Home > ふうたろう旅日記 > 雨、風、雪、岩(剣山つづろうコース:徳島県)

雨、風、雪、岩(剣山つづろうコース:徳島県)

2007年 12月 30日

※記録:2008年1月4日

 ビジネスホテルふじ。昨日はあまりに遅い到着(22時半)で、女将さんも併設のバーで待ちくたびれていました。そして、今朝の早出で、女将さんもまだ起きていないのかもしれません。鍵をこっそり置いて、出発。6時16分のまだ暗い「貞光北町」バス停へ。
 不吉さは昨日の姫路駅にもまして、今朝の激しい時雨で訪れました。僕一人きりのバスに、運転手さんも「どうせ誰も乗らないからゆっくり座ってて」の大風呂敷。
 そのバスに揺られること小一時間。剣橋バス停止まりのバスが終点の剣橋で840円を請求しました。意外と安い。ここから葛籠堂(つづろうどう)がある「つづろ堂」バス停まで、次のバス便なら運行されます。でも、それを待ちきれないから、始発。
 剣橋に着いた頃は、小雪が舞っていました。


 これがどうやら葛籠堂のようです。葛籠は「つづら」と本来読むようですが、なぜか、「つづろ(う)どう」と読むらしいです。その理由はわかりません。剣橋から42分。


 さあ、登りますよ。硬い登山靴が登山道に食い込んでいきます。


 剣橋付近ではまだ積もっていなかった雪でしたが、登山道にさしかかった途端、厚みが出始めました。集落が未舗装の道沿いに何軒かあります。


 早速ここで道迷いです。登山道が写真中央下にある索道で分断されています。この索道を右に行くと、上の写真の家に行き着くので、索道沿いに進みすぎないようにします。
 結局、ここで1時間くらい迷いました。


 水場のようです。既に時は10時前。水場のあるところで、ラーメンを作って食べてしまいましょう。


 よく見たら、水面に青空が反射しています。幸先が良い!


 丁寧な道標。ここで夫婦池まで半分だそうです。時刻10時13分。道迷いがなければ、順調な時間配分です。


 崩れた崖があります。はて、登山ルートを見失ってしまいました。


 むむっ!雪雲が近づいてきましたぞ。これは危ないかもしれない。


 登ってきた崖は、たった数十分の間に真っ白になりました。更に悪いことに、2日前の低気圧による雨で、路面が凍結。アイゼンを履かずにこの崖道に迷い込んだ僕は、22kgの荷物を背負いながら、後ろにも前にも進めなくなりました。アイゼンをリュックから出そうとするも、足場さえ不安定な凍結急坂に為す術無し。少しバランスを崩せば滑落は必至でした。
 緊急避難命令発令。荷物をこの崖から下に捨てました。ものすごい音をたてて10mほど落ちた後、岩陰に消えました。きっとそこで止まったのでしょう。
 でも、この猛烈な雪の中であの大きなリュックが見つかりません。ふと見れば、更に50mくらい下で、木か岩に引っかかったリュック。カメラ用の三脚を途中で離脱させていました。傷だらけになったリュックの中に、水筒は穴が開き、マップケースが大破していました。
 このとき無理に登っていれば、僕がこのリュックと同じことになっていたのです。そして、後で恐るべきことが解ります。


 見失ったルートは、見失った場所に戻って探すのが基本です。傷だらけのリュックを背負って、ルートを何とか確保。何とかと述べましたが、写真のように、ちゃんと見れば解るルートです。何を焦っているんですか?


 何とか夫婦池の雄池まで行くことができました。もう既に10cmくらいの雪がここで積もっています。雌池の方は道路を挟んだ反対側でしたが、さっきのリュック大負傷付きの道迷いで2時間を浪費してしまったので、通過しました。


 夫婦池から見の越(みのこし)まで国道歩きです。アスファルトは真っ白の雪に埋もれています。アイゼンがちゃきちゃきいっています。


 見の越にある神社から剣山へ取りかかります。このあたりから、風が強烈になります。いよいよ、あの凶悪な寒波が牙をむき始めました。


 液体の水を屋外で見られるのは、この神社が最後でした。しかし、冷たい水に触れるほどの体力と気力がありません。この吹きさらしの場所からいち早く移動したい一心です。ホテルで汲んできた水だけを頼りに、これから進みます。


 雪は断続的に、しかし溶けることはなく、積もってゆきます。さっき歩いてきた国道もきれいに雪が積もっています。まだ木までは雪まみれにはなっていません。


 太陽の光はそれなりに明るく、雪におぼろ。足下程度の積雪は何の苦もなく歩きは軽快です。


 クマザサの群生。雪は一時止み、心の荒れも止みました。


 雪の路面に差す光は美しい。雪道のすばらしさの一つです。写真ではなかなかでないのが残念です。


 今日の終点はこの場所。西島野営場です。しかし、広がるのは雪原というか、風雪に吹きさらされる見通しの良い場所で、ここでの野営は辛いと思われます。


 実は、買ったばかりのストックがこれです。さっき大破したのは水筒とマップケースだけではありませんでした。この右のストック、頭が完全に折れています。改めて、さっきの道迷いのおぞましさが解るでしょう。


 野営場の側に、頂上ヒュッテの営業案内の看板がありました。ちょうど今日30日から営業しているとのこと。上に青い屋根の小屋が見えます。あのあたりにあるのでしょう。まだ15時過ぎだったので、野営をやめて小屋まで行くことにしました。少しでも進んでおけば、明日以降の行程も楽になるでしょう。


 野営場までの天気は、剣山のこれからの天気の参考にはなりませんでした。小屋に近づくにつれて、樹氷が見られるようになりました。また、吹雪も一段激しく。寒気は本格的に制空権を握ったようです。


 お疲れさまの言葉で、親戚一同で商っている小屋で僕一人を迎えてくれました。設置されている温度計は-11℃を指しています。野営など簡単にする環境でないことを教えてくれます。
 頂上ヒュッテについては、また後日述べます。
 21歳と18歳の若い男の子たち(経営している側)と喋って過ごしたり、『岳』というコミックを読んだりして、消灯の21時まで過ごしました。21歳の彼は就職活動中で、ここまで来て漢字の勉強をやっていました。がんがれ。

 天気予報は、凶悪な寒気が制空権を握ったまま元日まで居座ることを告げていました。西高東低の教科書とも言える天気図に、ひっくり返りそうです。さて、大晦日の運命や、如何に。

天気:雪、強風を伴い一時強く降る。貞光町では雨(徳島県美馬郡貞光町・一宇村・木屋平村・那賀郡木沢村)

Comments are closed.