銀色の秋(鷲羽岳・黒部五郎岳~双六山荘:富山県他)
明くる朝、天気はどうなっていたでしょうか。
ここは三俣山荘前の広場。雪で一面覆われているように見える、暗闇。
例に漏れず1時間ごとに目が覚めたので、その都度空の様子はチェック済み。
「まだ雪、止んでないのかよ!」
と思ったら、さっき確かめてからまだ1時間しか経っていなかった、という話。
そんな夜の間に、空は快晴になっていました。
三俣蓮華岳が薄明るくなってきました。どうやらかの山も雪に覆われているようです。
ところで、ふうたろうはどこにいるのでしょうか。
三俣蓮華岳を背にして、鷲羽岳(わしばだけ)に登っています。三俣山荘から目と鼻の先の鷲羽岳。
鷲羽岳の岩にビッシリと積もった雪。風も上に行くにつれて強く吹いてきます。
登っている間に夜が明けました。あっという間に雲が湧いてきました。
鷲羽岳を越え、水晶岳まで向かおうとしていましたが、その水晶岳はあの竜の巣の中。猛烈な風が吹き荒れて、視界も悪そうです。行けたもんではありません。
黒部五郎岳が見えます。それどころか、鷲羽岳は360度の大展望です。
水晶岳が見えたと思ったこの山は、ワリモ岳。アイゼン無しにあの凍った岩山に向かうなんて自殺行為だ!
鷲羽岳です。とっくに山頂には着いていましたが、とりあえず、雲が覆わないうちに写真を撮りまくると。
風が強く寒いので、下ります。実はふうたろうの後を猛スピードで追いかけてくる人がいて、頂上ではふうたろう併せて3人でした。その猛スピードの彼は下りも猛スピードでいなくなりました。
ふうたろうと一緒に着いてくるのはあのブロッケンくらいです。しかし、あまり写っていませんね…。
この日は意識しなかったけど、見えているのは穂高連峰と、槍ヶ岳に続く西鎌尾根など。
谷を覗いてみたら、やっぱりまだ下の方は雪景色ではありません。
朝も7時くらいになったので、小屋泊まりの人たちとかが登り始めてきたようです。
鷲羽岳への道。このトラバース気味のところが、ちょっと危ないんですよね。特に凍結しているときはDangerous!
三俣山荘からハイマツのヤブというかトンネルを抜け、テント場に戻ります。何気に、小屋にしかないトイレに行くときとか、かなーり不便なのです。
テント場は水場がすぐ側です。
水に口づけしてグビグビやりました。
三俣山荘のテント場を出る頃には、天気がかなり回復してきました。見てのとおり、鷲羽岳とワリモ岳ははっきり。水晶岳の方はまだ少しアヤシかったようですが、時間の問題でしょう。
三俣山荘から黒部五郎岳に向かっています。三俣蓮華岳の巻き道を通っています。鷲羽岳の眺望が素晴らしい。
何を血迷ったか、これを白山と叫んでしまいました。白山がこんなに近いはずはありません。これは薬師岳です。
いつでもどこでも辛い、ハイマツヤブ。歩いていると、まずカメラが引っかかって、あらんかぎりの悪い事件が起こります。
このトラバースは、もうちょっと雪が積もるとものすごく怖いでしょうね。黒部乗越手前。
黒部乗越の分岐に、歩くのに必要な荷物以外を置いて、黒部五郎岳に向かうことにしました。少なくとも、これでここまで取りに戻らなければならないことになりました。
黒部乗越を見返していますが、小さすぎて見えません。
稜線から見える笠ヶ岳。焼岳方面より反対の、黒部五郎岳方面から見ても同じような形をしています。
なだらかなこの稜線はただの見かけ倒しです。この後が強烈だから。
銀色の道を歩いてきました。黒部乗越(三俣蓮華岳肩)から西に向かって歩いています。
銀色の気持ちいい稜線歩きが終わったら、岩ゴロゴロの雪まみれのおぞましい急坂を、無言で下りてきました。そしたら、黒部五郎小屋。バッジをゲットしたかったのに、閉まっていました。
少し休んで、お菓子を食べ、すぐに黒部五郎岳に出発。この山を残すと、また新穂高からの長い車道歩きを歩き直してこなければならない…。
この辺り、草もみじのままだけど、昨日の雪にはあまり降られなかったのでしょうか。
昨日の雪の気配は完全に消えています。なんか、季節が逆戻りしたような気分。
しかし、この笹原は気分が良い。
しばらくすると何事もなかったように樹林が途切れて、見晴らしが良くなります。
あれ?さっきまで晴れていたのに、ふうたろうが向かったら曇ってきたのはどういうことですか?
黒部五郎岳は、大きなカールという地形が広がっています。上の写真はそのカールの感じが伝わるでしょうか。
カールの中にはたくさんの沢があって、ビミョーに口飲みできないくらいの浅い水場になっています。残念。
黒部五郎岳の巨大なカール。ちょっと曇っていてコントラストが悪い。
太郎平方面。あちらもかなり大きいでしょうね。薬師岳に縦走するときはあそこを通ればいいようです。笠ヶ岳に入って、三俣蓮華岳と黒部五郎岳を越え、薬師岳を突っ切り、立山ムロドウに抜ける?
黒部五郎岳の最高峰に行くまで気は抜けません。ガレ場の稜線は非常に歩きにくい。雪もそこかしこにへばりついているし。
黒部五郎岳到着。ほぼ、昼になりました。さりげなく曇っているので薄暗いけど。
ここも360度の大展望です。曇っていなければ。
立山方面の大日岳などが見えているのでしょうか。ふうたろう、まだ登ったこと無いけど。
こんな北アルプスの奥にある黒部五郎岳なのに、たくさんの人が来ています。頂上ではみんなで盛り上がると。
稜線を下って小屋まで戻りたかったのですが、このとおり、ガスっているので、おとなしく元来た道を戻ります。もっとも、理由はそれだけでなく、解らない道を通って時間をかけたくなかったというのもあります。今日中になんとか双六小屋まで行きたいのです。
疲労がたまってきた2日目の昼。ふたたびこの稜線を通り、鬼ガレ場坂を下り、カールを駆け抜けます。
(゚Д゚;)
遠いッス。
しかも、三俣蓮華岳方面まで曇ってきました。
いくら空荷とはいえ、この遠さはシャレになりません。嗚呼、幌尻岳を思い出したぜ…。
カールをBダッシュで駆け抜けます。ガレ場、沢、ぬかるみ、氷、そんなのカンケーねー!!
小屋から山頂まで1時間40分、山頂から小屋まで1時間30分。
あれ?なんかおかしくない?
小屋のところで黒部五郎岳にて共に戦った(?)お互い単独の戦友でたたえ合って(??)、それぞれふたたび各自の戦地へ。
まずは、雪&ゴロゴロ岩のおぞましい坂を上り返さなければなりません。
おぞましい坂を上りきって振り返れば、黒部五郎岳はドンヨリ曇り空。
黒部乗越まで、ここまで来ればあと少し。
今朝は一面銀色だったこの辺りは、まだ10月の強い日差しで、ぬかるんだ黄土色になりました。
なお、この地点、くっきりと踏み痕が付いている方向へ、ヘタに進むと迷います。
南斜面の雪はよく解けていますが、北斜面は殆どきれいに残っています。
…荷物を黒部乗越でふたたび担いで、三俣蓮華岳を登ったのですが、どうやら写真を撮る気力さえほとんど無いまま、登りきったようです。
そして、猛烈にハラが減ってきたので、ここで辛ラーメンを食いました。嗚呼うまい。
で、三俣蓮華岳の山頂でゴールな訳ではないので、先に進まねばなりません。あの荷物を背負ったまま、あの名もない、三俣蓮華岳の南にあるピークを越えるのですか。ああ、そうですか。
ふうたろうが歩いているのは双六岳の稜線。見えているのは槍ヶ岳の稜線。景色は素晴らしい。
輪郭のはっきりした槍ヶ岳。ホント、スゴいなあ、アルプスの山は。
で、ふうたろうの歩いている稜線は、黒部五郎岳を歩いているときから気になってはいたけど、曇っています。でも、こういう明るいくもりは、却って幻想的でおもしろかったりもします。
双六岳は踏まずに行きましょう。三俣蓮華岳で既に16時前でしたし。これが300名山以内に入っていたら、通っていたかもしれません…。
雲が晴れ、表銀座と呼ばれる稜線が見えます。山では夕方になるとガスが晴れてくることがあるので、その一瞬を逃したくない。
双六岳の巻き道、中道ルートを通ります。くぼんでいるところを除けば、景色は良好です。
双六岳。いつかここに登に来る日は来るのかな。薬師岳などを笠ヶ岳から縦走しようと考えたとき、通るかもしれませんね。
双六岳の肩で3人くらい人が集まっています。カメラの望遠を最大にして撮影。たぶん、表銀座や穂高連峰を撮っているのでしょう。
晴れたり曇ったりを繰り返していた鷲羽岳も、夕日モードになりました。これはきれいに焼けそうですぞ。
双六岳の稜線もいつしか雲が切れてしまいました。あの稜線の向こうには、何が見えるでしょうか。
こんな写真を撮っている間に、後続が何人か行ってしまいましたよ。
こうして油を売っているから、12時間半行動なんてことになるのです。
というわけで、今日は朝焼けと夕焼けの一部始終を見たのでした。
双六山荘はまだか。
あと10分ほどです。
もうかなり暗いです。
暗順応しているのではっきり目では見えるのですが、写真じゃ辛いかな。双六山荘に、もう着きます。
いや、歩きました。鬼のように歩きました。
このあと、素泊まり料金5800円に驚いて、昨日も見たテント場にテントを張り、明日を思うのでした。明日はどこに向かおうか。笠ヶ岳か、そのまま新穂高温泉か。ちょっと待て、西鎌尾根経由槍ヶ岳なんてのもあるぞ。
その決断にはしばらく時間がかかりました…。
天気:晴れ時々くもり(富山県上新川郡大山町・岐阜県吉城郡上宝村・長野県大町市)
覚え書き:DS電池切れ