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神々の住まう山(宮之浦岳:鹿児島県)

2007年 8月 13日

※記録:8月16日

 今日の始まりは『はいびすかす号』の中からですね。なぜか、21時15分に種子島の港に泊まったっきり、翌朝5時過ぎまで出港しません。で、そんな夜明け前の4時過ぎ、山に登る気でいた僕にとって、この船の中で唯一の炭水化物補給施設がこれでした。


 阿鼻叫喚のはいびすかす号の中(僕が言った言葉ではありません)は寝息どころか、種子島でほとんどの人が降りてしまったため、ガラガラでした。暇をもてあました僕は、ちょっと外へ出て、写真。これは、はいびすかす号の種子島の事務所です。
 やっぱり、僕らは貨物だった…。
 なお、昨日の産業廃棄物の中身や行き先は、判りません。屋久島に捨てているとは思いたくはないですが。


 さあ、屋久島ですよ。
 …この雲を見よ!島全体がかつらを被ったように雲が垂れ込めているではありませんか!
 熱帯低気圧が近辺に停滞しているので、明日や明後日には晴れる保証なんかない。種子島では雷が鳴っていたような気もしたけど、こうなったら、進むしかない。


 白谷雲水峡です。オーソドックスな登山口ですが、みんなカッパ姿。天候に希望を持てる人を探したいくらいです。


 ここは白谷雲水峡から登り始めてすぐのところ。岩場から開始。コケはあまり生えていない岩なので、特に滑りもしませんでしたが、警戒はすべし。
 で、久しぶりの雨山行です。着慣れないカッパは防水加工の役目を果たしておらず、ザックカバーもまた然り。それにしても、雨が辛い。


 岩場を抜けると、屋久島原生林。森の道は既に川と化し、カメラもぼやけます。


 白谷雲水峡から登り始めて、太鼓岩との分岐(地図で各自見てください)を過ぎると、下り道。あの川のような道を上がったのに、また降りるのです。
 そして、この下り道も同じように川になっています。


 さっきの分岐で、社会人になったばかりだといっていた青年と出会いました。このトロッコの道をずっと一緒に歩くことになります。
 トロッコ道に入ると、毒矢のように雨が降ってきます。先を急ぐ僕の足に、縄文杉を目指す彼の足はついてこない模様です。装備と体力と気力と判断力が甘い。僕はそう思いながら見ていました。


 ウィルソン株です。古代の杉が枯れ落ちて、株の外側だけが残っています。このウィルソン株までで、縄文杉に行くまでの半分くらいのイメージです。
 そして、さっきの彼は僕についていくのをあきらめ、僕も彼を先導するのをあきらめました。無理だけはするな、やばかったら下る人についていって引き返せと言い残し、僕の足はダッシュ。なんせ、新高塚小屋まで行かないといけませんから。(小屋については、後日、『ふうたろう旅日記詳細』に載せます。)


 ウィルソン株の中から上を見ると、不思議な感じがします。雨が降っていて不快なはずですが、この株を見ると、そんな感覚もなくなってしまうんですね。後は太陽の女神に祈るのみ。


 どこから来たと言っていたかな。このふたりは、ウィルソン株の前で、僕がシャッターを押したカップルです。そう、例の「シャッター押しましょうか」コールで。カップル登山、この山は特に多く感じます。


 太陽の女神は微笑んでくれたのか。あたかも天候が回復したかのようです。
 そう、実際空は雲の切れ間が多くなってきています。でも、雨は相変わらず、強く降ります。毒矢のようにね。


 縄文杉です。立つ人の大きさから、その杉の大きさを推し量ることもできるでしょう。ちょっともやがかかりつつ、太陽の陽も射しつつ、雫も垂れつつ、幻想的な世界です。ここに着いたのが、僕の足で14時過ぎでした(白谷雲水峡発8時40分)。さっきの彼はどうしたでしょうか。


 これは、新高塚小屋の手前の高塚小屋です。新高塚小屋よりも定員が少ないのですが、縄文杉に近いせいもあって、使われているようです。水場はやや遠いようです。ちょっと岩の坂を下っていたような気がします。


 新高塚小屋の中です。雨に濡れまくったザックは広げて乾かすしかありませんが、みんな大体同じことを考えるので、定員60人の小屋は20人程度でいっぱいです。それでなくても、無人小屋泊まりする人は荷物が大きいですから。


 夜ご飯を食べたらちょっと具合が悪くなって、外に出ました。そして、空を見上げれば、なんと、青空!だんだん青空が広がっています。
 僕は、とりつかれたようにずっと空を見ていました。2時間くらいかな。断続的に降る毒矢のような雨は相変わらず降ってきますが、天候が回復するような予感。そして、その低い雲の上はあんなにきれいな青空ですから、僕はずっと見とれていました。小屋の誰でもいいから、この感動を理解してほしかったけど、そればかりは…ね。なかなか言い出しにくかった。


 結局、雨でも登ってしまいました。でも、途中から、なんだか雨が怖くなくなっていました。時々射す陽のせいかもしれない。幻想的なガスのせいかもしれない。頭に巻いたバンダナのせいかもしれない。途中で数え切れないくらい出会った登山者たちのせいかもしれない。頭の中をうごめく化学構造式のせいかもしれない。
 …いや、これは全部でした。いつの間にか、太陽の神、学問の神、山の神、たくさんの仲間たちに頼っていました。心の中で。
 まず一日目。毒矢をかいくぐっての上り。それでも撃たれてだいぶ弱ったふうたろうです。次の日や、いかに。

天気:雨時々やむ、一時晴れ、西之表市では雷を伴い、上屋久町では一時激しく降る(鹿児島県熊毛郡上屋久町・西之表市)

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