居場所を探して
例に漏れず、昨日の夜も具合が悪く(8月上旬ほどではないが)、今日の出発を危ぶんだほどでしたが、ここで死んでしまうわけにはいかないので出発。第一、JRに無駄金をもぎ取られるのは癪でしかないし。
そして、やってきたのはまつだい駅。新潟県を走るほくほく線という変な名前の第三セクター路線の駅です。これから「農民連青年部」の交流会に参加するのですが、開会まで時間があるので、駅から山越えして歩こうかと思っています。
ヌオッ(゚皿゚;)
判っていたこととはいえ、地面に水の王冠ができるほど強い雨が降っています。傘を差さずに歩いたら10秒以内にびしょ濡れになるレベルの雨。マジ腐ってやがる…(滅滅滅
10時7分発のバスで小谷という場所まで行くと、会場の「三省ハウス」最寄りになります。
バス停から三省ハウスまで、いつもに比べれば歩きませんが雨の中歩くのは辛いかもしれませんね。
三省ハウスはもとは小学校だったそうです。廃校になって、それをこういう「体験型宿泊施設」みたいなのに改装するというのは、奈良県吉野郡東吉野村の「やはた温泉」裏にあるあれもそうでしたね。宿泊ができたかどうかは記憶が定かではありませんが。
→2011年7月24日 高見山
この焼き物は、きっと子どもたちの作品でしょう。棚に固定されています。厚さや密度が違うため、軽く叩くと、みんな違う音を放ちます。
厚い雲でうす暗いのはザンネンだけど、展示室の開放感と静けさの漂う休憩所。うす暗いので静けさもいっそう引き立っています(じと目
三省ハウスのそこかしこに、こういう小物が飾られています。何か特殊な宿泊施設のようです。
ふうたろうは開始までの時間、三省ハウスの売店で買った本を読んでおきます。池内了(とおる)さんが書いた、環境問題の本。この人は物理学者じゃなかったかな。もっと生物学者、化学者、がんばれよ(じと目
昼飯にピザを注文。ピザーラとかにありがちな冷凍品が出てくるんだろうとか思っていたのが罠の始まり。生地は十日町市のパン屋に作ってもらい、野菜はこの近辺で採れたものを使っていると説明された記憶が。即ち、手作りなので、言えば除去可能なベーコンが乗っているという罠。
目を細めながらベーコン除去に励みます(滅滅滅
さて、11時半を回ると、12時に間に合うバス便の最終が到着する頃です。それに後れて参加者や主催者が食堂に集まってきます。そろそろ潮時ですかね。ふうたろう、会場の講堂に行こうかしら。
パネルディスカッションなので講師(パネリスト)が何人かいます。
坂下可奈子さんは、"移住女子"として、特に新潟県内ではメディア系にもよく取り上げられているそうです。これが移住男子ならば見向きもされないでしょうけど。
大学のときは紛争解決について専攻しており、海外にも行ったそうですが、その紛争を応急処置的に対応していても解決に繋がらないと思い、ボランティアなどを通じて地域で動くことを考えた(そして限界集落で農業をするようになった)、というニュアンスで話していたと思います。
物腰が穏やかな人で、気迫は足りないくらいかと思ったほどですが、政府・財界などが進める大量生産(大規模農業)などは、彼女が移住女子としてやっている山間地農業には合わない、それをみんなに知ってほしいと言っている姿には、気骨のある人物像を感じさせました。
関口正洋さんは廃校や空き家などを活かして芸術化する事業をやっているようです。田んぼもまたその守備範囲で、棚田を残す事業はそれに当たるようです。
田んぼをやめたいと言っていた農家に、説得や都会からの来客との交流などを通して、6年間続けてもらうことができたようです。しかし、言い方を変えれば、6年延命しただけとも言えます。6年後、再びやめる決断をしたのはなぜか、話には確か、出てこなかったと思います。
山間地農業を、棚田を残すためには、都市と地域の関係を作り出す必要があるため、棚田オーナー制度(生産を任せて、一定のお金を払って、たまに手伝いに行くことで、需要を確保する)を使ったり、都会でのアンテナショップ、地域での交流事業などを行ったりするそうです。オーナー制度は広がりを見せつつあるようですが、それでどれほどの需要を作り出せるかはふうたろうには判りません。
なお、オーナー制度というのは、「大豆トラスト運動」に何となく似ているような気がします。
佐藤徹さんは30代で、自分の大事なところ(食?)を人に預けていていいのかという思いなどから就農した、新潟県の農家です。しかし、始めた頃は何も解らず、知り合いの農家に修行にでたりとかしたとか。
淡々と語りますが、農業の魅力を具体的に、自分の言葉で語る姿は印象的です。自然のリズムに合わせて生きられること、食べる物を作れば生きていけるという事実、などなど。しかし、それだけでは生きていけないので、冬の間はアルバイトもしているそうです。いくら農業が楽しくても、客観的に言えば、農業では生きていけないとも言えます。つまり、趣味みたいなものとも。
最後は福島県二本松市から来た菅野瑞穂さん。
菅野さんのお話は何度か聞いています。が、言われてみれば何をやっているのか、毎回忘れていますね…。
菅野さんの地元は、昔は養蚕が盛んだったので、桑の栽培が行われていました。しかし、外国からの生糸が押し寄せてくれば、勝てる見込みはない。そして、桑の栽培は壊滅しました。しかし、今は桑の葉茶や桑の実ジャムなどで復活しつつあるようです。
また、農業を続けていた両親の休みもなく働いている姿から、農業にはマイナスイメージが強かったそうです。そして、東京の大学に行っていた頃に何度か帰省する度、若い人が離れ、老人ががんばるようになっていったのを見てきました。それで、就農を決意したそうです。
しかし、その直後に、東日本大震災が起こりました。幸い、菅野さん自身の農地や家族は無事だったので、自分に何ができるのかを考えたとき、農業をやることでその問題に向き合うことになったようです。原発に関する被害に対し、ひまわりを植えて除染活動、今では農作物の放射能汚染データも集まってきたので、99%以上が25Bq/kg以下(セシウム)であることも踏まえつつ、直接顔が見える農業をやっています。たとえば、アンテナショップなどで作物を売るとか。今回の交流会にもふうたろうが食べられない生のトマトが差し入れられています。
さて、グループディスカッションに入る前に休憩です。
この日本なしも、確か菅野さんところのものじゃなかったかと思います。梨は大好きなので、ありがたくいただきます。ふうたろうは家でも10Bq/kg以下程度のベクレ度ならそれほど気にせず、米を精米して食べています。そのレベルの、可溶性セシウムが身体を少し回る程度では、恐らくそれほど深刻な病気にはならないだろうと。まあ、それはふうたろうの勝手な考えなので、心配する人に押しつける気は毛頭ありません。
当然ですが、ふうたろうは原発はこの世に必要ないと思っています。ふうたろうがセシウムを気にするしないには関係ありません。
これはキュウリを使ったクッキー。キュウリ?ふうたろうは、野菜を甘いお菓子に使うという考え方にはあまり賛同しません。野菜はやっぱりご飯のおかずになるという保守的な立場なので(`・ω・´)キリッまあ、このクッキーはうまかったけどね。
愛知からのケーキもあります。ふうたろうも何か持ってくればいい?マイ・山の写真の絵はがきでも持っていくか(黒笑
ヌオッ(゚皿゚;)
グループディスカッションが始まって、いざ記録を取ろうとしたら、ふうたろうの唯一持っていたボールペンが大破しているではありませんか!しかも、ふうたろうのいたグループ、何の巡り合わせか知らないけど、他のところは8人とかでやっているのに、3人しかいない。遅れてやってきた静岡メンバー3人を無理やり引き入れてやっと6人になったけど、パネルディスカッションの話は殆どできないという罠(滅滅滅
やっぱり、ふうたろうの道は罠の道(滅滅滅
…パネルディスカッションの感触としては、ふうたろうには完全に満足できるものではありませんでした。もちろん、みんなが楽しめたのならそれでいいのですが、ここに出てきた話だけであれば、彼・彼女たちのやっていることは、「特殊な事例」に過ぎないと思っています。かつての農村がそうだったように、農家が農業で食べていけるようにすることが大前提の話であるべきだと、ふうたろうは思うのですな。
坂下さんの話であれば、なぜ限界集落化してしまったかを考えるべきだし(坂下さんがちゃんと山間地農業の現実に社会が向き合うべきだと言ったのは特筆すべきです)、関口さんの話であれば「芸術」は応急処置に過ぎないと考えます。佐藤さんは実際、バイトをしないと1年を過ごせず、菅野さんの地元では福島原発が深刻でありながらも「終息宣言」は取り消されることなく、再稼働まっしぐらの原子力行政があります。
本当にパネリストとして、このくらいの提起でいいのか、疑問です。TPP問題については殆ど誰も触れることはありませんでした。煽りをくらったらどうなるかを、一人くらい自分に即して話せてもよかったと思います。理論学習だけでは息が詰まってしまいますし、理解も深まりませんが、経験則の交流だけでもまた、理解は深まりません。ふうたろうなら、TPPが通れば、このままの原子力行政が続けば、自分の登山がどうなるか、十分・不十分はあっても、語る自信があります。農業に人生を捧げるのであれば、気迫を持って訴えてほしかったです。
さて、ディスカッションが終わって、次は18時からの宴会までに1時間ほどの休憩です。
ふうたろうは裏庭をウロウロします。特に話相手もいないので(←涙
ここに転がっているのは、そうめんカボチャじゃないかな?
三省ハウスの裏です。ここから見ると、小綺麗な感じはしません。ふうたろう、実を言うと、この三省ハウスの小綺麗な感じはそれほど肌に合わないのです。それでも、客観的に人を集める力があるなら、ふうたろうの好みに関係なく評価できます。
裏手のテラスのヤブの向こうには、誰も近寄ることのないプールがあります。
ふうたろうはこういうところを見ると、近寄らずにはいられません。
ここは恐らく消毒槽でしょう。でも今は、雨水がたまり、蔓に覆われた廃墟です。
藻が繁殖して緑色になっているプール。それでも穏やかな水面には景色が映る。
緑色によどんだ水の底に、どのくらいの大きさか推し量る術もない木の枝が沈んで、それにクモの芸術家が巣を張っています。人間の芸術のチカラはここまでは届いていないようだ…。
さて、宴会です。ふうたろうはこの宴会になると、まったく手も足も出なくなります。とりあえず、食べられるものを食べたらずらかろうかと。
食べ物はとにかくうまそうです。あとはふうたろうの体調次第ですが。
一応、乾杯だけはちゃんとしておきましょう。
このあと、主催者たちが余興でしりとりを取り仕切ってくれます。もちろん、ただのしりとりじゃなくて、絵でしりとり。だから、あんまり難しいことも言えない…
余興が終わったらふうたろうはずらかりました。シャワーを浴びて、外で一日目の感想みたいなのをフェースブックに書き込んで、そのあとはちょっとだけ片付けの手伝いをして。
まあ、ふうたろうにはこの青年部で大きな顔をする資格はありません。一応、参加した立場としての感想だけは書きますけども。なぜなら、農業に対して、ふうたろうはみんなほど本気ではないんですもの。本気になりたいのは山なんですもの。
天気:雨のちくもり、断続的に強く降る(新潟県東頸城郡松代町、上越新幹線・北越線など)