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ふうたろうと湿原の遷移(尾瀬沼【七入・沼山峠コース】:福島県)

2014年 5月 24日

 頭と身体が重い。昨日の夜までネット動画で見ていた、あだち充の「タッチ」が頭にこびりついています。
 今日は東武鉄道および野岩鉄道に乗って会津高原尾瀬口駅へ向かっています。


 電車では眠くてほとんど寝ていましたが、いや、混雑がひどい。あんなに混む電車なのに6両編成とか、拷問かよと。新鹿沼辺りまでは、せめて10両で運転しとけよと。


 9時50分発の会津高原尾瀬口駅前発のバスで、今日は尾瀬に向かいます。まともなシーズンの尾瀬に。問題はどこから登るか、ですが…


 この誰もいない七入バス停です。尾瀬御池からも、登った後で開通を知った沼山峠からも、もちろん歩いたことはありませんが、まあ、美味いところ(何)を一番最初に持ってくるのがセオリーでしょう。


 間髪入れず出発です。


 七入山荘の文字が見えていますが、ここ、やっているのでしょうか?でも、奥にちゃんとした建物があり、道まで教えてくれる人もいたので、大丈夫だと思います。


 キケマンが咲いています。ふうたろうの周りにもようやく春が訪れましたか。


 緑の濃い針葉樹林帯。


 日の当たるところには陽樹も生えています。


 コゴミです。既に葉っぱは開ききっていますが…(何?


 ん?(・ε・;)
 …立入禁止とかではないようです。あぶねぇあぶねぇ…(アヴラ汗


 一度目の沢渡り。足場が濡れていたらヅドンしますので。


 沢と新緑が美しいですね。


 深い針葉樹林帯の中は下草も少なめ。光の補償点の高い陽樹は、光合成能力が高くても大量の光を必要とするため、陰になると途端に弱くなります。なので、ウスグラいここにはそれらも少なめ。


 これはヤマエンゴサク(ケシ科)かな?地面すれすれに咲く花を、110リットルのザック背負いながら撮るのは至難の業です。


 地図にも書いてある、「開墾地」。この辺りの放射能汚染はどのくらいのレベルなのでしょうか。汚染されていれば、木材も売れないでしょうね、きっと…


 これはニリンソウ(キンポウゲ科)かな?二輪じゃないけど。


 セリ科の花っぽいけど、よく判りません。


 誰もいない道を進みます。もっとも、11時11分に登山口に着いて、それから登る人なんてほとんどいませんよね。ましてや七入からとか。


 後ろを振り返ると開墾地の向こうに雪を被った山が見えます。会津駒ヶ岳山系です。


 ふうたろうの歩いている登山道は道行沢(みちぎさわ)コース。ここを狙った理由はちゃんとありますが、ここには書かないことにしましょうか。知っている人は知っています(笑


 時々歩く場所を左岸~右岸と替えながら進みます。


 貧相なコゴミたち。この辺りはもう国立公園に入っているはずなので、採れませんね。許可でもないと。


 ボロボロになった橋。笹に阻まれています。


 雪渓が出てきました。早くも雪渓か、と、心の片隅に。


 流れが橋の上を越えています。水に濡れている場所はヅドン率が高いのでキケンです。


 …不思議なものですね。こんなに新緑も沢も美しい場所なのに、誰もいない。


 人が、何かを「心地よい」と感じるポイントは何でしょうか。個人的な感情ですが、ミズバショウやハヤチネウスユキソウやレブンアツモリソウやミヤマキリシマなんかを、何が楽しゅうて人混みに紛れながら見るのか。


 ふうたろうは、誰かがきれいだと言ったものを追いかけるより、自分できれいなものを探したい。ふうたろうの、昔からの性質です。


 でも、それを探して今歩いているこの道は、誰かがちゃんと整備してくれたものです。木道の雪を掻いてくれています。甘えすぎているような気分になってしまいます。


 雪渓が多くなってきて、滑ったらそのまま谷底のパターンになってきました。しまっていこう!


 抱返の滝…とありますが…


 あのウスグラいところに何かあります。


 雪がちゃんと積もっているせいか、間近まで近寄れそうです。ただし、スノーブリッジになっているため、不用意に近づくと命取りになります。


 …滝は、もう少し撮り方のアングルを研究しないとね。


 滝を取り終わったら急坂を詰めて沼山峠に向かいます。ここが今日、尾瀬沼キャンプ場に着くまでのコースの正念場となりましょう。アイゼン履かなくてもなんとか登れますが、履いた方が早いでしょう。


 坂が緩くなってきたら尾根はもうすぐです。


 雪が心なしか赤い。誰かがペイントしてくれているに違いありません。それどころか、雪渓が多くなってから、やたらとリボンなどが目立つようになりました。本当に、ウルサいほど…(すみません


 尾根に上がると会津駒ヶ岳の稜線が一望できました。この辺りが新緑に覆われる頃、あの山をまた眺めてみたいですね。


 何かのほこらがあります。なぜここに?


 沼山峠(沼山バス停)はもう少しのはず。進行方向からエンジンの音が聞こえますから。


 建物の裏手に出ました。雪がこちら側にうち捨てられているけど。


 そして、沼山峠バス停、到着。どうやら、5月20日前後からここまでバスが開通したようで、七入から来たふうたろうは、ぶっちゃけ、知りませんでした。
 でも、何のために歩いているのかを考えたら、別にムリして楽する必要はないと思います。


 というわけで、ここから尾瀬の核心部へ突入することになります。尾瀬の湿原に足を踏み入れるの、久しぶりになりますなあ…


 ここからなぜか雪がきれいに均されています。何の真似ですか?ふうたろうの冒険心が壊される、とかじゃなくて、こういうところに来る人をダメにしているような気がするのです。コンビニやケータイの存在に慣れすぎて、それ無しにはいられなくなったように。


 さっきの看板から、尾瀬自然保護ネットワークの隊員のおっちゃんと一緒に歩いています。そういう人がいたら、まず話を聞くに限ります。ふうたろうは具体的な尾瀬の性質については何も知りませんから。


 この休憩所、本来は尾瀬沼がよく見える展望台のようですが、おっちゃん曰く、だいぶ木が伸びたそうです。まあ、そりゃ、木だって生長するわな、と。それとも、気候変動のせいもあるのでしょうか?この沼山峠の極相(きょくそう)がどの状態であるのか、ふうたろうは知りません。


 おっちゃんとはさっきの「展望台」でお別れしました。景鶴山の裏話、鹿のニッコウキスゲに対する食害(これについては後述)、東電と尾瀬沼の開発、国民の運動と尾瀬沼の保全、など。
 いや、山は哲学と学問の宝庫ですな。
 とはいえ、尾瀬の開発と国民運動の闘いの歴史については、詳しいことはほとんど知りません。


 沼山峠を越えたら大江湿原に下ります。雪があるので一直線に下っても良いのですが、湿原にヅドンだけは避けたいのでやめときます。誰も得しませんから(じと目


 大江湿原が見えてきました。尾瀬国立公園の中核を成す湿原の一部です。雪、まだまだ多くてただの雪原ですね。


 そうそう、さっきのおっちゃんからこのパンフレットをいただきました。この会に入会すれば、いろいろな知識を得られるかもしれませんが、揉め事生成装置のふうたろうは、いざこざを起こさずにいられるでしょうか?怖いですね。


 人の少ない大江湿原。まだ雪も残って、尾瀬の代名詞であるミズバショウもここには見当たりません。寂しい大地が広がっているのみです。


 ふうたろうはいつも、山に行きたいという能動的な思いと同時に、山に行かねばどうにかなってしまうという受動的な思いにもまた、駆られています。東京の家にひとりいても、そこには何もありません。近くにコンビニはたくさんあるし、低速ながらインターネットにもつながっているけど、ふうたろうの心の穴を埋める何かはそこにはひとつもありません。


 この一週間、潰瘍性大腸炎の経過を見るための大腸カメラを受けるなどで家にいる時間が長かったのもあり、インターネットで無料配信されていた「タッチ」(あだち充)をずっと見て、昨日の夜、主人公・達也がヒロインの南に告白するところまで見終わりました。野球を通して「夢」のために努力する達也たちの様子、暴力で心の傷を覆い隠していた監督代行が最後にウィニングボールを受けとる様子、死んだ弟の「和也」ではない達也が南に「世界中の誰よりも愛している」と告白する様子…
 七入から、いや、家を出てからずっと、頭の中をぐるぐるしていました。


 考えます。ふうたろうにはそんな本気の、少なくとも今の山に対する思い程度の本気の、人間らしい生き方があったろうか、とか。
 いや、単純に、ものすごく寂しい生き方を歩んでいるな、と。


 …ここには、ミズバショウが咲いていました。元々生えていた斜面の笹や高木以外は、広大な枯れ草と雪が広がっている湿原にも、ね。


 ふうたろうは、山を歩くときは全力、少なくともそのつもりです。でも、その先にはいったい何があるのか。甲子園にいった後の達也は南に愛の告白をしたけども、ふうたろうは、無限とも言えるほどの数の山しか見えません。それとも、それでいいのか。


 でも、フィールドを歩いていると、少なくともふうたろうが次に足を差し出すところは見える。歩いてきた道も見える。


 …明日はあの彼方に見える燧ヶ岳(ひうちがたけ)に登ります。友人たちと車で来て登ったきりなので、今度は1人で登るのです。


 泥炭の間を流れゆく雪解け水。しかし、ひたすら同じように流れ続けているこの水の流れも、湿生遷移でとどまることなく変化を続けています。ふうたろうも、同じように、変われますか?


 尾瀬沼ビジターセンターのある、営業小屋エリアに到着しました。今夜泊まるテン場を確保しなければ…


 しかし、すごい数の小屋…。正直、これが「特別保護区」でいいのか、と思ってしまいます。でも、誰かを責めるつもりは、もはやありません。後述するように、対策を打とうと努力している人たちはいるのだから、それには敬意を表するべきですよね?たぶん。


 ビジターセンターの裏玄関からたまたま出てこられたスタッフとおぼしき方たちに聞いて、尾瀬沼ヒュッテでテント泊の受付をするよう教わります。


 このテン場、ウッドデッキの上にしかテントを張れないため、数に限りがあるそうです。次からは予約を入れておくようにいわれました。
 →尾瀬沼ヒュッテ
 雪に埋まっていないウッドデッキは当然先に取られています。ふうたろうは今回に限ってまたスコップを持ってきていなかったため、雪を掘り起こすことができませんでした。たまたま見つけた10番のウッドデッキは、木の枝が道を塞いでいたり倒れ込んでいたり、それはもう、手荒い歓迎でうれし涙がちょちょぎれます。


 さて、今日の運動量はせいぜい8キロちょっと歩いただけなのですが、ハラは減りました。色々考え事していましたからね…
 とりあえず、まだ2本残っているなまり節を使うべく、先週と同じように親子丼っぽく作ります。


 カツオと卵とタマネギ。種を超え時(違)を超え、超・他人丼(はいぱー・たにんどん)の完成!
 鷹の爪でも刻んでかけておくとスパイシーで色合いも完璧。


 今日はこれでは終わりません。食後にはリッチーな気分に浸ってやりましょう。
 足繁く通っている板橋区のネパール料理屋・マナカマナで買ったチャイを作ります。今日はロングライフ牛乳も持って来ています。完璧です。


 でも、量が多かった(滅滅滅
 それに…


 茶こしがないので茶葉が除去できないため、歯ごたえのあるチャイになってしまいました(滅滅滅


 コッフェル一杯の歯ごたえチャイを飲んでもまだ明るく暖かかったので、トイレに出かけました。


 17時なのに全然寒くないですね。下界はいったい何度まで上がっているのでしょうか。


 ビジターセンターの向こうに険しい燧ヶ岳。尾瀬ヶ原や尾瀬沼付近の湿原にニョキッと立つ、何とも不思議な山。


 ところで、トイレに入ったら、こんな説明書きがありました。クマがウンコしていますがそれはともかく(笑
 気になったのはトイレットペーパー。水に流すのではなく、そのままゴミとして回収して焼却するか、ペーパーは袋に入れて持ち帰らせるか、すればいいと思います。糞尿を持って帰るのは抵抗があると思いますし、実際携帯トイレのようなものでないとにおいも漏れます。しかし、トイレットペーパーくらいの付着量ならまったく臭いません。水洗式、というのは、もはや観光地の流れ、なのかな…。沼なので水だけは潤沢にありますしね。


 トイレから出てきたけど、そのままテントには戻らずに湖畔まで出てきました。


 靄が空を覆っていて何ともスッキリしません。


 でも、このゆっくりと流れる時間、いいですね…


 都会の雑音がしない空間。ケータイやコンビニなんてなくても、ふうたろうはこちらの方がいいです。っていうか、ケータイとコンビニを捨てればこういう場所にいられるなら、安いものだと思いますがね。


 少し場所を移して、湖畔に腰掛けます。どこから押し寄せるのか、波が湖岸を打ちます。


 何も言わず、黙って肯定してくれるのは、おまえだけだ。…と、つぶやいてみた。でも本当は、山にいる時だけ自己肯定できる、ということだと思う。


 ちょいと向こうにも行ってみよう。雪の破片が湖岸に押し寄せて、不思議な光景になっているみたいですから。


 ヌオッ(゚Д゚;)
 ガラス瓶が土の中に埋まっていました。掘り出そうとしましたが、木の根っことかが絡みついていて、手では掘り出せませんでした。


 このボートは…?小屋同士の移動手段、ですかね。


 雪の浮かぶ湖面。


 この湖も当然真冬には全面結氷するようです。ゴールデンウィーク前くらいまでならなんとか真ん中まで行けるとか行けないとか…?


 この雪原の湖畔に来たところで、さっきふうたろうにテン場を教えてくださったビジターセンターのスタッフの方に、またお会いしました。


 石の上にも三年、といいますが、何年ここでスタッフを務めていらっしゃるのでしょうか。同じ景色に飽きないのでしょうか。でも、住んでいるところ、働いているところに、飽きるも飽きないも、ないか…


 ちょうど太陽の真下左辺りに景鶴山があります。ここから見て、あそこに日が落ちるのが5月7日頃だそうです。さしずめ、ダイヤモンド景鶴でしょうか。


 ゴールデンウィークの時期に尾瀬はごった返すそうです。しかし、6割は、景鶴山目当てだそうです。ふうたろうが2012年4月14~15日に戸倉から富士見田代を越えて登りに行った時は、まったく人はいませんでした。それが、鳩待峠まで車が入れる時期になるゴールデンウィークになると…という現実。
 ふうたろうもそれくらいの楽はしてもいいのでしょうか。でも、ふうたろうはそれで楽しいと思えるでしょうか。全力で登れるのでしょうか。
 あの、新雪に輝いた景鶴山と至仏山、そして燧ヶ岳や尾瀬ヶ原は、本当にすばらしかった。3回も撤退して、それでも挑戦して、それなりの苦労をしたけど、苦労そのものが感動に色を添えたのだと、ふうたろうは思っています。


 日が落ちると、突然寒くなってきました。半袖長袖のモンベルTシャツ、モンベルフリースの3枚姿のふうたろうに、スタッフの方、「それはどう考えても寒い」と婉曲的に話します。
 …それではテントに戻りましょうか。


 ところが、19時からビジターセンターで、尾瀬沼の自然についてスライドショーをやるので来ないかと誘われ、ふうたろうはノコノコと出かけていきます。こういうチャンスは逃した分だけ損をします。


 解説は変わった名字なのではっきり覚えていますが、Fさんという方がやってくださいました。後で聞いたところによると初めてのプレゼンだったようでした。先に言っておきます。
 「お疲れ様であります!」
 このスライドは厳冬期2月のビジターセンター。さすが、豪雪地帯。


 この植物の芽は何かと聞かれましたが、ふうたろうは判りませんでした。マルバダケブキ(キク科)だそうです。黄色い花が咲き、その群落たるや壮観の一言です。また、南アルプスの薄霧ただよう樹林帯の尾根でその群落を見た時は、本当の意味で幻想的でした。


 これはミズバショウ(サトイモ科)の生育に関する模式図です。あまり考えたことがなかったのですが、根から酸素を吸収するために、流水のあるところ、地表(活性層と解説)に先を伸ばしている様子が描かれています。ミズバショウは、水中でもなく、完全な陸地でもなく、水と陸地の境界で生きるきわどい生き物なのですね。


 "鹿の専門家"の方(突然そう呼ばれてみんなの前に召喚された)に交代して、この鹿のぬた場の解説がありました。このぬた場には元々ミツガシワ(リンドウ科)が群生していたが、鹿に根っこから食べられて壊滅したそうです。
 ところで、ニッコウキスゲ(ユリ科)が鹿に食べられて壊滅したという話を、尾瀬自然保護ネットワークのおっちゃんから聞きましたが、ここで聞いた話は違いました。ニッコウキスゲには当たり年とそうでない年があるそうです。それには花芽の時期に遅霜に当たると凶作になる、という話もありました。
 生化学や分子生物学などの分野と違い、生態学は非線形的な意味合いが強い。そういう意味で難しい学問だと、ふうたろうは改めて思います。


 なんか、最後辺りは個別指導型の合宿みたいになってしまいましたが、こういうのもいいものです。ただ、山に登っているだけではなく、深みが増します。
 明日は早朝から燧ヶ岳を目指します。さっき、西の空から迫ってきていた絹層雲か高層雲が少し気になりますが、明日は明日の風が吹く。なるようにしかなりません。
 それと、スマホを忘れたので、目覚ましがありません。どうしよう(滅


天気:晴れ(福島県南会津郡檜枝岐村、野岩鉄道など)

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