとても奥が深いですね。
今日、やっと『毒と薬の科学』を読み終えました。今日読んだところは、無機物の毒。水銀は有機化合物の形でも存在しますが、重金属の毒として、無機物の毒。
今まで、ずっと有機化合物の毒を追いかけてきました。この本の中身もそうだったけど、僕自身がそうでした。でも、よく見てみると、重金属の毒性というのも奥が深そうで、面白そう。電子配置とか、属とか、何か法則性があるのでしょうか。カドミウムはカルシウムと置き換わるというけど、なぜカドミウムなんだろう。
あと、有機か無機かボーダーラインの、二酸化炭素とシアン化物。一応、中学や高校ではこの二つは無機物と習いました。
…が!よく考えてみたら、分子や原子は、自分で「私は有機物であなたは無機物」などと名乗るわけがないのです。形而上学的に、人が分けただけの話でした。
二酸化炭素は、例えば、容易にカルボン酸(例:酢酸や乳酸などのこと)を作ります。シアン化物も、桃などの種にアミグダリンとして入っていて、アミグダリンから青酸(青酸カリの、青酸)が生成します(毒です!)。
有機物と無機物は、容易に行き来できる間柄。毒・薬の関係と同じように、分けることなんてできないのだ!
あと、今日、職場で主任に一言聞かれたことがありました。
「あのさ、毒の定義って何?」
「人の体に不都合な物質。」
…最初にこう返したものの、的を射た回答ではありません。正確には、「人の体に不都合な作用。」ということでしょう。物質は、自分を「毒」や「薬」などとは呼ばないのだから。ただしかるべき反応をしているだけですもの。物質が毒なのではなく、その物質のもたらす結果が毒なのでしょうね。
例えば、青酸カリは、胃酸と反応すると、青酸を生成します。
これは、何も、胃の中で起こらなくてもいい現象で、ビーカーの中でも起こせます。
次に、HCNが、再びシアン化物イオン(CN–)になり、細胞に吸収されると、細胞がエネルギーを作るのに使っているシトクロムという鉄を含んだタンパク質と反応します。
これも、なにもシトクロムと反応しなくても、鉄イオンとシアン化物イオンがあれば、同じように起こる反応です(シアン化物イオンの数は6個になるけど)。
弁証法的唯物論という哲学。まさにこういう思考をするためにあるような哲学です。ある物質を、その化学的性質を無視して毒だの機能性物質だのいうのは、観念論的であり、形而上学的であるのかも知れません。
これは、色んなところで言えることだと思います。生物か無生物か。障害者か健常者か。男か女か。…視点次第で、ずいぶんこの境界は曖昧になるのです。
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