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対岸の火事を我が身のものとせよ

2007年 4月 9日

 昨日の山の余韻は、心にも身体にもあります。あの銀世界の中、山小屋で出会った仲間たちと、日の出と富士を拝めたこと。忘れられない思い出になりそうです。
 今日はそんな週末が開けた一日目。ありゃー!!雲の多い空だこと!空は積雲だか絹層雲だかすら区別がつかないほどもやっとしていて、これが昨日じゃなくてよかったとほっと一息。筋肉痛の身体を押して、農薬の抽出。くもりでも晴れでも農薬の抽出は出来るから、いいもんね。
 夕方、ここ数週間の不安定な天気の続きです。にわか雨。関西にいた頃は大阪や京都でも時々あった「時雨」にそっくり。鋭角に入る夕日が虹を作ってくれていました。
 この頃の天候、やっぱりちょっと4月っぽくないと思います。といいますか、冬季より春季に雪が降ること自体、おかしい。
 この先、ちょっと長くなります。黄砂の話。

 気候がらみの話で一つ、昨日武蔵野線で山から帰ってくるときに気にかけていた電車の吊り広告。ある週刊誌P(4月23日号)のそれに、中国からの黄砂を取りあげたものがあることを知りました。今日、駅の売店でそれを購入し、家で読みました。
 黄砂で困っている日本国民の声、韓国での被害、中国国民のガスマスク姿などを掲載し、黄砂の凄さをアピールしています。黄砂は中国内陸部の乾燥地帯から偏西風に乗って日本や韓国などにやってきます。経済的な打撃も健康被害も予測されるだけに、こうして注意を喚起することはとても大事。
 でも、この雑誌もここでやめておけばいいのに、余計な一言で台無しです。

P雑誌より

 まあ、予想はしていたけど、急激な中国の経済成長が、黄砂の増加に一役買っているというわけだ。

 この前伊豆の天城山に行ったとき、黄砂で展望がすごく悪くて残念だった。僕は中国から来ていることを知っていたけど、中国だけが悪いとは思わなかった。
 日本もかつては中国のような高度経済成長でさんざん大気も水も汚しまくったのです。しかも、国内の公害病患者をいつまでも救済しませんでした。たまたま偏西風が西から東に吹いているため、たまたま日本の国土自体が小さいため、日本の大気汚染が他国に大きな影響を与えなかっただけかもしれません。それなのに、中国だけを責めるのは、ダブルスタンダード(二重基準)ではないでしょうか。
 もう一つ、日本大手商社などは中国から安い農水産物やMade in Chinaの工業製品を、日本国内の農漁業者や中小業者が悲鳴をあげるほど輸入しています。

P雑誌より

 中国北部の農村部は貧困地域が多く、設備投資の少ない小規模な工場が多い。それらの工場は排煙も排水も垂れ流し状態。最近では、そうした有害化学物質をたっぷり含んだ黄砂の嵐が頻繁に発生していて…(略)

 ならば、中国製品を「人件費が安い」などの理由で安く買い叩くのをやめよ(設備投資が出来るくらいの対価を払う)。日本国内で耕作放棄されている田畑を蘇らせ、中国産野菜などの輸入を少しでも減らす努力をし、黄砂減少のために貢献せよ。…そう言いたくもなります。
 さらにこの雑誌の記事、「こんな国でオリンピックをやっていいのだろうか」みたいなことも書いてありました。ならば、同じことを、東京都知事である石原慎太郎氏に言ってごらんなさい。オリンピックのために移転する築地市場の移転先の土壌汚染を、この雑誌の記者は知っているのでしょうか。
 きっと、この記者は自分がダブルスタンダード(二重の基準。相手に当てはめる基準と、自分たちに当てはめる基準を別個に設定すること。)的な考え方をしていることに気付いていないでしょう。文章を読んでいると、中国を批判するためにこの題材を持ってきたようにしか思えません。
 かつて、中国産の野菜や漢方薬などの残留農薬を、ほんのの小さな分析施設である農民連食品分析センターが告発し、食品安全行政を大きく変える切欠が作られました。しかし、それは中国を悪者にしたかったからではなく、日本国民の命・健康を守ることが目的でした。ある時たまたま高速バスに乗り合わせて話になった中国の留学生に「中国の農民をいじめて…!」と言われたことがあります。反中国の材料に、分析センターを持つ農民連の意に反して、こういうデータが使われたことの現れなのでしょうか。
 この記事は、本気で黄砂の問題を解決しようなどとは考えていません。ただ中国が対策を打たないことを嘆いているだけです。傍観者の姿。対岸の火事を対岸の火事のまま見ていて、被害者に心を寄せているふりをして、非常に残念でならない記事です。

天気:くもりのち時々雨(東京都板橋区・茨城県取手市)

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