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世界は一つ

2007年 9月 27日



 今日の仕事は大変でした。稼働できる最高の数である8本の油脂分除去作業を、今日は12本。1.5倍です。2人がかりで10~18時までかかりました。蒸発という現象について、発見がありましたが、それ以上に、終わったらけっこう疲れていました。
 写真は、とある果物の種です。下段左は割った直後、下段右は割ってから30分くらい経ったものです。フェノール化合物が、おそらく、キノイド化合物になったものだろうと思います。いわゆる、褐変反応。

 で、今日は、帰りに『日本の科学者』9月号を読んでいました。
 その中で、『日本の食と農と社会をめぐる諸問題』と、『海をめぐる諸問題と我々の将来』を今日の感想文とします。


『日本の食と農と社会をめぐる諸問題』:宮村重光
 食糧自給率がなぜ下がったのか、どうやったら上がるのか。そんなことを考えさせられました。
 自給率の低下は、現代人の食生活の変化、農業のやり方の変化、などを上げる立場が多いようです。しかし、僕がかつて聞いたトンデモ発言は、農業専門学校出身の普通大学農学部編入者の口から出ました。
 「日本の地図見てみろ。家ばっかりだぞ。」
 …曲がりなりにも元ワンゲルのキャプテンをやっていた僕に、地図で説法した人はこの人が最初で最後でした。
 ま、こういうのは論外としても、食生活が変化したため、米を食べなくなり、パンやお菓子をたくさん食べるようになった、というのは、正しいかも知れません。この著者もそれは認めているし、僕も、その事実は認めないといけない。甘いジュース飲んだだけでその分食欲が無くなるのは、生理学的にも正当だから。
 で、だいたいの人がここで思考停止して終わり。「じゃ、僕らが毎日もう一口分ご飯を多く食べれば済む。」なんて話が出るくらいですから、停止ぶりは凄い。
 本来なら、「じゃ、何で食生活が変わったのだろう」とか、筆者が中心命題として述べている農業生産に対する国策や食料輸入に対する国策はどうなのかなどの考察が次に展開されるのが、普通だと思う。
 僕は宮村氏の論文を見て、知らなかったことがいくつかありました。まず、今の米の収穫量が、1993年の冷害の時のそれよりも少ないこと。そして、農産物生産の選択的拡大(一部のものを大量に、一部の地域で作る、という意味だろう)が、政策として為されてきたこと。
 高冷地のキャベツ(長野県)、ブロッコリー(埼玉県)などは、何年か前、生産過剰と供給の不足が波状に押し寄せたことがありました。僕ももう5年も前のことになりますが、地産地消のことを考えたとき、大量生産地から全国の消費地に運ぶ体制に疑問を感じていました。当時の恋人は「ふうちゃんそれはしょうがないよ。」だったけどね。それに、これだけ小麦製品が出回っているのに、小麦の自給率は13%程度です。これは、小麦を海外からの輸入に頼る政策をとったからでした。どこがしょうがないんだろう?小麦の研究者は国産小麦のグルテン量の改良を研究していたのに、当時は利用されもしなかったという。今更になって、国産小麦の需要は増えたけど、国産100%のパンなんて、どこに行ったら買えるのやら。

『海をめぐる諸問題と我々の将来』:木暮一啓
 いきなり、「私は宇宙科学が我々人類の生存自体に密着し、将来の問題を解決してくれる学問領域とは思えない。」と述べたときは、驚きましたが、でも、ある意味、納得のいく意見でした。宇宙に対する予算は海洋に対するそれの10倍だそうです。もっとも、宇宙産業は部品や機械そのものが高価だろうから、予算だけで比較はできないだろうけども。
 ともあれ、確かに、宇宙よりも、遙かに海の方が密着しているし、地球環境や食糧資源の問題を考えても、日本はもっと研究に力を入れるべきだとは思います。
 あと、筆者の意見の中に、「海洋学は他にこれに匹敵する分野が考えられないほどの巨大科学といえるだろう。」とありました。
 …僕は、どの学問も同じだと思います。世界は一つ。海洋学は確かに筆者のいうとおり、海洋をめぐる問題の幅広さからも、巨大科学ですが、専売特許じゃない。農学も、家政学も、福祉学も、教育学も、奥深いぞ。冗談じゃないくらい。同じ世界の中で起こっている現象を、どうして分断して扱えようか。僕は、この世界が一つの科学だと思っています。数え切れないほどの現象が、数え切れないくらいの組み合わせで、数え切れない新たな現象を作り、数え切れないさらに新たな組み合わせと新たな現象を作っているのです。卒論発表会や、学会発表などに一度でも足を運んでみたら、自分たち(人間の知恵)がどれだけ狭くて浅いかを突きつけられます。現実はそんなに甘くないっす。…もちろん、その分燃えるけどね!

 …というわけで、やっぱり科学は素晴らしい。もっと色んなことを見聞きし、解りたい。取っつきやすいところから、ね。食糧問題や、海の話は、僕の大好きな分野の一つ。科学的に洗練された話は、心をたぎらせます。宮村さんと木暮さんに感謝!
 でも、何度もいうけど、年数十万円も一つの論文購読に払えるかっつうの!科学図書館を、もっと身近にして欲しい。取手市の図書館に、せめて、化学とか生物学などの、代表的な最先端論文の購読が1冊くらいはあれば良いのに。そういうのは、大学にしか置いてない。

天気:くもり時々晴れ(東京都板橋区・茨城県取手市)

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