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至高のレッスン(赤牛岳・水晶岳読売新道コース:富山県)

2010年 9月 24日

 ロヒプノール1mg半割で、朝までぐっすり。小屋だからという理由もあろうけど、また、暑さ寒さもなかったという理由もあろうけど、快適な朝。そして、今回はなんと!生鮮野菜を少し持ってきているのだった!
 …まあ、アスパラガスだけなんだけどね。


 とりあえず初めての試みではありましたが、アスパラガス、茹ですぎました(滅


 さて、5時47分、奥黒部ヒュッテを出発です。同じ読売新道を登って双六か三俣山荘まで行くといっていた兄ちゃんは、ふうたろうよりだいぶ早く出発しています。


 雨、そういえば、雨はどうなった!?
 ここは読売新道8分の1地点。なぜか読売新道は8分割されています。
 雨はまったく降っていません。それどころか、昨日の夜、星も出ていたと思いますが。この辺りは深い樹林帯で、あまり空見えないのですよ。


 これを見れば、雨が降りそうな天気ではないと判りそうなものです。


 しかし、読売新道は、長く険しい道です。樹林帯も非常に長いので、持久戦です。
 でも、ふうたろうはこれくらいはもう大丈夫。突き進むことに快楽を覚え始めていますから。


 8分の2地点。読売新道コースの、昭文社地図にあるコースタイムは、何処を基準に3時間だの4時間だのを書いているのかよく解りません。
 ただ、この標を見るのはおおよそ30~40分に1度です。


 空の晴れ間はなくなってしまいましたが、概ね高層雲が覆っています。太陽がおぼろです。


 8分の3地点。7時48分。既に何処にいるのか解らない。樹林帯が深い。


 ただし、広葉樹が現れてくると、森の雰囲気も変わります。これを見て、嗚呼、秋なんだなと、思い出したものです。


 昨日までの雨で登山道は雨水にどっぷり浸かっています。ぬかるみもたくさん。靴泥だらけ。


 樹林の背丈が低くなってきました。まあ、気のせいかもしれないけど。


 8分の4地点。8時27分。木道が出てきましたが…


 樹林が草原或いは湿原に変わってきています。


 紅葉している木々がちらほら見えます。高い木はもうありません。


 歩いて3時間以内に樹林帯を抜けるのなら、南アルプス鳳凰山の中道や農鳥岳の大門沢のべらぼうに長い樹林帯と比べても甘いもんですな。


 8分の5地点。9時14分。ハイマツ地帯。この辺りから道が平坦になってきます。まあ、上りなのは間違いないですが、緩くなります(たぶん)。


 空は高層雲に覆われていて重い感じもありますが、裏銀座の山々がずっと左に見えていて、そこから雲が滝のように流れてきます。このおぼろ雲の微妙な張り出し具合が、この雲(雲海)を維持していたのかもしれません。


 ハイマツと灌木地帯。紅葉も若干あります。でも、まだ早い。今年は暑かったから…。


 ところで、今ふうたろうが目指している山を述べていませんでしたな。
 読売新道の長い上り坂の先には、赤牛岳があります。日本200名山で、その中でも最もアプローチの長い山として知られているそうです。
 そして、今見えているのが、その赤牛岳の西側に張り出している稜線です。


 赤牛岳方面を見上げています。展望は抜群ですね。これで空が青かったら…などと思っていますが、元々は雨の予報だったのがこれだけ見通しの良い高曇りなのだから、文句ありませんわ。


 読売新道も半分を超えると高山帯の様相です。このガレ場の水平移動は、上り下りよりも大変です。


 ザレた道になりました。視界を遮るものなく歩けます。


 8分の6地点。9時44分。裏銀座の山脈がよく見える8分の6地点。わざわざ赤牛岳のこの地点を好む人を、ふうたろうはネットで見かけたことがあります。何だか、その理由、判る気がします。


 そして、反対側を見れば薬師岳の縦走路だって見渡せます。この稜線、最高の稜線漫歩です。ただしふうたろうは上り坂なんだけどね普通はこの坂は登らないんだけどね。


 後ろを振り向くと、立山なども見えます。ただ、もうどれがどれだか…


 あの右の方に赤牛岳がドスーンとあります。う~ん…遠い…。


 ガレ場が断続的に現れます。


 そのガレ場の途中に8分の7地点。10時11分。


 ナナカマドの紅葉(しかけ)と赤い実。やっぱり北アルプスはもう秋なんですね。


 ふうたろうまっしぐら赤牛岳稜線。さあ、あと少しです。


 赤牛岳直前になると、坂が急になるので、逆に展望抜群になります。息苦しいかもしれないけど、苦あれば楽あり、ですぞ。


 赤牛岳近し。28個目の200名山(日本百名山100個を除いた100個の山)となることほぼ確実の山。


 山頂直下は崩壊した岩場。落石と滑落に注意しよう。


 ちょっとした足場に立って休憩。


 赤牛岳到着!10時48分。休憩入れて5時間1分でしたか。まあまあですな。


 赤牛岳に着いて初めて、次の山を見定めることが出来ます。
 でもまずは赤牛岳到達を祝そうではないか!あの200名山最奥とも言える赤牛岳に到達したのだから。
 ここでは久しぶりに記念撮影しましたな。


 さて、次は百名山91個目の水晶岳撃破に向けて出発です。
 …以東岳から見た大朝日岳ほどではないけど、遠いなあ。でも、あの右に折れる稜線との分岐(温泉沢ノ頭)まで2時間はかからんだろう。


 しかしふうたろう、いきなり道を間違えてしまった!なんでこんなに土に足取られてんねん!


 何か、近づいている気がしない。


 歩いているのに、歩いている場所の風景だけが変わっていく。この展望の良さは罠か。


 ガレ場の上下左右の移動が連発します。これは水晶岳撃破、楽ではない。


 時々道を踏み外した雲が稜線を横切っていきます。


 赤牛岳、かなり遠くなりました。だいぶ進んだ…はず。


 裏銀座にある、野口五郎岳。日本300名山です。今日、実はあれにも行こうと思っているんだけど…


 水晶小屋の分岐から延びているあの稜線を見ると、行ける気がしませんな。そもそも、温泉沢ノ頭が近づいてこないぞ!


 赤牛岳だけが遠くなっていく。


 温泉沢のガレ場。


 12時55分、2時間を8分もオーバーして、やっと温泉沢ノ頭に到着。この見かけ以上に長く険しいルートは、読売新道でビミョーにボディブローをくらっていた身体にこたえます。


 ところで、さっきから気になっていた、あの赤い屋根の小屋が、遙か下の平原にあります。あれは、高天原山荘です。ランプの小屋だとか。いつかあの高天原も旅をしたいものですが、今回は通りません。


 南西を向くと黒部五郎岳が見えます。去年10月11日、三俣からダッシュで踏んできましたな。


 さて、温泉沢ノ頭を越えると、今度はやっと水晶岳に照準を合わせることができます。


 ガレた道。


 ホシガラスがバタバタしています。たぶん、ホシガラス。がんばってカメラで追いかけて撮ろうとしたけど、やつは速かった。


 起伏が凄まじい水晶岳への道。さすがボスのダンジョン。


 岩場の向こうに薬師岳。


 高天原・雲ノ平・北ノ俣岳方面。


 (・ε・;)
 なんでハイマツを漕いでんの?
 いつの間にかふうたろうの後ろを歩いていた下山中の夫婦に、「そこ道まちがってるわ」と言われたのでした。
 …ええ、いくら何でも、こんなの道だなんて思いませんから。
 明確な踏み痕が見えなくなるガレ場は要注意ですが、何度も間違ってしまうのでありました。


 やっと更生しました。


 そして最後のガレ場。これを登ると水晶岳です。


 しかし、これが長いんだな、また。読売新道のボディブロー、そしてガレ場の上下左右移動にアッパーを食らっているので、もうぐったりなのですよ。これで雨でも降っていたら、もう最悪だったかもしれません。


 やっと登り詰めたら、何か見えていたピークはニセピークだったみたいで。何気に水晶岳、双耳峰だったりして。見えていたのは北峰だったりして。山頂の南峰は人がたまっているようです。
 何だか、この山の雰囲気、トムラウシを思い出しますな。


 遂に水晶岳に到達。14時9分。これから野口五郎岳に行く体力なんて残っていません。


 しかし、水晶岳に立つと、またその向こうの山々が見えてくるのですな。鷲羽岳は去年、積雪の中登りました。


 これは野口五郎岳。裏銀座の縦走はまたいつか、ですね。


 さて、水晶小屋が見えています。今日はあそこの混み具合と相談して、行程を終わるとしましょうか。


 ところで、水晶岳という名前は、その辺の看板に「水晶を持っていくな」と書いてあるように、水晶があるためなのですね。この白っぽいやつがそうでしょうか。


 結晶になっているように見えなくもないですが。水晶にしてはちょっと濁っているなあと思いつつ、この欠片を返して水晶小屋に向かいます。


 念のため、水晶小屋までも岩場の水平移動。


 最後の水平移動。嗚呼、もう少し…。


 ここで、これから水晶岳を踏みに行くという夫婦の奥さんと立ち話を。ふうたろうのいつもの道草というか井戸端というか。


 最後、何か一旦ピークに上がってから、水晶小屋に下ります。
 ここが混んでいたら、雲ノ平山荘まで行かないと…。


 でも、どうやら一人1枚の布団は確保されそうです。それに、子どもをおんぶした若い女性が受付をやっていて、まずはその奇特さに即決してしまったというか。
 そういえば、木曽御嶽山の五ノ池山荘もそうでしたな。あの子は、もう4年経ったから、今は5歳くらいになっているだろうか…。


 小屋からの展望は最高です。こんないい場所に宿泊できるのは最高の贅沢ですな。しかも雲海とか凄すぎです。


 そして、この佇まいが良い。


 この山を越えて流れてくる雲を、滝雲というのだそうです。まあ、そのまんまといえばそのまんまなのですが、名前があると思っていなかったので。


 さて、ハラが減ったし、飯にするか。まだ15時半だけど。
 今回は、飯に関しては初めての試みが多いです。五目ご飯は何となく飽きの来る味で、ずっと食う気がせず、放ったらかしにしていました。でも、荒川岳の、中岳避難小屋で出会ったSさんが雑炊にして食べていたのを見て、「これだ!」と密かに思っていたのです。そして、今こそそれを試すのです。


 結果、最高にうまい。新しい味です。しかも、雑炊なので胃腸にも優しいとキタ!(・∀・)


 ふうたろう、小屋の人、小屋の客、交流が基本的に好きです。不思議と、何かのネタを見つけて人に喋りかけています。元来こんな生物ではなかったんですがね、ふうたろう。雲海見てもストーブに当たってもトイレに行っても、何でもいいみたい。
 とりあえず、さっきの小屋番の人とは小屋の施設の話をしていましたな。


 若いふたり組の兄ちゃんが夕焼けを撮りに出掛けたので(既に交流済)、ふうたろうも出掛けました。
 実は、今日はずっと高曇りではあったのですが、西の遙か彼方は雲が切れていました。それがこの夕方になって徐々に意味をなすことになるのです。


 ふうたろう、さっき水晶小屋を見下ろしたあの最後のピークの上に立ちます。鷲羽岳付近を雲の大滝が流れています。


 さあ、始まるぞ!今日一日の苦労の大開放が!!


 上から日の出。


 "滝壺"に流れ落ちた雲が最初に焼け始めます。


 滝も焼けています。


 焼ける滝壺。


 水晶岳とその稜線もナイスなアーベンロート。


 これはさながら本物の滝を眺めているようです。


 滝壺の向こうにも赤い雲海が広がっています。


 水晶小屋から人々がぞろぞろ出てきました。これを見ないで今日の山行を語ることは出来ないでしょう!


 実は上にも海がある。


 今度は空に炎の海が広がる。


 真っ赤な炎の海に挟まれた山脈。


 小屋番たちも出てきました。曰く、こんなに水晶小屋できれいに見える夕焼けは珍しい、と。


 自然の弁証法を感じるふうたろう。


 水晶岳は完全に真っ黒焦げだ!


 東の空まで赤紫色に染まっています。72番目の写真(写真にポインタを合わせると「~/100924072.JPG」と表示される)と同じアングル。同じ場所とは思えないけども。


 周りのみんなで共に感動し合うのでした。


 そろそろ宴も終わる頃。


 太陽が下に沈むと、高層雲が層状に焼けているのがわかります。


 おしまい。


 宴が終わったら、しばらく余韻に浸るのでした。コールドカルピスで。さっき水晶岳に登りに行った奥さんとか、ふたり組の兄ちゃんとかと話をしつつ。
 いつもこういうサプライズはひとりで味わうことが多いけど、今回はみんなと分かち合えましたね。それが非常に良かった。


 23日、思えば黒部湖からずっと雨で、寒くて、道は滑りやすく危なかった。今日も長い上り坂と晴れることのなかった空に正直不満も残った。
 しかし、最後のこれだ。どのタイミングで諦めても、この風景は見られなかった。今日一日スッキリしない曇り空をもたらした本体が、同時に今日一日の至高の夕焼けをもたらした本体でもあった。そして、その本体の源泉は、この山行計画を大きく狂わせたあの秋雨前線、ふうたろうが「最強の敵」と罵っていた停滞前線だった。
 …つくづく、物事の二面性を感じる。ふうたろうにとって、山が、その内包するものが、物も人も現象も、すべて「師」なのだと思わざるをえない。
 さあ、明日は雲ノ平と薬師岳を越えて、スゴ乗越小屋まで行きますぞ。


天気:くもり(富山県上新川郡大山町)
覚え書き:水晶小屋明日で終了

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