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n-3系?n-6系?―トリビアの夕暮れ

2007年 11月 10日

 一週間前、あれだけ天気が良かった蓼科山。遙か遠い昔のことのようです。
 今日は、ずっと雨が降ったり止んだりの天気で、外へ出る気力すらもありませんでした。夕方に、ストーブとゲームの悪のオーラにいぶし出されるように、生協まで買い物。鶏レバーをオーダーしていたので、それを買って、明後日の朝にでもしぐれ煮にして食べてしまいましょう。
 で、今日の写真が今までに輪をかけて手抜きなのは、せっかく外出したのに、カメラにメモリカードを差し込むのを忘れていたからです。きっと、ゲームで頭がバカになっているのでしょう。
 更に、くだらない話を今日はします。以下。

 夕方、生協から帰ってきて、麦飯と昆布とピリ辛なめたけと鰤大根(やっと完食)を食べながら、ふと、n-3系(またはn-6系)脂肪酸というものを思い出しました。
 ところで、鰤大根汁は煮こごりになって固まってはいても、レンジで温めるとすぐに溶け出します。これは、脂肪が固まっているのではなく、魚のゼラチン質が固まっているのです。要するに、タンパク質。健康オタク化すれば、この汁はコラーゲン汁なのでズバズバ飲まなくてはいけません。ましてや、味噌煮なら、大豆のイソフラボンで…!という具合に。
 僕は、コラーゲンにもイソフラボンにも(臨床栄養学的な)価値を見いだしていないので、汁は殆どすすりませんでした。気になったのは、表面に分厚く浮かぶ油の膜です。
 魚の油なので、連想するのはEPA(エイコサペンタエン酸:Eicosapentaenoic Acid)DHA(ドコサヘキサエン酸:Docosahexaenoic Acid)やα-リノレン酸とならんで、必須脂肪酸の中の、n-3系といわれる脂肪酸です。
 前から、IUPAC命名法ではカルボキシル基側から命名するのに、なぜ逆から数える命名を、栄養学界は採ったのか不思議に思っていたのです。n-3というのは、カルボキシル基側と反対から数えて3つめと4つめの間に二重結合のある不飽和脂肪酸のことです。
 生化学辞典、生化学の教科書、有機化学、栄養学の教科書、などを、悪いオーラを出しているストーブとゲームを左右に挟んで眺めていました。結果的には、なぜ後ろから数えるのかの答えは見つかりませんでしたが、どうも、n-3とn-6という場所にある二重結合を、ほ乳類(魚は含まない?)は作れないのだそうです。NADH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)と酸素を使って、ステアリン酸(炭素数18、カルボキシル炭素を含む)からオレイン酸(同じく炭素数18、カルボキシル基側から数えて7個目と8個目の炭素間が2重結合、カルボキシル炭素を含む。もちろん、シス型を合成することはできます。

『カラー生化学』(西村書店)504ページ

 Δ9不飽和化系に加えて、哺乳動物細胞はΔ5およびΔ6不飽和化酵素をもっている。

 …そうです。Δという数え方は、カルボキシル炭素を含めて数えたカルボキシル基側から炭素の数を数えることです。そして、この『カラー生化学』にはこうも書いてあります。

『カラー生化学』(西村書店)504ページ

 哺乳動物は、Δ9を超えて二重結合を脂肪酸鎖に導入することができない。そのため、リノール酸(linoleic acid, 18:2cΔ9,12)とリノレン酸(linolenic acid, 18:3cΔ9,12,15)をどちらも合成できない。これらは食餌によって供給されなければならない必須な脂質成分であるために、必須脂肪酸(essential fatty acid)とよばれる。

 数字は、左から順に、炭素数、二重結合の数、カルボキシル基側から数えていて、何番目の炭素(カルボキシル基側を指す)に二重結合がついているか、を表しています。
 …説明からすると、やっぱり、カルボキシル基側から数えた方が便利みたいです。少なくとも化学的には。ただし、エイコサノイドといわれる生理活性物質群を分類するには、後ろから何番目が二重結合であるかが重要なようです。それでも、化学的な分類で事足りるなら、その方がすっきりすると、僕は思っています。たぶん、n-1とかn-4とか生物学上ありえないから、そうなっているんだろうと思います。
 それならば、任意の場所に二重結合を持たせた脂肪酸を摂らせたら、細胞および生物はどういう挙動を取るのか、トランス脂肪酸の挙動と併せて興味があります。
 余談ですが、このエイコサノイドを作るためには、脂肪酸を酸素分子で酸化させます。空気中での脂肪の酸化は悪でしかないのに、見事なものよ。
 というわけで、今日は脂肪酸の伸張と、不飽和化についてちょっと学びました。エイコサノイドについては、奥が深そうなので、後日。
 また余談ですが、脂肪酸の伸張は、脂肪酸の酸化(β酸化)の逆反応ではないそうです(解糖は、ほぼ逆反応)。こちらも本当は奥が深い。
 とりあえず、トリビアの夕暮れ。

天気:雨時々止む(埼玉県所沢市)

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