未熟な果実(奧茶臼山・前茶臼山大河原コース:長野県)
0時19分、テントを叩くのは誰だ?
…相変わらず雪だけのようだ。これが雨だったら本当に目も当てられないけど、雪だから払えばすぐに落ちる。固体と液体では、本当に雲泥の差なんだよなあ。
しかし、天気は相変わらず悪い。皆既月食どころか、月の存在さえ解らないほど。もはや寝るより他、やることがない。
ところが、やたらと周りが明るいなあと目が覚めたら、1時35分。何と、晴れていました。もちろん、濃密な樹林の中なので、晴れていても相変わらずダークなのは変わりないのですがね。
この後3時まで寝ようとがんばりましたが、結局寝付けなくて、チーズドヴァッのカレーを食べ、出発することにします。
…が、片づけに手間取って、結局出発は5時12分。いったい何をやっていたんだという話ですな。
もちろん真っ暗な世界。雪があるので、また月明かりの反射もあるので、漆黒の闇というわけではありませんがね。
この雪景色を写真に撮ろうと思うと、やっぱりフラッシュを焚くくらいしか、移動しながら、というのは無理。
味気ないので、立ち止まって、三脚を取り出します。出発したばかりなのに、何をもそもそと…。でも、白む空にうっすら霧氷になった木々の枝が見えますな。
急速に辺りが明るくなっていきますが、この樹林帯から出られる日はいったいいつになるのやら。
たまにこうして展望を拝めますが、大展望、ってわけにはいかないですなあ…
あの山は南アルプスの大沢岳、かな?あの向こうは朝焼けが美しそうだなあ。いつか、南アルプスの冬も行きたいですな。
このアップダウンの大きいコースも、少しずつ高度を上げていきます。次第に辺りを覆っている雪の量も増えていきます。
木に垂れ下がっているサルオガセが霧氷になっています。サルオガセの霧氷というのは、案外初めて見たかもしれません。
もう夜は明けていそうですが、南アルプスの山に隠れていそうです。日の光がないと、この雪原樹林も何となく寂しいだけですなあ。
そして、岩本山。2269m峰。ここが7時7分。アップダウンがきつく、荷物が激重なので、時間がかかります。
空に突き出た一本の冬枯れ。よく見たら、枯れ葉が散った枝には、葉の代わりに細かい氷の粒を纏っています。
どこまでも続く。きっと、もっと雪深くなると、もう少し展望は良くなるでしょう。
運良くこの濃密な樹林をかいくぐって降り注いできた少しの光が、雪に影をつくっています。
なかなか視界が開けない。このくらいが限度か。でも、霧氷の美しさはそれでもすごい。
この辺りは、かなりの針葉樹類が立ち枯れています。おかげで、見通しがいいわ…。
広葉樹の割合が若干多くなってきます。氷の粒を纏った枝の一本一本が、青空に白い影をつくります。
もっと雪深くなれば別だけど、これぐらいの雪だったら、やっぱり広葉樹主体の霧氷原の方がいいなあ。
さて、進む先は奧茶臼山。このスピードで歩いていたら、まだまだあります。
ここ、突然展望が開けます。伐採されたのか、立ち枯れて木々が消滅したのか、解らないけども。
この位置からは、恵那山などが見られます。
山頂が近くなると、吹きさらしの木々が、太い枝まで白くなっているのが解ります。
展望が開けてきました。南アルプスがどーんと見えてきましたね。
中央右には塩見岳が。これはきっと山頂はもっとすばらしい展望が!
ヌオッ(`皿´;)
すっげー樹林帯…(滅
ガッカリ度で言ったら、白石山を上回るという件。
ふうたろうどこ行く?
このまま来た道を戻るのは苦行以外の何ものでもないので、そのまままっすぐ、前茶臼山に向かうのですよ。
前茶臼山方面は、これまた立ち枯れか伐採かで、展望が利いています。目の前に見えているのは前茶臼山。
いやー、またすごい樹林帯だなあ(棒読み)
南アルプスがガッツリ。今までの登山道本道では決して見られなかった、大展望ですな。
展望はここまで。前茶臼山をながめられるのは、ここまでなんですよ。これから、地図にも一切の表記がないところを歩くので、若干の不安を抱えながら歩くことに。
しかし、意外や意外、道ができています。この奧茶臼山から前茶臼山方面、誰かが歩いているのですね。
あの筆箱の蓋があったところから、道が尾根を逸れて少し下り気味になっています。おかしいなと思いながら進んでいたら、尾根から相当はずれているではないですか。
この前茶臼山手前の最低鞍部あたりから、倒木の量が極端に増えていきます。そのおぞましい倒木帯を、上り返したんですよ?時間とエネルギーを浪費しましたがな!
倒木を踏み越えながら、前茶臼山にがんがんと挑みます。東斜面が崩れているところがあるので、そこから南アルプスを眺めることができます。
景色は確かに抜群ですが、この辺の立ち枯れて腐った木に捕まったりするようなことは、絶対にないように。折れて奈落の底に行きますからね?
この前茶臼山は、倒木の地獄です。樹林帯も深くて難儀ですが、倒木が縦横無尽に横たわっているので、それを踏み越えるのが猛烈に大変。まだ腰から胸の高さにいたるほどの倒木がそれほど多くないのが救い、かもしれませんがね…
前茶臼山から、次は栂村山(つがむらやま)に向かいますが、地図を見ると、どうもそちらの尾根に下る取り付き点が不明瞭です。ふうたろうも変なところで降りてしまいましたが、とりあえずまっすぐ、前茶臼山の山頂と思われる付近から、尾根沿いとはっきり解るところまでは進めば良いようです。すると、この幼木が大量に繁茂して通りづらくなった道が出てきます。
この坂はとにかくえげつない。斜度40度はあるんじゃないか?
ところで、さっきの取り付き点を探すときに両手を空けなければならなくなり、ずっと下から一緒だった「相棒」を手放してきました。時間がなくなってきて、少し焦ってきていますな…
尾根づたいに下り続けていると、途中で右に曲がるところが出てきます。そのポイントが発見できるか不安でしたが、意外と分かりやすく道が付いていました。
あれ?何だ?この車道は…。
地図が描かれた後に、この辺りも林道が通ってしまったようです。ひとまず倒木地獄から抜け出したという安心感と、これからまだ何十キロ歩くんだという不安感と、入り交じったような気分。
しかし、車道は山をそのまま下っていくようです。栂村山は尾根づたいに歩いて車道が逸れていく左(南)側ではなく、右(北)側にあります。再び、道があるようでないようなところに足を踏み入れます。
ただ、このルート全般的に言えることですが、救いはリボンがちゃんと付いていることです。目をこらしていれば、迷うことはあまりなさそうです。思った以上に踏み跡もしっかりしていますし。
この岩に印のところ、リボンが二手に分かれて付いています。結果的にはどちらでも良かったようですが、ふうたろうは右に行きます。
ここまで来ればもう栂村山も捕らえたようなものです。リボンもよく見えているし、樹林の隙間から大まかに地形も判断できるほど周りも見えています。
それにしても、突然木がばっさりとなくなって、大量の倒木が発生している箇所、いったい、何があったというんだ?あの前茶臼山の手前からこの辺りまでの倒木の量は尋常ではない。
栂村山手前。少しまばらになった樹林帯。落葉松、ですか、この木々は。
栂村山の標がないので、誰かがテープに書いて木に巻き付けていますね。
栂村山から、今度は大河原バス停まで下らなければなりません。栂村山の時刻、12時0分。バスは確か15時台だったな…。あと3時間で下れるか?
栂村山から急斜面を下り、そして緩やかな尾根を下ります。まだこの程度の雪の量なら、雪崩も心配する必要はありませんね。
緩やかな尾根を下ってくると、またリボンが二手に分かれて付いています。ふうたろうは今度は左を取ります。
しかし、その先は道が不明瞭になり、若干険しい。動物先生(うさぎ)の足跡を追って、彼でも歩いていける安全なところを通って、この見通しがよく、分かりやすい尾根を下ることができました。
山道を抜けました。ひとまず、この林道まで出てくれば、下山することはできます。ただし、この先の道が、恐らく10km以上あると思われます。
この道、かなり荒れていて、崩落しています。そこに雪が積もっています。
何気に、この崩落した車道、抜けるのに神経を使いました。滑ったらたぶん下まで転がっていきますよ。
誰も歩かないこの道を歩くのは、ふうたろうと森の動物たちだけ。
それにしても、さっきまでのあのおぞましい山道はいったい何だったんだろうねえ…
本当に、これくらい開けていれば、もっとさっきの道も楽しめたのになあ。あの鬱蒼とした樹林(倒木)帯は、マジ萎えます。
ブッ¨:∴(◎ε●。;)
足が宙を舞いました。ほら、ザックカバーと尻と手を突いた、生々しい痕が。
雪が薄くなってきました。日も差しているし、標高もだいぶ低くなってきた。
途中から、クネクネクネクネクネクネクネクネクネクネクネ、クネクネクネクネクネクネクネ!(`皿´#)としつこいくらい蛇行する道に変わるでしょう。
下に道が見えて、ネットや柵が施されていないのを確認できれば、ショートカットしてしまいましょう。
そして人里へ。ここで14時4分。あと1時間半くらい、バスまであるかな…。
荒野の向こうに南アルプス。子どもにはこういうところで遊ばせたいよね。
それにしても、長い!この辺りも蛇行が多くて、しかも人家があるのでショートカット不可という。
ところで、バスは本当は何時なんだろう、と思って携帯で調べてみたところ、何と、15時9分!
…今の時刻14時31分。これはまずい!!
ふうたろう、炎のダッシュ!
でも、背中に100リットルのザックを背負ってできるダッシュなんて、たかが知れています。
曲がった丁字路の記憶が飛んで、現在地がサッパリ解らなくなって、パニック状態になりながらとにかく下に向かいます。
目つきが尋常ではない。河原を散歩していたお姉さんに「どこ行ってきたの?」と聞かれるも、ゆっくり返事できなくて、申し訳ない思いを抱えつつ、
「気合いだ気合いだ気合いだ」(`皿´#)
などと、念仏のように唱えながら進んでいきます。
ん?Σ(・ε・;)
…なんだよ、このまっすぐの道と遠くに見える橋はよ…
地図が描かれた後にできた橋だったようで、ふうたろうが渡るべき、小渋橋はあの陰の中にある橋です。
小渋川の上流方向に南アルプス。15時9分のバスまであと7分!
ぬおーーーー(゚Д゚;)
間に合った……(茫然自失
バス停には、オーストラリアから来た兄ちゃんと、その友人か嫁さんの女性、泊まっていたと思われる宿の主っぽい外国人男性の3人が別れを惜しんでいました。
…そんな人情あふれる光景の横にへたれ込んだふうたろう。
今までの苦労を労っていただきましたとさ。
そして、程なくしてバスがやってきます。車窓からの風景はダムの縁。
ああのどかだなあ…
伊那大島駅到着。さて、これからどうやって帰るか。
…そういえば、kaz君の家が近いね。バスの予約を取ったら18時36分まで時間ができたので、寄ってみよう。
…と思ったら、彼は今週はたまたま東京に行っていたらしく。まあ、ふうたろうが急に行ったんだもんね、しょうがない。
周辺に食堂は無かろうかと思って探したり、Kaz君に聞いたりしていましたが、結局みんな準備中だったり嫌がられたり(゚皿゚;)して、このレストランに流れ着きました。
注文したのはミックスフライ定食。ご飯が多い。しかも、古米臭…(ため息 タルタルソースもない。
レストランを出てきてからのことは、もはや写真撮る気力もないほど。
さっきバス停で会ったオーストラリアの連れと一緒だった女性の話によると、大島駅から松川インター(バス乗り場)まで歩けるのだそうで。20分くらいだとか。
いやいやいやいや!!!!
歩いたら、30分以上、しかもこのクソ重たい荷物担いで、上り坂を歩きましたがな!真っ暗で排気ガス臭い道を!!!
長い道のりだった…。思えば1時半に目が覚めて、それから眠ることも起きることもできず、3時過ぎてようやくメシの準備をして食って、出発5時過ぎ。基本展望なしの樹林帯を延々と歩き、倒木と若木の入り乱れたおぞましいルートにあえぎ、超絶級の長い車道歩きに絶句し、伊那大島に戻ってきたら割烹Mには適当にあしらわれ(追い返され)、真っ暗闇の排気ガス臭くて閉まったリンゴの直売所ばかりの道を延々と歩いて松川インターまで行って、やっと帰路につく…。
今回は甘味の乗ってない果実みたいな山行だったなあ(棒読み)
でも、あの霧氷と雪原は、やっぱりきれいでした。山は、厳しくてもやっぱり冬が楽しいと思う毎年ですねえ。
#246奧茶臼山クリア。
天気:快晴、明け方まで一時雪(長野県下伊那郡上村・大鹿村・松川町、移動中は含まない)
お疲れさまでした。奥茶臼山なつかしいなー。
あのしらびそまでの道を歩いたのですかー。
さらにパワーアップしてこわいものなしですね。
霧氷が青空にはえててとってもきれい。霧氷みたいもんだなー。静かなところで。。。
奥茶臼山、人はまったくいませんでした。だから、極めて静かです。ぜひどうぞ(黒笑
これからの時期は、霧氷が大菩薩嶺なんかでも出てくるので、イイ季節です。2008年12月に行った滝子山の霧氷は、ありえないくらいきれいでしたね…
交通機関使っての奥茶臼山ってこんなんなるんすか。 凄すぎ。
もちろんもっと強敵は控えてるんですよね。 ガンバです。
奥茶臼からでっかい山を見たかったなぁ。
ハイ…
こんなんなりました(笑滅
あと、考えられる強敵は北海道:ニセイカウシュッペ山・ニペソツ山・ペテガリ岳・石狩岳・狩場山、秋田県:和賀岳、群馬県:景鶴山、岐阜県:能郷白山・冠山、あたりですかね…。北海道は強豪揃いですな。
奧茶臼山は、展望\(^0^)/オワタですわ。ある程度予想はしていたので、冬を選んだんですけどね…
言うまでもないですが、車を使ったら、しらびそ峠から往復で、たぶん日帰りできます。雪あったらそれでも無理かな…。大河原に抜けるルートはただの鬼畜だし、崩落や落石もひどい林道なので、車は危険かもしれません。