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おぞましい事実

2007年 12月 18日

 今日の写真はイメージです。電子顕微鏡があったら、ウイルスだって見られるかもしれません。
 職場の、みんなが食事をする机の上に、『食品衛生研究』という雑誌が置いてありました。3冊。その中の2007年11月号。ノロウイルスの特集をやっていました。
 その中で目を引いた論文一つ。
 『ノロウイルス食中毒・感染症の現状と取り組み 模擬吐物による飛散距離の推定と加熱処理に関する評価』
 貞升健志ら


 まず、嘔吐物のような物性を持った(?)ものを作るところから。リアルに書くとグロいので書きませんけど、とにかく、作るそうです。そして、それをだいたい1m上から、フローリングやカーペットなどに投下します。これで、嘔吐物(疑似)が半径何メートル先まで飛んでいくかを推定します。
 結果、カーペットでは1.6m~1.8mほど。塩化ビニルのフローリングに至っては2.3mまで飛んだそうです。半径1.6mということは、ほぼ六畳の部屋一杯に広がるということです。
 …ノロウイルスは、嘔吐物1gの中に、1000個から1千万個くらいいるそうです(便の中なら3桁多い)。飛沫ひとつが1μgとしても、1~10000個。感染に必要なウイルスの数は100個程度だそうですので、飛沫でもヤヴァイ。
 しかしながら、空気中に粉塵として飛んでいかなければ大丈夫。この感染物を直ちに、適切に、処分すれば大丈夫。

 だから、次にするのは、処理方法の検討。
 次亜塩素酸ナトリウムによる処理は、塩化ビニルのフローリングなら容易だそうで、適してもいるそうです。しかし、問題はカーペット。次亜塩素酸処理をする時を想像してみれば解るように、難しい。そこで、筆者たちは加熱処理でウイルスを不活性化させられるかどうかを研究しました。
 ウイルスは、その性質上、タンパク質を介して感染します。だから、タンパク質が熱変成すると感染できません。この変成をさせるためには、75℃以上の熱が1分間は必要なようです。
 まず、熱湯50mlをぶっかけると、85℃以上が10秒、75℃以上が30~60秒。これを半径1.8mの円の中すべてにかけようと思うと16リットル必要だそうです。灯油缶よりちょっと小さいくらいです。
 次に、スチームアイロンで直に加熱しました。結果は43℃までしか上がらずアウト。
 最後に、濡れタオルを敷いてその上からスチームアイロンをかけると85℃に達するまで10~20秒。スチームアイロンの面積は150cm2
 おっ!これはイケるんじゃねぇ?
 …と思ったら、円の中を85℃以上にするだけで2~4時間かかり、なおかつ1分間保とうと思えば計算上13.2時間もかかるそうです。

 カーペットが出てきたのは、ホテルの絨毯に残った嘔吐物にいたウイルスで感染した事例(可能性が高いという意味)があるからです。絨毯に次亜塩素酸を使えば、絨毯が傷む。また、絨毯が使われる場所からして、次亜塩素酸の臭いは敬遠されると、筆者は考えています。つまり、絨毯に、ウイルス性胃腸炎で嘔吐してしまった場合、現在のところ決定的な対処法はないということです…。
 あぁ…、僕はもうホテルになんか行かない。絨毯のあるところなんか行かない!
 今、頭の中を、ヒューマンファーマーズの作った歌である、『箱船にのって』が流れました。

 (略)
 箱船には行くところはない
 本当の地球を取り戻さない限り
 箱船には行くところはない

 著者たちは、最後にこう書いています。

 …今まで培われてきた技術、知識を結集し、効果的な消毒法の確立を行うことが、NV(ノロウイルスの略。ふうたろう註)による集団胃腸炎事例の防止のために、また、公衆衛生に携わる者すべての使命であると考える。

47ページ

 絨毯の汚染の除去法ねぇ。塩素臭いのが嫌だとか、絨毯が傷むとか、そういう文句を言わなければ多少は楽になるんだろうけどね。あるいは、絨毯を洗浄しやすい形にする(パーツに分ける)などはどうだろう。
 それでもこういう改革は進まないのが常ですから、ノロわれる人は今後も増えるんでしょうね。

天気:晴れ(東京都板橋区・埼玉県所沢市)

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