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学びと一期一会(傾山【杉ヶ越コース】:宮崎県)

2012年 12月 31日

 夜通し風が強く、外張りはベロンと剥がされていました。周囲の木々ばかりか、テントも氷が貼り付いています。1日で気温は10~20℃、下がったと思いますが、これくらいの気温の低下ならまだマシだと思った方が良いです。
 しかしそれはともかく、ガスと森林と低温、このセットは霧氷の原材料です。それに強風が吹けば完璧。エビのしっぽができあがります。


 メシ食ったら出発。…と、また片付けに手間取っていましたら、夜が明けましたがな。もう霧氷がオレンジ色に輝き始めてますぞ!急げ!!


 このオレンジの瞬間はそんなに長くない。そもそも、今までまったく晴れ間の無かった状態(夜中は別として)で、今のこれはまさに奇跡としかいいようがない!


 厚い雲が覆っています。その隙間から日が差して、白一色だった木々をオレンジに染めています。


 岩場と木の隙間から祖母山方面が見えています。これが疑似好天だと判っていても、嬉しい。


 真上は厚い雲だけど、霧氷がすさまじく美しい。


 昨日はガスっていた場所が、すっかり晴れている。上空に青空が広がればあとは完璧なんだが…


 傾山直下。まあ、直下といっても岩山なのでまだしばらくかかりますがね。


 低温と濃霧の孵卵器が育てた芸術ですな。


 今日の日差しは弱い。それに寒気が入って気温も低い。霧氷も寿命が長いでしょう。


 傾山の隣のピーク。隣というか北西のピーク。祖母山へ続く稜線が彼方まで繋がっていますが、大崩山方面の尾根と勘違いしそうでした。


 隣に見えるのが傾山。一寸先は崖ですが、どこかに通路があります。探しましょう。


 もうちょっと見ていこう。


 地図を見ていれば何とか先は見えます。まあ、進めるかどうかは責任持ちませんが。


 なんだか怪しい道。そして実際、崩壊して進みづらいところが。きっとどこかに迂回路があるんだろうけど、見つけきりませんでした。


 山頂がもうすぐくさい。ハシゴから転がり落ちないように進みます。


 霧氷が相変わらずすさまじい。孵卵器の中に居座ってこそ味わえる感動です。


 山頂直前の岩。確かに傾いていますが…


 そこにほこらがあります。もう山頂ですな。


 砂糖を固めて作ったような霧氷。


 雪が積もったわけでもなく、コロイド状の氷が吹き付けられて作られる霧氷。見事…


 疑似好天にしてはできすぎですな。ふうたろう一人です。


 そして、山頂。本当はふうたろうもここに写っています。


 日が当たると雰囲気が変わるでしょう。


 昨日みたいに雨で空気が濡れていないので、迷い無くクッキーの袋が開けられます。もっとも、粉薬になっていますがね(じと目


 この先が道かな?


 展望がすばらしい。ここは冬に来るのがいいかも。いや、夏や秋を知らずにいうのも何だけど。


 祖母山の山頂はガスってるかな…?


 で、ここは道ではありません。崖になっています。降りないように。


 あの南にある尾根に進みましょう。


 地図を見ればこの傾山の形と行き先が判ります。まあ、これだけ霧氷がきれいだと、それに見とれて地図どころじゃないけどね…


 傾山から今度は下山に向かいますが、道は急になります。荷物の重さが響きます。


 霧氷が完全に覆った山。緑の部分がない…。


 南の尾根から撮った傾山。山そのものはそんなにシブいわけでも無いんだけど…


 展望箇所はいくらかあって、霧氷の大森林の上から遠くの山が望めます。


 よく見てみれば、北風が当たる、尾根の北側にだけ霧氷が発達しています。ガスと低温だけでも霧氷はできませんね。風がいるんです。


 イヌや猫が毛玉を吐き出したみたいな霜柱が(ゲロゲロ


 坂は急降下。ふうたろうは大崩山方面に向かっています。


 この立て札を見たら、杉ヶ越方面に向かいます。かなりの下りになりそうですな…。しかも道は…??


 さらば安寧な霧氷の大森林よ。


 ああ、これで先を急がなくていいのなら…荷物が重くなければ…などと、色んな無い物ねだりを。


 大崩山方面、まずは杉ヶ越なのですが、一旦南東に蛇行します。そして新百姓山まで行ってからまた南西に蛇行して、五葉岳方面に西進します。…その予定です。


 でも、この道…険しくねえか、やたら…?


 急坂、ヤヴ、岩、氷…。悪魔のような道ですぞ。夏道でも大概バリエーションくさいコースっぽい。


 一応危険箇所、短かった。


 ん?(・ε・;)
 なんだか雲行きが怪しくなってきましたね。やっぱり疑似好天だったということですな。


 再び道は険しく。


 雪はなくなりつつあるのでアイゼンも脱いで進んでいますが、この急坂岩ヤヴゾーンはなかなか脅威です。


 ロープはあるものの、この岩氷ゾーンは…


 そして、延々と続く岩場とハシゴ…


 地図にはこのくらいの大きさの岩場は出てきません。高さが10mを超えないと等高線1本分にもならないからです。


 ああ、あの霧氷のあるところが南の尾根…


 非常に厳しい道のり。こんな状態では五葉岳どころか新百姓山辺りで終了の可能性が…その後は岩場とかの連続なのに今日明日明後日と吹雪の中歩くのはちょっと…


 ついに、雪が降ってきました。これくらいの風雪は平気ですが、歩き続けたい環境ではありませんな。


 道が若干やさしくなりましたか。…これは杉ヶ越からエスケープの路線ですかな…。


 完全に凍ったつらら。昨日の同じ時刻に比べて、気温はおそらく15℃は下がっていると思います。


 道、岩を越えます。エスケープを決めたらとりあえずエスケープ地点まで急ぎたい。でも、時間的には慌てなくてもいけそうです。


 道の雰囲気が変わりました。岩場と木の根っこの連続だった道が、普通の登山道に…


 ここまで来ればもう安心でしょうか。いや、でも…


 道が交錯しています。とりあえず、尾根伝いに行っていれば間違いありませんか。


 何気に、杉ヶ越までの尾根も30mほどの小ピークがあってしんどい…しかも荒れてるし。


 建物が見えます。でも…?


 この杉ヶ越にある神社、名前がわからないけど、ボロボロです。お供え物は一応あるみたいですが、メンテナンスされていないみたいな…。実はここで一晩明かして、明日の朝イチで下山してバス停まで歩こうかと思っていましたが、こんな不気味な神社の前でハイパー初詣なんかしたくないというか…(じと目


 斜面に付いている道に「傾山」の矢印がある…。ということは、尾根伝いに歩かなくても登山道に出られるということですな。ただ、今まで書いたようにこの道の険しさは鬼畜。


 「森林セラピー」
 むしろオラは森の毒気に中てられただよ(じと目


 一応そこに杉ヶ越の道路がありますが…


 ここに今降りてきても、この先どうしようもないんだよね。でも、歩くしかないか…
 …と、歩き始めたら、後ろから軽トラが。日之影町の住民のおっちゃんで、どこまで行くのかと聞かれたのでバス停まで歩くと答えたら、大きく呆れて乗せてくださいました。


 おっちゃんは店をやっていました。いや、店番とかをやっているのはおばあちゃんと奥さんっぽかったけど。
 奥さん:「おなかすいたと?」
 ふ:「はい、かなりすきました(きっぱり」
 ふうたろうはここが雑貨屋なので何か食べ物を買っていく気満々で答えます。そしたらしばらくして、煮物とご飯と年越しそばを持ってきてくれました!?
 ヌオッ(゚Д゚;)
 これはありがたい…けど、申し訳ない…。
 本当は店の写真を撮ってくるつもりだったけど、おっちゃんのお友達がこんどは下界まで送ってくださることになって急いでいたので、パンをくわえて出勤するように足早に去ることになりました。


 もう一人のおっちゃん(ご友人)は、もと鉱山の仕事をしているのか、今もそうなのかよく解らないけど、鉱山からの廃水を処理する仕事をやっていました。この赤茶けた色は、おそらく主成分が鉄(Fe(Ⅲ))だろうと思いますが、「水酸化ナトリウムと鉄で共沈させている」と言っていました。アルカリで金属イオンの溶解度を下げ、それでも濃度の薄い廃液中の金属イオンを鉄で共沈させる…?実際、ふうたろうも共沈という言葉は記憶が無い…


 思わず手で触れてみたくなりますね。ちなみにこの廃液はスズ鉱山のものだそうです。
 そういえば有機スズ(トリブチルスズ)が生殖機能を攪乱する「環境ホルモン」と言われたことがありましたっけ。でも、ノニルフェノールビスフェノールAと違って、こちらは生殖機能を直接器質的に壊す(ホルモン作用を乱すのではない)という研究を聞いたことがありましたね。


 …バス停まで送ってもらいました。しかし、バスの時刻は1時間15分くらい先。ここでじっと待ってろと?寒すぎなんですが。
 とはいえ、日之影川沿いを自力で歩いてきていたらまだゾンビのようにさまよっていたでしょうけどね


 しょうがないので歩きます。1つ分のバス停くらい歩けるでしょう。なにやら延岡まで37kmとか書いてあるけど気にしない(アヴラ汗


 ご飯までいただいたあのお家からバス停まで送ってもらう間に、おっちゃんからは川の話を聞いていました。日之影川が谷を流れているのですが、ここは最近の気候変動や針葉樹に偏った植林のために土砂の流出が激しく、渓流が砂利で埋まってしまったのだそうです。しかし、それだけではなく、堰堤を作って水害を防ぐ対策をしたのはいいけども、その堰堤にたまった土砂を取り除く作業を怠ったため、川全体が土砂や砂利で埋まり、川が死んでしまったと言っていました。確かに、淵と思われる場所も砂利がたまっています。昔は10mくらいあったとおっちゃん。
 おっちゃんは県にこれを何とかする(土砂を取り除く)ように申し立てに行くと言っていますが、もしさっきの話が本当だとしたら、修復不可能なレベルにまで、日本の川は破壊されていることになります。人間の一生よりも短いスパンで川が砂利で埋まるなんてことは、それまで埋まらなかった理屈からしても本来はあり得ない…。


 重い荷物を担ぎ直して、上顔(かみつら)バス停までやってきました。ここは高速バスは止まりませんが、路線バスは止まります。ていうか、路線バスが走っているとは知りませんでしたが。


 ここでちょっと延岡のホテルでも予約しておきましょう。しかし、風が強くて猛烈に寒い。


 バスが来ない。
 私を延岡に連れてって(黒ハート
 (訳:寒いんじゃ(゚Д゚メ)ゴルァ早よバス来いや!


 バスが来たときは生きていることのすばらしさを感じました(ゑ
 延岡駅到着。クソ寒さがハンパないのでホテルに移動しよう…。


 ホテルに着くと、若いおねーちゃんとおにーちゃんがフロントで立っていました。なんか様子が変だな、とか思ったけど、とりあえず受付済ませてとっとと風呂でも入るか、みたいな。
 でも、様子が変だったのはすぐに判りました。ふうたろうの背中にある、ふうたろうの身体くらいの大きさの荷物。フロントのおねーちゃんが目を角張らせて、「それ…どのくらいあるんですか…(呆れている?)」と。100リットルと答えればもれなく驚く皆様です。しかもフロントのおねーちゃんは山ガールらしく、先月ほどに、ふうたろうが手も足も出なかった大崩山に登ってきたと言うのです。もちろんクルマで。ああうらやましいなあ(ヴォー読み
 ただ、纏まったお休みが、こういうお仕事をされているので、取れません。ふうたろうが北海道に行ったというと羨ましそうでした…。ふうたろう一人分がなすべきこととして、何をしてあげればいいんだろう、何をしてあげれば彼女たちのような人たちにも平等に(本人の意思に基づく平等)同じ権利を与えられるのだろう、いつも判らないんですよ。
 …傾山の写真をせめて見せてあげようとカメラを渡したら、電源と間違えてシャッターを押してしまったらしいこの写真は、貴重なおねえさま印のものです。ビミョーに手ぶれしているものの、フロント付近の様子がよく解る傑作ですな。さすが抜け目なし(黒笑
 なお、この写真はブログに載せておくと本人にその際通告しております(藁


 結局傾山でリタイアすることになったけど、何が起こるか判らないものです。おっちゃんに拾われ、ご飯をいただき、鉱山の廃液の沈殿槽を見せてもらい、川の話を聞き、ホテルで山好きの人に会い…。ふうたろうの学びと一期一会の旅を物語っているような気がします。今年最後の日に、みんなありがとう。
 #270傾山クリア。


天気:晴れ時々雪(大分県大野郡三重町・大野郡緒方町・南海部郡宇目町・宮崎県西臼杵郡日之影町・延岡市)

  1. みゃーみ
    1月 22nd, 2013 at 21:30 | #1

    お疲れさまでした。寒さに強いふうたろうさんが寒かったんですね。
    霧氷とってもきれい。みたいな~。
    今回もいろんな人との出会いがありよかったですね。25キロもあるのに、最近は当たり前のように「歩いちゃおう」って感じになっちゃったんですねぇ。どんどんエスカレートして家から歩いて登山口とか行っちゃったりしてね。

  2. ふうたろう
    1月 22nd, 2013 at 23:09 | #2

     いや、下界の寒さは山の寒さとぢげんが違うんです。あのバス停の寒風は強烈でした。

     樹氷は、早よ足を回復させて見に行ってください。まだまだ厳冬期なので、チャンスはいくらでもありますよ!

     いや、この25kmは、歩く以外の方法がなかったんです。誰も通らなそうな携帯の電波も怪しい場所…。いや、携帯の電池がなぜか異常なくらい消耗していたんでしたっけ。変な接続を延々繰り返していたみたいで。とりあえず、あのトンネルのそばにテントを張るか、暗くなるまで車道を歩き続けるかしか、なかったんです。

     で?家から登山口って、海泳がなあきまへんがな。

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