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雪の砂漠(剣山:徳島県)

2007年 12月 31日

※記録:2008年1月5日

 明け方は一時星さえ見えていたのに、出発の8時前頃はこの吹雪。剣山の測候所があったところだそうです。今はアメダスのデータにすら出てきません。


 頂上へ続く道は木道になっています。強風で木道に積もった雪は吹き飛ばされています。


 #31剣山。展望はおろか、猛吹雪で目の前さえも視界が怪しい。厚い雲が周囲を覆っています。


 剣山から三嶺(みうね)方面へ縦走を始めます。尾根であることだけが殆ど目印です。積雪は膝くらいまで。


 雪に溺れそうな木が少しだけ頭を出しています。もうじき雪に埋もれるのでしょうか…。


 本来なら、晴れていたなら、この稜線はシコククマザサの展望の良いところのはずです。…が、この雪では路面も空もホワイトアウト。


 稀に雲がちぎれて晴れ間が見えることがあります。希望の光が少しだけ見えます。でも、それはつかの間です。


 次郎笈(じろうぎゅう)を登るにはあまりにも雪が強すぎました。だからといって良くはないのですが、トラバースします。樹氷と吹きだまりの道。ここで一度わかんにつまずいて2mほど滑落しました。


 西に進むにつれて、雪の厚みと重みが増してきます。着雪で垂れ下がった木の枝。風が吹けば音もなく雪の塊が降ってきます。普段は茶色に見える木も、この雪の中では黒にしか見えません。


 見えているのは丸石というピークです。一つ目の避難小屋がもうすぐのはずです。展望も良いし、もうすぐでしょう?


 丸石まで600m。さくさく歩ければ20分くらいです。


 ここでもう昼です。ちょっと出発は遅かったのですが、既に4時間以上経過しています。地図で表記されているコースタイムは…。


 本当の地獄はここからだったかもしれません。600mがどれだけ長いかを知らしめられました。さっきの立て札から積雪量が一気に腰にまで達しました。膝上まで積雪がくると、途端に足が上がらなくなります。昨日折れたストックで雪をかき分けながら、ラッセル車のごとく進みました。


 600m進んでこの丸石。2時間を要しました。雪の砂漠がこれほど恐ろしいものだとは思いませんでした。もちろん、ホワイトアウトの中です。


 いくら歩いても全然進まない自分にイライラが隠せません。荷物が重い、風が強い、全身が濡れる、展望がない、あらゆることにイライラがたまります。
 しかし、この樹林、風や雪を防いでくれます。初めて樹林をありがたいと思いました。


 亡霊のように歩き続けて、丸石避難小屋。1時間50分のところを7時間かけて歩いたのでした。
 荷物が重いことに加えて積雪量の多さが、これほどの遅れをもたらしました。何より、判断ミスです。おとなしくピストンで剣山を下るべきだったのです。


 かくして、避難小屋で本当に避難することになりました。外気と変わらない-12℃の小屋の中で、14時間の夜を過ごさなければなりません。金属製の水筒を直火で温めて湯たんぽ代わりにし、寝袋にくるまって過ごします。小屋の床に置いてあった水筒の水は音をたてて勢いよく凍っていきます。今までありえなかったことに、レトルトのカレーまで凍っていきます。もちろん、濡れた帽子や手袋は冷凍ほうれん草のようです。
 湯たんぽと-15℃対応の寝袋のおかげで寒いと感じることは殆どありませんでしたが、長い夜が辛い。携帯電話は温度が低すぎて具合が悪いようです。一人きりの夜。しかも、大晦日です。去年といい、今年といい、とんでもない年越しになりました。
 明日は、雪の砂漠から撤退します。

天気:雪、強風を伴って強く降る(徳島県美馬郡木屋平村・那賀郡木沢村・木頭村・三好郡東祖谷山村)

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