動物の足跡を追って(日光女峰山:栃木県)
死闘から一夜明けた朝。唐沢避難小屋の前の広場は、思いっきりガス。
唐沢避難小屋の全景。1Fの扉は雪で埋まっているので開きません。
僕は2Fから出入りし、2Fで真っ暗な夜を過ごしてきました。
…おかげでけっこうぐっすり眠れました。
昨日はなかった樹氷ができ始めています。天候は荒れそうな予感。
当然水場は埋もれています。真水は既に底を突いています。そういえば、昨日の遭難の時、空の水筒をひとつ失いました。
死闘はまだ終わっていません。これから、このガスと雪の中を、日光市街地まで下りるのです!
道標は確かにこの方向ですが、急峻で雪が深くて、歩きづらい…。
でも、少しすれば、木がなくなっているところもあります。きっと、青い空だったらきれいなんでしょうね。今日の朝霧もまた乙ですが。
今日のコースは、迷う心配はまったくありませんでした。ちゃんと雪に埋もれないような場所に道標が打ってありましたから。
僕の歩いてきた道。僕の足跡以外、人のものと思われるものはありません。
大きな谷に砂防ダム。向こうには針葉樹とカンバ類の混合樹林。濃密なガスがそれらを覆っています。
立ち枯れた木の多いルートでした。マツクイムシにやられたのでしょうか。時々キツツキの音らしきものが聞こえてきます。
…っていうか、キツツキがマツクイムシを食べるのかどうかは知りません。
今日は淡々と下りてきていますが、けっこうガスの雰囲気がいいのですね。晴れたり曇ったりで、飽きが来ない。
林冠を隠すように覆ったガスが、僕は好きです。
下界に出たような気分にさせる柵があります。
でも、まだ半分も来ていません。
一時、ガスが薄くなり、晴れました。見えているのは大真名子山だと思います。晴れていれば、目指したかも。
おっ!
人の足跡だ!!!
…
……
………
と思ったけど、実は、シカの足跡でした。
シカの足跡を追っていたら、ルートを失うところでした。左奥に、人が通るルートがちゃんとあります。
ケルン?この辺の岩に紛れてさっぱり気が付きませんでしたが、その向こうの立て札と道標のおかげで助かりました。
さて、日光市街地に向かって、10kmくらい歩きます。…いや、もっとあるかな。
昨日から気になってはいたのですが、倒木が多いのです。しかも、折れたばかりという感じの。
台風とかでしょうか。
開けた谷と雪原。下界は春の陽気なのに(僕の部屋以外は)、まだここは早春賦の歌が相応しい。
シカの足跡。そこら中にあります。そして、決まって、フンの塊がっ!
動物って、非常に合理的な歩き方をするなぁ、と思ったところです。最短で、奴らの後は、悔しいけどけっこう歩きやすい。
轍…?
下界からはけっこう距離あるぜ…?
なお、ここより上、僕が歩いたところにはありませんでした。
初めての人の気配。
雪原は突然無くなりました。登山ルートに少し残るくらい。アイゼンを外してリュックの横に掛けて下りました。
ここで、裏見の滝と寂光の滝に分かれます。どちらへ行っても今後のコースタイム的には大差なさそうでしたが、今日は寂光の滝目指しました。
スズメノヤリ(イグサ科)だと思いますが、露を被ったのがまた何とも…。
霧の中に浮かびくる、寂光の滝。あの分岐から猛ダッシュで1時間以内に下りてきてしまいました。
これは同じ場所を、撮影方法を変えて撮ったものです。
左にあるような写真を心霊写真として扱っているようなのを、先日見かけましたが、全くのでたらめです。
ここは、非常に滑りやすい、寂光の滝近くの神社の階段。そっちの方が怖いわ!
登山道を抜け、車道歩き。まだここでも濃いガスが。それに、下りてくればくるほど(時間が経てば経つほど)、霧雨がきつくなってきました。
殆どの人が、この写真を上下に見ていると思います(IEだとそうなるようです)。Built on "Opera".
このような古びて、壊れて、放棄された建物が、寂光の滝以下、国道120号線まで(県道194号線)、かなりの数ありました。
下りてきてから、速攻で帰りました。ちょうど良いバスと電車に当たったので、駅弁を買って。
無添加だと店員さんも言っておりましたが、たぶん、キャリーオーバーという言葉を知らないだろうと思いながら食べました。
そこそこ美味かったけど、駅弁にしては。
というわけで、道も天気も下り坂だった今日は、意外とあっさり。国道120号線に着いたのは12時20分。6時間かかったものの、きつかったのは最初の急坂と最後の県道194号車道だけ。
霧のかかった風景は思いの外楽しかったし、基本的に人以外の動物の気配しかしなかったし、気楽でした。
…ちょっとドライすぎたかな。昨日の死闘の印象が強すぎたか。
そして、2度目の女峰山、クリア。
天気:くもりのち雨(栃木県日光市・埼玉県所沢市)