Home > ふうたろう旅日記 > 長い旅ですから(薬師岳前半・雲ノ平コース:富山県)

長い旅ですから(薬師岳前半・雲ノ平コース:富山県)

2010年 9月 25日

 水晶小屋の朝。スタッフたちは厨房兼スタッフルームで調理をしています。いつの間にやら受付のところにかけられた札には、登山者を気遣う文言が書かれています。小屋泊まりはそんなにたくさんしてきたわけではないけど、こういうものを見るのは初めてです。
 とりあえず、ふうたろう、昨日の夕方(夜?)と同じように、雑炊を作って食べます。五目雑炊うまし。…でも、たまには小屋の食事を食べに行くのも良いかもしれません。ふうたろうの行き当たりばったり的山行だと小屋食は食べられないから、百名山が終わった頃に、小屋の食事を食べに山に出掛けるようにしたいと思います。


 隣でおっちゃんが300円(だっけ)のカップヌードルを食っています。なぜかそれを撮らせてもらっているふうたろう。


 今日で水晶小屋の営業が終わるそうです。ここで働いているスタッフは、小屋締めを終え、下界に戻ることになるでしょう。5月31日からいる人、7月15日からいる人、一度も下界に下りず、ここでずっと過ごしていると、アルバイトとして働いている女性ふたりは言いました。しかも、ふうたろうと同じくらいの年齢で。


 …晴れたり曇ったりですが、基本的に濃霧ですね。前が見えない。これから長い旅路に出るというのに。


 微かに青空が見え隠れしているようですが、これでは…。


 小屋を出発してしばらく、無性に悔しさがこみ上げてきて、涙が止まらなくなりました。
 このガスに対して?
 …ふうたろう、そんなくらいで泣くか。色々言い訳をして行動に移せないふうたろう自身に対してなのさ。


 本当にやりたいことをやろうと思えば、覚悟と努力が必要。今のままだと、ただ山に登っているだけだと、思ったのでした。


 しかし、山に登っているだけであっても、それでもふうたろうは海に還るまで山に登りたいと思っています。山で生きていくことは出来なくても、それとは関係なく山には行きたい。


 山に行くことは簡単だけど、山で生きていくことは難しい。いや、難しいのかどうかさえ、本当のところわからない。水晶小屋に限らず、山小屋で働いている楽しそうな人々を見て、どうしてこの人はこんなことが出来るんだろうと、まったく解らないのです。
 これは、ふうたろう自身「労働は楽しくないものである」と結論づけていることに対する矛盾、なのかもしれません。労働を楽しいものと決して思えない自分と、目の前で楽しそうに働いている彼・彼女たちとの間に透明の分厚い壁があって、半ば絶望のようなものを感じるのです。


 …水晶小屋から雲ノ平方面に向かう間、ずっとそんなことばかり考えていました。さっきまで覆っていたガスが晴れてくると、とりあえずふうたろうも歩くことに集中するようになります。


 水晶小屋はもう見えなくなりました。さらば。


 南西方向はどうも晴れているようです。あの青空がこちらに来るかどうか…。


 さっきを思えばずいぶん見通しは良くなりました。でもまだ辺りは暗い。


 ここから、雲ノ平方面、祖父岳に向かいます。


 左のモッコリした山が祖父岳。読み方は「おやじだけ」?


 祖父岳との鞍部。まっすぐ祖父岳に向かいます。


 水晶岳の稜線。上空をまだ高層雲が覆っているので暗いです。


 しかし、進む先を見ると、徐々に青空が広くなっているように思います。


 薬師岳はガスが晴れています。


 この赤牛~水晶岳方面が晴れわたるのはいつになるか…。


 こちらはもうかなり雲が切れてきました。


 鷲羽岳方面から陽が差すようにもなりました。


 青空の広がり方は意外と速い。案外、全天青空になるのもすぐなのではないか。


 なんじゃこれは。なんでこんな所に歯ブラシが落ちとるんだ!?


 ちぎれ雲が美しい空になりつつあります。このくもりのち晴れのダイナミクスは、くもりや雨の世界にいた人にしか見ることができません。くもりや雨は喜びを生み出す苦悩です。


 水晶岳方面も雲がちぎれてきました。


 右にワリモ岳。
 そういえば、このハイマツの向こうの広いところで、登山客が一人立入禁止区域に入り込んでいる。注意してやろうかと思ったけど、ちょっと離れすぎていた。


 手前に大きな三俣蓮華岳と右奥の笠ヶ岳。
 空、ずいぶん晴れてきた。


 祖父岳の山頂部はだだっ広い。ケルンがいくつもあるガレ場になっています。


 ガスっているとここは確実に迷います。でも今は大丈夫ですね。


 祖父岳の山頂から笠ヶ岳がきれいに見えています。空気はとても澄んでいます。


 薬師沢で泊まって、今日太郎平に戻るというふたり組の兄ちゃんとこの辺りで話をしていました。よくわからないけど、ふうたろうはそうして話をすることで、何となく元気を取り戻していきます。


 あの高積雲が最後の雲ですか。


 薬師岳はもう日が照っています。ふうたろうが雲ノ平を歩く頃には燦々と晴れているでしょう。


 北の空に曇り空の終わりを告げる絹雲。


 ガレ場越しに黒部五郎岳。
 これは最高の山行になりそうな予感です。


 雲ノ平に最初の日光が差します。


 黒部五郎岳の上は一本の雲の帯を残し、群青の空。


 薬師岳方面ももちろん青空。


 雲ノ平山荘方面に行きましょう。テン場を突っ切るルート、地図には道としてはあるみたいですが、実際はどうなのでしょうか。


 晴れわたった雲ノ平を歩きます。


 黄金色の草原。


 青空が映えます。


 ハイマツや灌木の中をくぐるところもあります。


 ハイマツ林を縫うように。


 水晶岳の頭がハイマツ林から覗かせています。


 鋭角に射し込む太陽で、水晶岳の稜線の凹凸が浮き出しています。


 ハイマツと湿原の雲ノ平。


 振り返ると水晶岳。


 左後ろは祖父岳。


 真左にはテン場。


 正面はただひたすら草もみじの湿原。


 左斜め前には黒部五郎岳と群青の空。


 このテン場を使うには、かなり離れたところにある雲ノ平山荘まで受付をしに行かねばならないという、不便さ。こういうのは何とか出来ないものかと思う。
 ちなみに、ここでカメラの電池が突然切れて、シャッターが中途半端な状態で止まってエラーが出ました。ものっそい慌てましたよ。


 テン場の向こうの祖父岳。


 池塘と草もみじとガレ場とハイマツ。


 雲ノ平山荘が遠くに見えます。あそこまでテン場を使う人は行けということですか。


 とりあえず、あそこで休憩しよう。冬用の厚手のズボンも脱ぎたいし。


 この小屋もきれいな佇まいです。


 水晶小屋もそうでしたが、明るく、何となく柔らかさを感じる構造になっています。古い避難小屋などに見られる、あの何とも言えない雰囲気も好きですが、こういう小屋だったら、ゆっくりしていきたいと思ってしまいます。


 晴れていれば、なのでしょうが、雲ノ平山荘のベランダからの展望は最高です。


 とりあえず、トイレを借りてからちょっと休憩させてもらい、先に進むとしましょう。今日はスゴ乗越まで行きますから。


 雲ノ平を西進。


 ガレ場も木道があって、ガレ場そのものよりはまだ歩きやすくなっています。


 どうもこの盲腸線の先に祖母岳という小高いところがあるようですぞ。


 とりあえず行ってみたらこんな感じ。山頂そのものはどちらかというと公園のあずまやみたいな感覚ですかな。


 展望は、東方向はまあまあです。


 槍ヶ岳も見えますか。


 黒部五郎岳と笠ヶ岳。


 あの薬師岳、今日登るんですよ。


 水晶岳はクリアした。


 雲ノ平は、草原から針葉樹林帯に変わってきました。


 この辺り、恐らくアラスカ庭園というところでしょう。


 木道が途切れました。


 その辺りから樹林帯です。


 岩ゴロゴロの急坂。木の根っこも多い。今日歩く中でも屈指のきつさでしょう。


 薬師沢小屋まで、延々と下ります。


 この辺に出っ張った岩があったような気がする。


 ゆがんだハシゴ。浮き石を揺らしながら下ります。


 そして、薬師沢・奥ノ廊下の出合に出てきます。


 奥ノ廊下の沢水、青く澄んでいます。イワナがいるそうです。


 細い吊り橋。


 板がクルッとひっくり返ったらどうしよう。


 橋の上から奥ノ廊下。


 これが薬師沢小屋。ここで10時43分。出発から4時間26分。
 …スゴ乗越まで、行ける、か?


 それにしても、薬師沢小屋、いいポイントです。雲ノ平山荘もいいけど、このきれいな谷もいい。


 これ、水場だと思いきや、手洗い用。


 飲料水はこちらから汲めだとさ。


 これからまずは太郎平を目指すのですが、これからがまた猛烈に長いので、とりあえず25日分の前半終了です。25日付後半がこのあと続きます。


Comments are closed.