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消費者が悪い、それだけか。

2007年 12月 27日

 今日は、ついにサンプルがゼロになって、僕はただひたすら、論文を読んだり、新しい抽出法を考えたりしていました。それでも時間をもてあましていましたが、今日は幸い(?)病院。ついでに、電車に乗っている時間も長いから、『チョコレートの真実』も読んでしまいました。
 今日は、チョコレート産業の、現代史です。フェアトレードの限界、資本主義の限界、色々見えましたが、その中で、特に気になったのは、消費者に対する攻撃でした。


 昨今の賞味期限などの偽装問題、政府や企業に対する風当たりが悪くなってしばらくすると、必ず、「安いものを求める消費者が悪い」という決まり文句が出てきます。
 『チョコレートの真実』でも、カナダでの具体例として、子供によるチョコレート値上げに対するデモが採り上げられていました。また、消費者は倫理的なものを求めるが、安さは譲らないとまで述べています。
 第二次大戦後のカナダで、チョコレートの、5セントから8セントへの値上がりがあったそうです。原料価格が上がったので、とか、人件費が上がったので、とかいう理由だったそうです。それに対して起こったデモだそうです。
 残念ながら、大戦後のカナダの政治・社会情勢を僕は知りません。市民がおしなべて貧困だったのか、ただ贅沢をしたいだけだったのか、解らない。
 もっとも、このデモは、「共産主義運動との繋がりがある」などの理由で弾圧され、消えたそうですが。

 今の日本でも、消費者が安いものを求める傾向は変わりません。100円ショップに並ぶ商品をあさる人々が、その裏側で経営難に困っている人を顧みているとは、確かに思えない。
 でも、消費者にその安い理由を知らせる努力を、安い理由を知っている人はやっているのか?消費者に攻撃を向けて、ミートホープの社長のように居直りながら、消費者への説明責任を果たしていない人間は、責められないで済むのか?
 認識は現実に先行しない。消費者に対して本当の「チョコレートの真実」なり、100円ショップの真実なりを伝えるのが、「知る側」の最低限の義務だと思うのは、僕だけでしょうか。
 企業には利潤を得るという資本主義の中での至上の原理があり、その競争の中で、国民が環境によいものを求めているという声があれば、それに付加価値を付けて売ってくるのは当然です。もちろん、最低限のことしかやらないでしょう。マクドナルドが、スローフード運動の隆盛の中で、自社の製品をスローに作られたものと宣伝して売っているのを見れば、その「最低限」がどこなのかすぐに解るはずです。自浄能力のない企業に対して、ルールを作らないといけないのは、個人に対して刑法・民法を科すのと同じです。
 消費者が、過当競争の中で安いものを求める、または貧困の中で安いものを求めることはありえます。中には、人の苦悩など顧みないバカな人間もいるかもしれません。それでも、根拠はないですが、そこまでのバカは多数ではないと、僕は思うのです。事実を知らせれば、考え方が変わる人だっているのではないでしょうか?
 前にも書きましたが、知らないことが悪いのではなく、知ろうとしない・知らせないのが悪いのです。少なくとも、その知らせるという面で、今の政治の責任は問われないのでしょうか。

 「結局みんなが変わらないからダメなんだ」的な無責任な結論なら、小学生でも出せます。みんなが変わるには、条件が必要でしょう?その条件が何なのかを考えたいものです。国が作る法律や教育などで、企業や消費者の義務や権利を明確にすること。企業には説明責任を、消費者には主体性を、それぞれ持たせるべきではないですか?何より、公正さを誰もが享受できるように、システム構築する努力をすべきではないですか?これも、純粋に判断であり、科学ではありません。
 とりあえず、教えてもらって有効だと思うことは、やっているつもりです。袋は必要以上に貰わない、包装の少ないものを選ぶ(実質無理があるが)…、高くても熱効率の良いと思われる石油ストーブを使う、たまには宣伝カーの上にも乗る、…など。部屋の電気を消し忘れたりすることは良くありますけど…。
 人の社会で生きている限り、誰かを犠牲にせずに生きることは今の世の中では無理ですから、何をやっても無罪放免にはなりません。でも、だからこそ、やれることをやる。本当にそれだけではないでしょうか。
 カカオの生産現場で虐待をなくす方法なんて、僕には想像もつかないけど、きっとそれも支配者と被支配者との力関係で変わっていくのだろうと思います。実際、10年前には聞かれなかった「食料主権」の言葉が、今は徐々に広がりつつあるのですから。

天気:晴れのちくもり(東京都板橋区・東村山市・千葉県松戸市・埼玉県所沢市)

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